第1話(38)
ミィウが用意してくれたお茶は、果物の香りがした。
「おいしいね、これ」
一口飲むと、爽やかな香りが広がった。
「色々あるみたいだけど、私はこれが好きなのよねー。おいしいでしょ? 木の実を何種類か配合してあるのよ。好き嫌いが分かれるから、下では出さなかったんじゃないかしら」
ミィウは得意顔だ。
なるほどなー。
ミィウが腰掛けたところで、ディールが真剣な顔つきになった。
「まずこれから話すことは、正解かどうかわからない。あくまでも僕の推測だからね。それでもいいか?」
「うやむやのままよりは、ね。それなりに納得がいけばいいわ」
「そっちの2人は?」
「私はわからないままでも構わない。今回の黒幕には知られたくないことだったんじゃないか?」
「そうでもない。むしろ僕たちを担ぎ上げたほうが処理は楽だったろうからな。ただ確実に面倒な事になっただろう。ウォルンは?」
「んー、俺はどっちでもいいかな。報酬さえちゃんと貰えるならあとはどうでもいいよ」
「そうか」
重い沈黙。俺こういう空気苦手なんだけどなー。
もっと! 明るい話題は! ないんですか!
大人しくしてるけどさ……。
「ポルポレンが、いただろう」
ディールが重い口を開いた。
「それよ。ポルポレンってなんなの? 魔物は詳しくないのよね」
「じゃあこう言えばいいか? クシュテル侯爵の息子が召喚に成功した、珍しい魔物」
「なっ?!」
「知っているか?」
俺は知らない。何そのくしゅなんとかとか。
俺が頭にハテナマークを浮かべているのに気づいたのか、ディールがにや、っとした。
「ウォルンにもわかるように説明してやろう。ここテンバドを含め、12の領地を治めているクシュテル侯爵ってのがいる。テンバドはクシュテル領の一部だ。本拠地はテンバドではないが、今はテンバドに滞在している」
ふむふむ。そのくしゅなんとかが黒幕なのかな。
「でもなんでわざわざテンバド鉱山で魔物を召喚したりしたんだ?」
それがわからない。
「そこなんだが、現場の混乱を見るに、クシュテル侯爵の本意ではなかったように思う」
「クシュテル侯爵と言えば、善政で有名だものね」
「クシュテル領は過ごしやすい街が多いな」
うわー、くしゅなんとか知らないの俺だけか!
「あまり知られていないが、珍しい鉱石が発見されたという噂が広まる前から、テンバドを狙う盗賊団がいた。クシュテル侯はそれを知っていただろう。賢侯であるクシュテル侯は、すぐさま鉱石の噂を流した。これも僕の推測だがな。だから、」
「珍しい鉱石に釣られて盗賊団がテンバドに目をつけたように噂が広まったのね」
「そんなところだろう。元々テンバド鉱山は儲かっていたからな、盗賊団は鉱山そのものを入手するつもりだったんだろう。もしくは、他の領地を治めている奴が仕組んだとも考えられる」
うーん、このお茶おいしいな。難しい話は苦手なんだよ……。
「では盗賊団を一網打尽にするために、クシュテル侯が今回のことを……?」
「そうだろうな。ところが、クシュテル侯の息子がその計画をたまたま知ってしまったんだろう。クシュテル侯に先んじて手柄をあげたかったとかそんなところじゃないか?」
「あら、仲が悪いのかしら?」
「逆だよ。息子からしたら、役に立ちたかったとかそのあたりが妥当なセンかな」
「先走ってしまったのね」
「だろうな。クシュテル侯の準備が整わないうちに、息子が乗り込んでしまった。鉢合わせた盗賊団を倒そうと魔物を召喚したはいいが、術式を間違えでもしたんだろう。大量の魔物と魔獣を召喚してしまって大混乱だ」
お茶おいしいです。おかわりは……。はい、自分でいれます。




