第1話(18)
向こうのほうでは食事の準備が始められていた。
俺やノノルはさっき食べたばっかりだけど、メルクレンや戦士たちの分だ。
俺も足元をうろちょろするノノルを引き連れてお手伝い。
そしてまた魔法陣。
俺が手伝いの途中で抜けることを詫びると、怪我人優先だろ、と背中を押された。
重傷者が8人か。ディールが来ないってことはディールとブラウは無事なんだろうな。無理してなきゃいいけど。大丈夫かな。
怪我人を回復させて、一緒にごはんを食べるように促す。
待ってるだけってのはもどかしいな。
何回かの転送ののち、帰還組が帰っていき、休憩を終えた前線組がまた出発するのを見送った。
戦況はまだ五分五分なんだろうか。少しずつ進展はしているんだろうけど。まだまだ先が見えなかった。
同じことの繰り返し。終わりが見えないな、とため息をつきそうになって、慌てて止めたときだった。
見慣れたを通り越して見飽きたほどの魔法陣から、ディールとブラウが戻ってきた。
「無事だったんだ……!」
「いったい誰にものを言っている? 僕ほどのはじける噴射ブーメランな大魔術師が無事じゃないわけないだろう」
いつものディールだ。なんだかほっとする。ところで、ふと疑問。
「負傷者はもういなかったのか?」
「全ての坑道を見回ってきたはずだ。地図にももう、この道しかない」
ディールが指し示した地図には、もう見てきたのだろう、ひとつを除く全ての道にチェックがつけてあった。
「この道は……」
ひとつだけ、最奥へ続いているひときわ大きな道。
「ここが1番魔獣や魔物が多い場所で、ミィウたちが苦戦しているところだな。それから、一応僕が見回ったところはゴーレムを配置してきた。間隔はあいているが、巡回をさせている。異常があればすぐ僕にわかるようになっている」
「ディールってすごいんだな……」
「いまさら大地を一陣の風のように駆けめぐる僕の素晴らしさを称賛したところで何も出ないぞ」
なんて?
ディールはどこまでもディールだった。
「僕は寝るぞ」
えっ?
問い返す間もなく、ディールはその場に寝てしまった。
『まりょくをつかいすぎたんじゃないでしょうか』
魔力を消費しすぎると疲れるっていうもんな。そう言われてみれば、どことなく顔色も悪い気がする。
俺はそのへんにあった毛布をそっとディールにかけた。
食後戦士たちと歓談をして、戦士たちが寝たあとは片づけやなんやを手伝っていたメルクレンが一段落ついたのか、こちらへやってきた。
「残念。寝てしまったのか。さきほどのことを謝りたかったんだが」
「ディールはもう気にしていないと思うよ。それより、前線の様子はどうなんだろう? 何か聞けた?」
俺とメルクレンはひそひそ声で話す。
ディールのそばで、ブラウとノノルがくっついて寝ている。ふさふさのほわほわであの中に埋もれて寝たい。
「難しいみたいだな。だいぶ敵の数を削ったようなんだが、奥へ行けば行くほど強いのがいるみたいだな。私も参戦しようかな」
「メルクレンも戦えるんだ?」
「そうでなければ旅などできないからな。護衛を雇うのも面倒だし。余った武器は預かってもらおうかな」
確かに、あんなに武器を背負っては戦えないだろうなぁ。
ディールも戻ってきたことだし、ミィウたちが戻ってきたら俺も前線行けるかな。どんな状況なのか見てみたいし。
と思ったら、ミィウたちが戻ってきた。
俺とメルクレンは目配せをしてお互いに頷くと、その集団の中へばらばらに潜って行った。俺は回復のため、メルクレンは武器の販売のため。
人々の中に埋もれていくメルクレンを見送り、俺はまずミィウのところへ。もちろんモクルもいる。




