第1話(23)
メルクレンはそこまで話すと、喉が渇いたのか飲み物を取り出してごくごくと飲んだ。
「力説のあまり、立ち上がってしまってな。ガッターン、と椅子が倒れて、ちょうど注文したものを運んできた店員にぶつかったんだ。その拍子に店員が持っていた食事の皿が私にふりかかった」
それはつまり。
「大変なことになったんだが、それが効を奏したのか、師匠に気に入ってもらえたらしくてな、弟子にしてもらえたんだ」
「よ、良かったね……」
「肩が震えているぞ。遠慮せずに笑うがいい」
俺が我慢できずにぶふぉ、っとふきだしてしまっていると、ミィウが戻ってきた。後ろからモクルとブラウもついてきている。
「あら、楽しそうね。何の話?」
「お、ミィウ。こちら鍛冶師のメルクレン。鍛冶のお師匠との出会いを聞いていたんだ。メルクレン、俺のパーティのミィウだ」
「メルクレンだ。鍛冶師をやっている」
「魔獣使いのミィウよ。こっちがモクルでこっちがブラウ」
ミィウは近くまで来ると床に座った。モクルとブラウもそれぞれ座る。
「鍛冶師なのよね?」
「そうだが」
ミィウはおもむろに自らの武器を取り出した。
「これ、斬れ味が落ちてるの。なんとかならないかしら」
「見せてもらっていいか?」
「もちろん」
ミィウは鞭をメルクレンに渡した。
「これぐらいなら研磨できるぞ。まあ、数が多いから時間はかかるが」
「お願いしていいかしら?」
「ああ」
受け取った鞭をいったん床に置き、メルクレンは研磨の道具のようなものを取り出して早速取りかかる。
「見事なものね……」
ミィウがメルクレンの作業を見て言う。
「ま、これが仕事だからな」
なんてことないことのようにメルクレンは言いながら、慣れた手つきでひとつひとつ丁寧に研磨していく。
「ところで鍛冶師さん」
「メルクレンでいいぞ」
「じゃあ、遠慮なく。メルクレン、私たちのパーティに入らない?」
「ほえあっ?!」
いきなり?
「ちょっとウォルン、なんであんたが驚いてるのよ。だいたいあんたが言い出したことでしょう?」
「い、いや、だってさ、そんないきなり……」
「いきなりもなにもないでしょう」
なぜか俺とミィウが言い合いになってしまった。
「ウォルン、ミィウ、なぜ揉めているんだ?」
メルクレンが割って入ってくれなかったら堂々巡りになるところだった。
「あ……、メルクレン、だって、な……?」
「私は別に構わないぞ」
そんなあっさり。
「ほら、メルクレンだってこう言っているじゃない」
「そんな簡単に決めていいのか?」
「パーティに入っている鍛冶師というのはそんなに珍しくないからな。女の鍛冶師なんて誘ってくれるパーティはめったにない。むしろありがたいくらいだが?」
「良かったわね、ウォルン。鍛冶師がメンバーになったわよ」
「悪かったな、前衛や後衛じゃなくて」
「あら、そういう意味じゃないわよ。鍛冶師がパーティにいれば、前衛や後衛だってパーティに誘いやすいじゃない?」
それもそうか。
「前衛や後衛って、何の話だ?」
「ミィウは前衛、後衛のいるオーソドックスなパーティが目標らしい」
「パーティってそういうものでしょ?」
「そうと決まったもんでもないだろうよ……」
「ふふっ……。ウォルンのパーティは楽しそうだな」
そう見えますか?! 問題児しかいないぞ? メルクレン、考え直したほうがいいんじゃないか?
「ただ……」
ほら、やっぱり、問題あるよな? あるよね!
「ディール殿は私がパーティに入ることを許してくれるだろうか」
「ブッ……!」
「ちょ、メルクレン、ど、ど、殿ってなに、殿って……。ディールなんかに」
「彼は立派な魔術師ではないか」
「りっ……っぶっ! あはははは、なにそれ、ディールがりっ、ぱっ、て! ぶは、ひはははは! 新手のギャグ?!」




