第1話(14)
「イテテテテ」なんて言いながら豪快に笑い夕食作りをする面々。
いや、怪我してるなら言えよ。
俺は夕食作りを早々に諦め、怪我してるしないを問わず1人1人に回復魔法をかけて回る。パッと見じゃ怪我してるかどうかわからないからだ。
訊いたところで、やせ我慢していられたら俺には見破ることはできない。
結果、これが最善の策だと思ったのだ。
重傷者で埋め尽くされていた時とは違い、明るい雰囲気が漂っていた。
「いやあ、あんたが噂の回復術師か」
噂? 噂ってなんだ?
回復して回っていたら、恰幅のいい戦士に話しかけられた。
「交代に来た連中に聞いたのよ。絶望的だったこの状況を塗り替える奴が来た、ってな」
「そこまで言ってもらえるようなものではないですよ。俺は、回復魔法以外何もできないんです。戦える皆さんのほうがすごいですよ」
「ははは! そういうもんかね。俺たちでは敵の侵攻を抑えるくらいしかできないからな」
「そのおかげで、魔獣の脅威から街が、人々が守られています」
「かーっ、うれしいこと言ってくれるぜ。じゃあな、あんちゃん。他の連中も頼んだぞ」
「はい」
この戦士に話しかけられたことがきっかけだったのか、回復魔法をかけた冒険者からよく話しかけられるようになった。
こんなに大勢と話すのは初めてで、なんだか気疲れしてしまった。
「回復魔法をかけるほうが楽だ……」
へとへとになってミィウの元へ。
「あら、お疲れ、ウォルン。ごはんできてるわよ」
わーい、ごはんだー……。横になりたい。
『ごちゅじたまー、ごはんできてうあよー』
ノノル、口のまわりに果物の汁がついてるぞ。先に食いやがったな?
とにもかくにも、床に座って、こんなところで食べるにしては豪華なディナーだ。
パンと具だくさんのスープ、焼いた肉に新鮮な果物。
食料運搬班が頑張ってくれてるんだなぁ……。聞いたところによると、回復薬も追加で多めに届いているらしい。すんません、うちの問題児のディールが……、と申し訳ない気持ちになった。
「そえにしてもウォウンはずういわね」
食事を頬張りながらミィウが言う。こら、食べながらしゃべるんじゃありません!
「何がだよ」
「何がじゃないわよ。魔斧炎獄の人にまで話しかけられちゃうなんて」
「何だ、それ?」
ちなみにモクルとノノルはそばで絶賛お食事中だ。
「冒険者憧れのSSSランクのパーティよ。緊急召集だったから全員はいないけど。私たちなんて普段お目にかかるのも奇跡みたいな人たちなのよ!」
こぶしを握るほど力説してくださる。何のこっちゃ。
「ああー、いいなぁー」
「一緒に戦ってるんじゃないのか?」
「そうだけど! 畏れ多くて話しかけるなんてできないわ!」
ミィウさん、目がユメミルオトメです。ああ、いたな、そういえば。戦場には不似合いな爽やか美青年グループが。まわりから一目置かれているようだったから実力もあるんだろう。
「ディールとブラウ、おなかすいてないかなぁ……」
おっと。本音が。
「ウォルン、あんたね……」
ミィウさんミィウさん、目が怖いです!
食べてる途中だというのに、またもやディールのだと思われる魔法陣が現れた。
また一仕事か。
回復魔法かけるのはいいんだけど、その度に一騒動だからなぁ。
しかし魔法陣から姿を現したのはディールとブラウだった。
「一通り見回ってきたが、手前側の鉱路にはもう人の気配はないな。多少魔獣はいたが。説得して鉱山から出るように言ってやった。話を聞かないようなのは退治してきたから大丈夫だろう。それより、腹ごしらえだ。腹が減っては武士の高枕と言うからな」
『ごしゅじんさま、このでぃーるというおとこ、まじゅうをてきししないところだけいいところです』
「おかえりなさい、ブラウ。大変そうね」
うん、なんだろうこの脱力感。
「お! うまそうだな」
ディール! それ俺の分!
平然と俺の食べかけをぶんどって食べ始めるディール。
そっくり俺の食事をとられてしまったので、俺は立ち上がった!
…………追加で食事をもらいに行くために。
「ウォルン、ブラウの分もよろしくねー」
ミィウまでそれか。




