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第1話(17)

「あ、な、なんかびっくりしましたね。いつもはあんな奴じゃないんですけど」


「すまない。彼には悪いことをした。とても大切なものなのだろう。ツニャークとは珍しい……」


「ツニャーク? 何ですか、それ?」


「あの杖に嵌め込まれていた鉱石だよ」


「珍しい鉱石なんですか? 俺はあんまりそういうの詳しくなくて」


「いや、ツニャークはありふれた鉱石だよ。どこを掘っても出てくると言われているくらいだからね。魔法使いだったら、魔力を帯びた鉱石とか、属性を持った鉱石を嵌め込むのが主流なんだが。または高価な鉱石とか。ツニャークは細工を施したら美しいのだが、それでもツニャークを選ぶ魔術師は稀だね。ツニャークに価値はほとんどない。細工にこそ価値があると言われる鉱石だからな」


どういうことなんだろう。


ディールと知り合って間もないが、俺の知ってるディールのイメージとはかけ離れている。


初めてあの杖を見たときも、嵌め込まれているのは高価な鉱石だと思っていた。杖のデザインも派手だし。


「迂闊に触ろうとした私が悪かったんだよ。ちょっと気になったからといって、勝手に触るのはやはり気分のいいものではないだろう」


まあそれはそうかもしれないけど。ディール怒りすぎ。


「気になったというのは?」


「杖の装飾は凝っているのに、鉱石は表面の艶を出すために磨くくらいでほとんど手付かず。いびつな形だっただろう?」


そこまで見てなかった。そうなのか……。


「鍛冶師や細工師はこだわり派が多いからね。細工もしてないツニャークを嵌め込むなんてことは大概断ると思うんだよなぁ……。あの人ならともかく」


「あの人?」


「私の師匠だよ。少々変わり者でね」


「だとすると、あの杖を作ったのはメルクレンのお師匠様かもしれないってことか」


「必ずしもそうではないだろうけど、可能性としては高いかもな。あのアンバランスの上に成り立つ美はなかなかだよ。私ではああまで違和感なく作り込むことはできないな」


「ほー」


なんかよくわからないけどすごいらしい?


っとと、避難場所の入り口がざわざわしてきた。


「おっ、これは稼ぎどきかな?」


メルクレンは前線から戻ってきた戦士たちをターゲットに定め、重そうな武器を軽々と持ち上げてそそくさと向かって行った。


「すごいなー」


『しゅごーなー』


って、ぼけっとしてないで俺も回復魔法かけにいかなきゃ。


ノノルを抱き抱え、片っ端から回復魔法をかけて回る。


こら、そこ! 見た目怪しいとか言うなよ。


俺も杖とか持ってみたら格好がつくんだろうか。メルクレンに相談してみようかな。


「俺の杖に触るんじゃねぇぞ」


『のーえーにあうんえーおー』


かっこいいかな。


メルクレンは武器の販売はともかく、武具の手入れで引っ張りだこのようだ。斬れ味とか大事だよな、うん。


俺は一通り回復し終わって手持ちぶさただ。


おっ、魔法陣。


まだ負傷者はいっぱいいるんだろうか。


回復魔法をかけてギルド員さんへ、って流れが定着してきた。俺ももう慣れたもんだぜ、へへん。


転送の間隔が長くなってきた気がする。手前側より少し奥のほう、地図でいうと横のほうは入りくんでいたしなぁ。


魔獣だけじゃなくて魔物まで出ているんじゃ骨が折れそうだ。


何回か転送されてきた負傷者を回復させて、合間合間にノノルと遊ぶ。


ノノルはすばしっこくて捕まえられたためしがない。将来有望だな。


「こんなもんか」


腕のストレッチをしながらメルクレンが俺のほうにやってきた。


「売れ行きはどう?」


「まあまあかな。メイン武器の他に予備で持っておきたい、ってのでいくつか売れたよ。持ち運びしやすいのを多めに持ってくればよかったな」


ああ……。それはそうかも。メルクレンの背負う武器は重そうなのばっかりだもんな。

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