第1話(21)
そろそろ俺もお腹がすいてきたな……。しかして、ディールはともかくノノルまで起きやがらねぇ。まったくこいつらときたら。
「ねぇ、ウォルン?」
「なんだ?」
「お皿片づけて?」
まったくこいつらときたら!
カチャカチャとお皿を集めてかいがいしく片づけをする俺を尻目に、ミィウはうーんっ、と伸びをして立ち上がる。
「どっか行くの?」
「オトメにそれを訊くのは反則よ?」
ああ……。失礼した。
広いだけあって、ここにはトイレから簡易シャワーまであるのだ。至れり尽くせりだな。もちろん、数もそれなりにあるし、それぞれが完全個室になっているから女性も安心なのだ。何が安心かは訊くな。反則だぞ?
俺としては、広々とした温泉にでも入りたいのだが。早く決着がつけばいいな。動機が限りなく不純なのは目を瞑って欲しいというものだ。
ここテンバド鉱山を抱えるテンバドの街は、実は温泉街としても有名で、鉱石目当ての冒険者だけではなく、温泉目当ての旅行客も多い。
今は緊急事態ということで、そういった客は近くの街へでもバラバラに避難しているんじゃないだろうか。
思いを巡らせていると、ようやく解放されたというべきか、メルクレンが肩をコキコキさせながらこちらへやってきた。
ご苦労さまです。
にしても、なんだかんだメルクレンは俺のとこに来るよな。これはパーティに誘ったら案外了承してもらえるんじゃないだろうか。
「うむー……、武器はなかなか売れないな。防具も持ってくるべきだったか」
「おかえり、メルクレン。武器は余っちゃいそうだね」
「ほんと。私もまだまだだな。予想はしっかり立ててくるべきだった」
「残念だったね。ところで、メルクレンは防具も作れるの?」
「師匠の方針でな。武器防具から小物に至るまで何でもだ。裁縫工場やら細工師のところに修行に出されたりもしたな」
「スケールの大きいお師匠様なんだね」
「まあな。変わり者で有名で、私ぐらいだろう、師匠に認めてもらえるまで弟子をしてたのは。やれ俺のやりたいことと違うだのと、辞めていく奴らばっかりだったな」
「メルクレンはどうしてその人の弟子になったんだ? やっぱり、すごい人だったから?」
俺がそう言うと、メルクレンは苦笑いをした。
「それがな、師匠には悪いが、この方でないと! なんてのがあったわけではないんだ。鍛冶職人ってのは妙に頭が固いというか、偏屈でな。女が鍛冶などと鼻で笑うんだよ。悔しくなかったと言えば嘘になるが、そんなことよりも私は鍛冶師になりたかった」
当時を思い出しているのか、遠い目をしてメルクレンが語る。
「とにかく弟子入りをさせてくれる鍛冶師はいないものかと、藁をもすがる思いで探したよ。でも見つからずに諦めかけた頃だった。私は運が良かったのだろうな……。たまたま旅の途中だった師匠と、露店で出会った」
「露店で?」
「そうだ。今思い出しても笑えるな」
メルクレンは肩を震わせた。くすくすと笑っている。
「ちょうど鉱石を売りに出していた露店商から、デッコイを買ってね。私は珍しいなと、興味本意で買ったんだ。それも、値切りに値切ってね。さほど欲しかった物でもなかったから、気軽に交渉したら、露店商は交渉に慣れた者の余裕と勘違いしてくれたみたいでね。ちょっと涙目だったよ」
その露店商さんも気の毒に……。でもまあ、商売をする者なのだから、交渉術に長けていないのは本人が悪いか。
「交渉が成立して、金を払ってデッコイを受け取ったときだった。ふらりと現れた師匠が声をかけてきた」




