第1話(39)
新しくいれたお茶を啜りながら、俺は続きを聞く。
「冒険者に応援を要請したのは……?」
「クシュテル侯だろうな。苦渋の選択だっただろうが。鉱山夫たちを避難させる前にこんなことになってしまった以上、被害者が鉱山夫ばかりというのも聞こえが悪いからな」
「だからランク問わずだったのね」
「鉱山夫だけではなく冒険者からも被害者が多く出れば、民衆も納得とはいかないまでも、しかたないと思わざるを得ないだろうからな」
「そこまでがディールの推測?」
「ここまでも僕の推測だ。で、話はここからだ。クシュテル侯の息子はポルポレンさえいなければ無事ではなかっただろう。死体で見つかれば、それなりに言い訳もたっただろうな」
「それもそうね」
なんか酷い話だな。
「魔斧炎獄のメンバーは、クシュテル侯の息子を始末するよう依頼されていたんじゃないかな?」
「そんな……。実の息子でしょう?」
「今回のようなことがあったんだ。無事でした、じゃ、被害に遭った鉱山夫たちの関係者に申し訳が立たないだろう?」
「それはそうかもしれないけど……」
あまりにもあんまりな話だな。
「だがさすがに問題の場所、僕たちが魔物を討伐した最後の場所だが。あそこは人払いがされていただろう。被害者はゼロではない、ってのはクシュテル侯の息子の護衛くらいなものだろう。そしてウォルンと僕とで逃げ遅れた鉱山夫は全て無事だった」
「丸く収まった、ってわけね」
「そうだな」
「それなら、面倒事に巻き込まれる心配なんていらなかったんじゃないの?」
「嫌だよ。お偉いさんに感謝のしるしだなんだって、館にご招待、なんてのは僕のガラじゃない」
「そういうことね」
「更に専属で仕事してくれなんてことにでもなってみろ、侯爵だぞ? 断われるか?」
「断わっても断わらなくても面倒ね」
「そういうことだ」
「でもディール。私は1つ納得がいかないわ」
「何の事だ?」
「魔斧炎獄よ。彼らはいくら依頼だからって人殺しまで請け負うかしら?」
「何も殺す必要はないんだ。ポルポレンだけ始末して、あとは死体の損傷がひどかったとでもなんとでも言えばいい。死んだことにして逃がすなりなんなりは出来るだろう?」
「そうかしら?」
「僕ならそうするけどね。彼らがどうするつもりだったのかは訊かなければわからないだろう。SSSランクともなればしがらみも多いだろうからな、何とも言えないな」
「そう……」
「だいたいな、全て僕の推測なんだぞ? まったくの的外れかもしれないんだ。そんなに深刻になられても困る」
「それもそうね。お腹空いちゃったわ、夕食にしましょう?」
「そうだよ、温泉も入りたいし!」
「では、もういいだろうか?」
そう言ってディールは魔法を解いたみたいだった。
きゅ、と小さな音が鳴る。
「今回の事件は謎だらけねー」
「謎は謎のままでいいだろう。首を突っ込んでもメリットはなさそうだな」
「ごはん行こう、ごはん」
「食堂は何階だ?」
「パンフレットに載ってるんじゃないかしら」
ミィウがテーブルの上にあったパンフレットを手に取って広げる。
「最上階がレストランになっているのね。だから部屋がなかったのかしら」
「最上階丸ごとレストランなのか?」
「そうみたいよ、ほら」
「豪勢だねー」
「早速行きましょ」
「だな」
俺たちは4人揃って部屋を出た。




