第1話(13)
休憩していた冒険者たちが動き出した。前線に交代に行く者たちはさすがに強そうな冒険者ばかりだった。
他の冒険者は俺の一存で全員帰す。ごねる奴もいたが、「回復魔法かけませんよ? それでもいいならどうぞ」と言えば食い下がる奴はいなかった。
この場所の護衛と回復術師を残し、あとは皆がいなくなったので急にがらんとした。
「ひろーい」
アホな感想ももらしてしまうというものだ。
『ひよーい』
「なー」
ここだけ緊張感、ない。
と、見覚えのある魔法陣が現れた。でかいな。
嫌な予感がしたが、思った通り。8人の負傷者ご到着ぅー!
鉱山夫3人、冒険者5人。見事な共倒れ。
救出に行って魔獣にやられたんだな。
意識はあるようだが、呻き声ぐらいしか出せない状態だ。さくっと回復魔法。
「なっ、何が起きたんだ?!」
「強すぎる……。あの魔獣をなんとかしてくれ! って、あれっ?」
「落ち着いたら、街へ避難してください」
『くだちゃーい』
「ギルド員さんがいるので、詳しくはあちらへ」
丸投げも甚だしいが、俺は回復要員。あとはギルド員さんの仕事だろう。
それから次々と負傷者が魔法陣で送られてくる。ディール、仕事早いな。容赦ねぇ。しかし頭いいなー。ブラウは足早いし、この方法なら広い鉱山といえど、効率的に救出が行える。
合間合間に応援の冒険者たちが到着したが、強い魔獣が出没していることを説明して、敵わなそうなら鉱山夫たちの護衛を兼ねて帰ってもらった。一部は食料や回復薬運び、ギルドとの連絡係などをしてもらうみたいだ。ギルド員さんがそう言っていた。
強い冒険者はやっぱり数が少ないなー。いないわけではないので、すぐさま前線行き。ミィウとモクルは無事かなぁ。
そう思っていると、交代して前線から休憩に来たのだろう冒険者たちがぞろぞろとやってきた。
「ウォルン! ノノルも来てたのね!」
その中に元気そうなミィウと、……血まみれで重そうに体をひきずるモクルもいた。
「おー。ミィウ無事かー。モクル、大丈夫か?」
と言いつつ回復魔法。
「私を庇って大怪我したの。持ってた回復薬じゃ足りなくて。ウォルン、ありがとう」
「いえいえ」
もっとこき使われてますから。
「ブラウはどこ?」
ディールのことは訊かないんですね。
「ディールと一緒に負傷者探しだよ。さっきから容赦なく送ってきてくれやがる」
タイミング良く魔法陣が現れて、負傷者ご一行ご到着。
「なるほどね」
「ああ」
回復魔法を話のついでのようにかける。
「……ハッ?!」
「ここは……?」
ギルド員さーん、あとお願いしまーす。
「戦況はどんな感じなんだ?」
「難しいわね。恐らく、メインの採掘場所から魔獣と魔物が出ているみたい。あんなのが鉱山から外に溢れだしたら大変なことになるわね。なんとか少しずつ倒してはいるんだけど、こちらの消耗も激しいし、持久戦ってところかしらね」
「魔物まで出ているのか」
「そうなの。やっかいだわ」
「魔獣はともかく、魔物が自然発生するかな?」
「そんなわけないでしょ。魔獣だって鉱山に迷い込むことはあるかもしれないけど、鉱山から自然発生なんてしないわよ。どこからか召喚した奴がいるとしか考えられないわね」
「何が目的なんだろう?」
「さあね。それは犯人を見つけて聞き出すしかないんじゃないかしら? 見つかればだけれど。そんなことより、おなかすいたわ」
「もうそんな時間か」
ギルド員さんを筆頭に、食事の準備が始められていた。
「私たちも手伝いにいきましょうか」
「そうだな」
人でぎゅうぎゅう詰めだった時には無理だったが、今は広すぎるほどのスペースが確保できている。
倉庫から引っ張りだしてきたのだろう、いくつかの大型の鍋を並べ、わきあいあいと夕食作りが始められていたのだった。
なんだろう、どんどん緊張感が薄れていく。




