第1話(34)
ディールは杖を拾って立ち上がると、片手を魔物に向かってかざした。
魔物から淡い光が発されて消える。
「この魔法は解いておいたほうがいいだろう。じゃあ、僕たちはもう行くよ。後始末は任せてもいいか?」
「色々と助かった。改めてお礼をしたいのだが、どうだろうか」
「面倒事はごめんだって言っただろう? 僕はお偉いさんは苦手なんだよ」
「そこまでお見通しだったのか」
「ポルポレンは有名だからね。この鉱山でポルポレンと言えば召喚主は1人しか思いつかないね。ま、僕は何も見なかったけれどね」
いったい何のことだかわからないまま、俺たちのパーティはディールに促されるまま、鉱山をあとにした。
鉱山を出るとき、俺はふと疑問に思ったことを訊いてみた。
「ゴーレムはどうしたんだ?」
「最高傑作だからね。あのまま残しておきたいところだったけれど、もう消したよ」
「いつの間に……」
「魔力を無駄使いしたくはなかったからな、腰抜けどもが帰ったあとに解除したよ。鉱山に残った人間がいないのを確認してからな」
そんなことしてたんだ……。だから帰りは出くわさなかったのか。
「これからあの鉱山どうなるのかなぁー」
「しばらくしたらまた通常化するだろう」
「珍しい鉱石ってほんとにあったのかなぁ。探してくればよかったんじゃないか?」
「それならば戻ってみるか? いま行けば確実に面倒事に巻き込まれるが」
あー、面倒事かぁ。ならいいや。
「やめとく」
「ディールは何があったのか知っているの?」
「私も気になっている」
「僕も憶測に過ぎないが。それでもよければ話してやるよ。それより、まずはさっさと宿でもとって休みたいんだがな」
「そうねー。テンバドっていったら温泉よね! ゆっくりしたいわー!」
「それもそうだな」
「モクルたちはどうするんだ?」
『ひとのやどはきゅうくつなのでそとでまっています。ののるもいっしょにくるか?』
『うん。ごちゅじたま、いい?』
「うー、ノノルがいいならいいけど……」
「ウォルン、魔獣は街の中は過ごしにくいのよ、色々と。そのあたりは割り切らないと」
そういうものなのかぁ。
「テンバドは魔獣が中に入ることには寛容な街だからね、一緒にいられなくはないけど」
『あまりかんげいはされないですからね』
そんなもんなのか。
『それにわたしたちもそとのほうがきらくなんです』
「うーん。なんか申し訳ないなぁ……」
『うぉるんさまはいいひとですね』
「そんなことないよ」
ノノルたちと会うまでは俺も魔獣が苦手だったからなぁ……。
俺たちはたわいもない話をしながら、テンバドの街へと歩いて行った。
テンバドの街の入り口では、ギルド員が数名待ち構えていた。
「君たちは?」
ん?
「鉱山へ行ったメンバーは全員引き返してきたはずだと聞いているが」
そっか。避難場所のメンバーももう戻ってたのか。
「片がついたから戻ってきたんだが?」
「そんなはずはないだろう。鉱山には強い魔物が大量にいて、生きて帰ってこれる者などいないはずだと聞いているぞ。少数残った者たちがいることは聞いていたが……。もう鉱山はダンジョンとして閉鎖するようにと話が進んでいる」
なんでー?!
「なんだっていいわよ。私たちは街に入れてもらえるの? 入れてもらえないの?」
「そ、それは構わないが……」
「じゃ、さっさと通してよ。くたびれちゃったわ」
それからミィウはモクルたちのほうを向いた。
「モクル、ブラウ、呼ぶまで外でゆっくりしてらっしゃい」
「ノノルをよろしくな」
『はい』
『かしこまりました』
『じゃーね! ごちゅじたま!』
「おう、またな」
俺たちはモクルたちが森の中へ入って行くのを見届けてから、街の中へ入った。




