第1話(33)
バリンバリンバリン。
ディールも速いなぁ……。
1体1体魔法で砕いているはずだし、実際消えかけの熱源が順々に消えていくから倒してるのは間違いないんだけど……。
凍った魔物の最後の1体を倒してディールの動きが止まる。
『ディール、どうかした?』
『どうもしていない。彼女らの獲物を横取りしたら後が怖そうだからな。高みの見物といこうかと思っただけだ』
妙に納得してしまった。
『これでも時間稼ぎになると思ったんだがそうでもなかったな』
時間稼ぎ? まさか、1体1体じゃなくて全部同時に砕くことも可能だったなんて言わないよな?
『まとめて砕いたほうが早かったんだが。凍らなかったやつまで全滅させたら暴れ足りなさそうなのがいるからな』
『それって誰のことかしら?』
『ヒーッヒッヒッ! くたばれぇ!!』
『と、いうわけだ』
『なるほどね』
おにーさんずの熱源も動かなくなった。あっけにとられてるのかな。メルクレン怖いもんなー。
魔物の熱源はあと2体。
メルクレンが戦っている魔物と、あ、倒した。
あと1体か。
『ヒャッフーッ!』
『待て、メルクレン』
?
最後の1体にメルクレンが標的を移したときだった。
ディールがメルクレンを止めたようだ。
『ウォルン、回復魔法はいったん止めていいからこっちへ来い』
なんだろう?
『わかった、いま行く』
集中を解いて立ち上がり、ディールたちのところへ走って行く。
「どうしたんだ?」
「これだよ、これ」
どれ?
ミィウ、メルクレン、ディール、大剣のおにーさん、長剣のおにーさん、そして合流した俺の目の前には地面にべったりとくっつくようにして動かない魔物。
「あっちのメンバーも呼んできてくれ」
あっち?
「あっちとあっちな」
どっちとどっちだよ!
しかたなく俺は魔術師のおにーさんずとノノルたちを呼びに行くことにした。
んもう! そういうことは先に言ってよね!!
俺、リーダーじゃなかったっけ……? なんで使いっ走りなの……?
全員が揃うと、ディールはその魔物に近づこうとしたが、ハッとなったように足を止め、俺のほうを向いた。
「念のために回復魔法かけていてくれるか?」
「あっ、うん」
俺はこの場にいる全員に回復魔法と状態異常解除の魔法がかかりっぱなしの状態にする。
ディールにあきれたような目で見られた。なんでだよ。
「魔力使いすぎじゃないのか?」
そんなこと言われてもな。
「半分も使ってないと思うけど」
「なら、いい」
なんなんだよー。
ディールは魔物のほうに向き返り、ゆっくりと近づく。しゃがんで杖を後ろに置き、魔物に向けて魔法をかけた。
魔物は淡い光を放ち、そして話しだした。
『オッ、オマエタチ、ナニモノナンダ。イマスグココカラタチサレッ』
「そんなに怯えなくても何もしやしないよ。ところで、その下に大事に隠してるのはおまえのご主人様か?」
『………………! ナ、ナニヲイッテイルンダ』
「気づいて……?」
ん?
いまのはおにーさんずのどっちかかな?
なんだろう、何が起きているんだ?
「僕は詮索する気はないよ。面倒事はごめんだからね。この魔物は放っておいてもいいっていうなら、僕たちはこれで撤収する。いいよな? ウォルン」
最後は俺に向けて言った。
「よくわからないけど、いいよ?」
「どういうことなの?」
「倒してはいけない魔物なのだな?」
メルクレン、元に戻ってる。ホッ……。
でもどういうことなんだろう?
「さあな。倒してはいけなかったわけではないと思うが」
「その通りだ。むしろ混乱に乗じて、始末し」
「ストップ!」
ディールがおにーさんのセリフを遮った。
「大事にならなかったんだからいいんじゃないか? 僕たちは何も“気づかなかった”。そこの魔物は動かないから死んでいると思った。それでいいだろう。今回の被害者はほとんどいない」
「ゼロではなかったが」
「そうなのか? なんにせよ、大きな失態ではなかっただろう。いや、失態ではなくなった、と言うべきか」
「君たちのおかげだよ」
「報酬はたんまりと弾んでくれるようギルドに掛け合っておいてくれ。口止め料は含めなくていいがな。なにせ僕たちは何も気づかなかったのだから」
「恩に着る」
「あんたらに責任はないだろうよ」




