第1話(29)
おっきい魔物が2体、あとふよふよ浮いているちいちゃな魔物が1体。
「あれかわいいなー。弱そうだね」
俺がそう言うと、ディールはニヤッと笑った。
「飼ってみるか? 案外面白いかもしれないな」
「へー」
どんな攻撃してくるんだろう?
どんなのだとしても、そんなに強そうじゃな……
はあっ?!
ふよふよした魔物は氷の刃を大量にまわりに浮かばせた。
対峙しているパーティは反応できないでいる。
「ウォルン、こりゃあ仕事ができたな」
ディール、そんなのんきな。
「追尾型で威力も満点。いやあ、楽しみだ」
楽しみじゃないよ!!
氷の刃はふよふよと浮かんだまま、攻撃しようとしない。
なんでだ?
「さあ、どうなるか」
ディールー、説明してくれよー。
大きなほうの2体がパーティに襲いかかる。
剣士が2人、格闘家が2人、1人は魔術師かな?
魔術師が援護をしながら、剣士1人と格闘家1人ずつが組んで1体ずつ相手をするみたいだ。
剣士が剣を振った。魔物に剣は届かない。
「………………!」
どすっ、どすっ、ほぼ同時に剣が落ちた。腕ごと。
距離を計っていた格闘家2人はザッ、と後ろに下がって距離を取る。だが。
いつの間にかその後ろまで迫っていた氷の、そうだ、あの氷の刃が背中に突き刺さる。
これもほぼ同時だった。
「な……」
なにが起きたんだ?!
地面に剣士の肩と落ちた腕から溢れる血が染み込んでいく。
格闘家も口から大量の血を吐き出して倒れた。
魔術師は杖を掲げ、呪文を唱えようとしている。
「遅い」
ディールがさも面白そうに言った。
氷の刃がひとつだけ、魔術師に触れるか触れないかギリギリのところを掠めた。
掠めただけ、だった。
一瞬の静寂ののち、魔術師は凍りついた。まるで氷の彫刻のように。
「いやあ、これは僕が出るしかないかなぁー」
楽しそうにディールが言う。
しかしディールがいやあ、と言っている最中、影が2つ、3体の魔物の前に立ちふさがった。
いったいいつ動いたんだ、と思うほど一瞬の出来事だった。
2つの影だと思ったのは2人の剣士だった。
「ん? なんか出てきたな」
ディールはちょっと残念そうだ。
左側の剣士は剣を腰に差したままで気楽な風に立っていた。
右側の剣士は背中の大剣を軽々と引き抜くと、くるぅり、と一回転させた。
パリンパリンとガラスが割れるような音が連続で聞こえた。見れば、その足元には氷の欠片が散らばっている。
その動作がまるで準備運動とでもいうかのように、大剣を構えると、大きな魔物のほうに斬りかかった。
隣の剣士はまったく動きを見せない。ただ、立っている。よく見れば戦闘の様子を見ているようでもあった。
大剣を持ったほうの剣士が、瞬く間に魔物を1体倒した。
どすう、と重たい音を立てて魔物が倒れる。
もう1体の魔物が、動かないほうの剣士は隙だらけとでも思ったのか、そちらへ向けて襲いかかった。
ポケットから小銭を出すような気軽さで、その剣士は剣を抜いた。
あれは長剣かな?
抜いたところまでは見えたんだけど。
ビシャー、と全身から血を吹き出して、その魔物は倒れた。
剣の動きがまったく見えなかった。距離もあるし、剣士がこちらから見ると背を向けている、ってのもあるだろうけど。
「魔法でも使ったのかな?」
俺が言うと、ディールは短く笑った。
「まさか。剣の腕だけで倒したな。僕の出番を奪うだけのことはある。まあまあかな」
まあまあってレベルじゃないだろ!
ディールだからなぁ……。そりゃ素直に言ったりはしないか。
その間に、ちっこい魔物はまた氷の刃を出し直し終わっていた。
出し直し終わったとは思ったが、あれ? さっきより数が多くないか?
ちっこい魔物を護るかのようにまわりを取り囲んでいる。
氷の刃は様子を窺うかのように静止していた。




