第1話(32)
俺は地面にどっかと座る。
目を瞑り、集中する。
………………。
見えた。
熱源が、1、2、3、4、5、6、7。
少し離れて、4つの熱源。
モクル、ブラウ、ノノル、鍛冶師さんだな。
これなら、この奥の突き当たりまで移動されても大丈夫そうだ。
薬草集めをしていたとき、魔獣狩りのパーティの邪魔にならないようにと取得していた小技がこんなところで役に立つとは思わなかったけど。
「俺から離れても大丈夫」
「頼もしいわね。ちなみに、どのくらいまでなら大丈夫なの?」
「この奥のほう、壁にぶつかるところまでなら問題ないな」
「頼もしいわね」
ヒューッ!
この口笛はディールだな。
「そうこなくちゃな」
「ノノルたちのとこもかけとくよ。そのぐらいなら全然平気そう」
「うちのリーダーのバケモノ具合といったらないわね」
心外だな。俺からしたらミィウやディールのほうがよっぽどだよ。
「魔力は持つのか?」
「あいにくと攻撃魔法は使えないからね。余っちゃうぐらいだよ」
「なんだかわからないが、ウォルンはすごいのだな」
メルクレンか。
「すごくはないよ。戦えるほうがすごいと思うよ」
「メルクレン、ウォルンに気を取られてると楽しい饗宴に乗り遅れるわよ」
「そうか。気を引き締めねばな」
「ま、気楽にいきましょ」
「ウォルン、声の魔法をかけても平気か? 干渉してしまうか?」
「んー? 大丈夫だと思うよー。そもそも種類が違うから」
「そうか。では、行くぞ。そろそろ開始だ』
『楽しみねぇ』
『ミィウたちの足を引っ張らないように頑張りたい』
ディールの声の遠隔魔法かな? たぶん遠くに行っても声のやり取りができるんだろう。
うわあー。緊張してきた。
ふっ、と場が軽くなった気がした。詠唱の声も止まったようだ。そのまま魔力だけ流し続けるのかな?
魔力の流れまで見えちゃうなー、これ。
バリアが解かれ、バリアへ向かっていた魔力が途切れて鉱山の地面、壁、天井に魔力が流れ込むのが見える。
ってディール何してんだあいつー!!
見てたぞ、俺は見てたぞ。
凍りつくような魔力をぶっぱなす直前、ほんの一瞬。
土色の魔力がこの一帯に流れ込んだ。ディールから。
補強魔法をすり抜けて、鉱山の岩肌をしっとりとさせた。
キューティクルなのか?! つやつやなのか?!
俺にはわからないけど、たぶん崩れにくくする魔法なんだろうとは思う。でもおにーさんたちに任せておけよ、まったく。
それにしてもおにーさんたちはさすがだな。オーラみたいなのは揺らめいたから気づいたんだろうけど、流している魔力には微塵も影響を出していない。
「来る」
あっ、剣士のおにーさんかな?
声の聞こえた方向の2つの熱源が高速で移動する。
ディールの魔法をくらっても動ける魔物目掛けて走っているようだ。かと思うと魔物と思われる熱源は次々と消えていく。
えっ、速い速い。回復魔法いらないんじゃないか? かけ続けるけども。
ミィウも移動速度自体はおにーさんたちに敵わないが、瞬殺っぷりは似たりよったりだな。
ディールは凍らせた魔物を1体1体魔力を流して砕いている。容赦ないなー。
1番怖いのはメルクレンだけど。鍛冶師だよね? さっきから恐ろしいセリフがぽんぽん飛び出してるんだけど……。
『イヤッハー! 弱い弱い弱い弱い! マト?! マトか?! ちょっとは抵抗しろよー!』
魔物がかわいそうになってきた……。
『メルクレン、楽しそうね』
『好きなだけ暴れさせとけ』
いや怖いよ?!
『あ、あはは……』
もう俺、乾いた笑いしか出ないっす……。




