第1話(36)
「失礼致します。ミィウ様、お部屋の候補がいくつかあるのですが、ご覧になって頂けますか?」
最初に声をかけてきたホテルのスタッフが戻ってきた。
「ええ。見せて頂戴」
これからも、お泊まりのときの代表者はミィウに任せるのがいいかもな。
スタッフはパンフレットのようなものを広げて、ミィウにひとつひとつ説明をしていた。
俺たちも興味津々で覗き込む。
「ここにするわ」
ミィウが指差したのは、最上階の1階下、提示された中では1番高そうな部屋だった。
「み、ミィウ、高そうだけど大丈夫?」
「あら、たまにはいいじゃない。どうせ滞在しても数日なんだし。足りなければ貸しにしといてあげるわよ?」
「うっ……。不安だな……」
「冗談よ。今回の報酬だってかなりもらえると思うわよー? 心配には及ばないわ」
「そ、そうなの……?」
「ウォルンにはこういうのにも慣れてもらわないとね」
「な、なんで……?」
「いざというときハッタリが効くのよ」
そういうものなのか……?
ただ景色のいい部屋に泊まりたいだけじゃ……?
「この部屋でお願いするわ」
「かしこまりました。すぐに用意を致しますのでお待ち下さいませ」
スタッフは一礼して去っていった。
「ミィウに任せたのは失敗だったかな」
「あら、失礼ね。メルクレンはどう思う?」
「私もこんな立派なところに泊まったことはないから緊張するな」
「そうなの? 鍛冶師としてはともかく、クエストなんかで稼いでるんじゃないの?」
まああれだけ強かったらな。
「痛いところを突いてくるな。確かに、私の造った装備品はあまり売れないな」
「でしょうね。そうじゃないかと思ったわ。専用の鍛冶スペースなんかも持ってないんじゃない?」
「そうだな。その通りだ」
ん?
「だったら、武器とかはどうやって造ってるんだ?」
「割りと色んな街に鍛冶の貸しスペースがあるんだ。そういうところを借りている」
「旅をする鍛冶師は少なくないからよね」
「ああ、そうだ」
ふーん。
「でも、欲しいと思わない?」
「何がだ?」
「自分専用の鍛冶スペースよ」
「欲しくないと言えば嘘になるが……。そうしたら身動きが取りづらくなるだろう?」
「そんなものかしら?」
でもいいなぁ。俺も拠点みたいなの、ちょっと憧れる。ミィウの影響か?
「そういえば、メルクレン。鉱山に持ってきていた武器はどうしたんだ?」
「タダ同然で売り払ってきた。持っていても邪魔だったからな」
「もったいない……」
「名が売れればな……」
うーん。そのあたりも課題かぁ……。
「お待たせ致しました。お部屋の準備が整いましたのでご案内致します」
スタッフに案内されて、俺たちは部屋へと向かった。
まず驚いたのが、その移動方法だ。1階のホールにある大きな扉を開けると、そこには魔法陣がいくつもあって、ひとつひとつに立て札が置いてある。
立て札には大きく数字が書いてあり、遠目に見てもすぐわかるほどだ。
このホテルは15階建てで、俺たちが向かうのは14階。
「こちらの魔法陣にのって頂ければ14階へ着きます。移動は1人ずつしかできませんので、お着きになりましたら、そちらでお待ち下さい。お部屋までご案内致します」
俺たちは1人ずつ魔法陣にのって、14階へと移動した。最後にスタッフが移動してくるのを待ち、部屋を案内してもらう。
「結構広いなー」
「迷子にならないでね」
「ならねーよ!」
「こちらでございます。ごゆっくりおくつろぎ下さいませ」
部屋の案内が終わったスタッフは鍵をミィウに渡すと戻って行った。




