第1話(35)
「それにしてもなんだったんだろう、さっきの」
テンバドの街は人の気配こそ少ないものの、特に混乱しているようではなかった。
「あーっ! つっかれたー!」
ミィウは伸びをした。あんまり気にしてないのかな。
「情報が正確に伝わっていないんだろう。今日はゆっくり宿で休んで、明日にでもギルドに行ってみればいいんじゃないか」
ディールの言う通りかもしれない。まずは俺もゆっくり休みたい。
「それもそうだね」
「ぜっ、全員で泊まるのか?」
「そうねー。ちゃんとした宿にこのメンバーでお泊まりは初めてね」
「お……お泊まり……」
メルクレンも1人で行動してたのかな。複数人で泊まるの初めてっぽいな。
大通りを街の中心へ向かって、俺たち4人はのんびりと歩いて行く。
「おっきーいとこがいいわね」
「たまにはいいんじゃないか?」
俺たちは目についたでかい宿に入ってみることにした。
「ようこそテンバドの街へ! お客様、こちらの宿は初めてですか?」
明るくハキハキとしたスタッフが出迎えてくれた。
入ってすぐのところは、とても広かった。
入り口にはスタッフが数名待機していて、奥のカウンターにも数名いる。横のほうはくつろげるスペースになっているようで、ソファとテーブルが並んでいた。
「初めてよ。泊まりたいのだけど大丈夫かしら?」
「もちろんです。お部屋はいかがなさいますか?」
キョロキョロとまわりを見回していたら、ミィウがつついてきた。
「なあに?」
「4人部屋にする?」
「女の子もいるからなぁ。2人部屋をふたつでいいんじゃないか?」
「じゃ、2人部屋をふたつで。隣合ってるところがあればいいけど、あるかしら?」
「はい、ございます。失礼ですが、身分証明書はお持ちでしょうか? 代表者の方だけで構いませんので」
代表者って俺かな?
「ギルドカードでいいかしら?」
「はい。拝見させて頂きます」
ミィウがあっさりとギルドカードを取り出して、スタッフに渡した。
「確認させて頂きました。ありがとうございます」
スタッフはミィウにギルドカードを返すと、ソファのあるところへ俺たちを案内した。
「お部屋の準備をさせて頂きます。しばらくこちらでお待ち下さい」
スタッフは一礼するとカウンターへ向かったようだ。
ソファはふっかふかだった。
「ふわぁー、すっごいなこのソファ」
「高級ホテルなんてこんなもんでしょ」
そうですかー。
すぐに別のスタッフが来て、お茶とお菓子を出してくれた。
俺たちはそれを摘まみながら、のんびりとしていた。
「メルクレンは俺たちのパーティに入ってよかったの? なにか目標とか行き先とかないの?」
「おい、ウォルン。僕にはそんなこと訊かなかったじゃないか。まずは僕に訊くべきだろう、僕に」
「ディールにそんなものあるなんて思わないわよー」
同感だ。
「おまえたちな……」
「ふふふ。ウォルンのパーティに入ってよかったと思うぞ。特に行きたいところはないが目標はあるかな」
「へー、どんな?」
「リベイムの加工はしてみたいな」
なにそれ?
「り……?」
「最も加工が難しいと言われている材質だ。だがリベイムで造られた剣はとても丈夫だし、魂が宿るとも言われているな」
「なんかすごいんだね。そのリベイムっていうのを探すのか?」
「いや、リベイムは買おうと思えば買えなくはない。少々値は張るがな。必要なのは技術だよ。鍛冶師として経験を積まないと難しいだろうな」
「当面は武器を造るのがメルクレンの目標か」
「そうなるな。ただ、武器だけとは限らない。防具や小物も造っていきたい」
「防具はわかるけど、小物って?」
「アクセサリー類だ。戦闘に有利な効果が付いている物だな」
「そういうのもあるのかー」




