第1話(12)
俺、回復術師だよな?
そう言ってここへ来たはずなのに……。
なんでそんなぽかーんとしてんの?
ざっと200人は回復しただろうか。
その度に目を覚ました人々からはブラウに悲鳴を上げられるし、看護していた人々は口をパクパクさせたり固まったりしている。
なんなんだよ、もう!
事態の収拾は諦めた。
俺は半ばパニックとも言えるその場に背を向ける。
いいじゃないか、回復魔法はかけたんだから。
少し申し訳なさそうにうなだれて後をついてくるブラウ。ブラウ、おまえは何も悪くない。すまん。
あまり気にした様子もなく、とてとてとついてくるノノル。
『ごちゅじたまー。みんな、げんき。よかったねー』
そ、そうだよな、うん。
元気すぎるきらいはあるが。ついさっきまで微動だにしなかった瀕死の重傷者なんだから、少しおとなしくしていてもいいのに。
俺のほうは一通り終わった。ディールはどうだろう?
ちょうどよく、向こうからディールが歩いてくる。
「どうだった?」
「片っ端から回復薬ぶっかけてやった」
………………ナニヲシテイルンデスカ?
「結果は同じだろうが」
そうなんだろうか。ギルド員さんがげっそりしてるのはなんでだろうな。考えちゃいけないな。
「いいか、俺様の貴重な魔力をほいほいとやれるかってんだ」
ほぼ底なしとか言ってませんでした?
きっと回復魔法術師さんたちとなんかモメたんだろうな……。
「ところでおまえ、魔力余ってんじゃねぇか?」
ん?
「そう言われてみれば、別に魔力が減った気がしないな。傷を治すぐらいはどうってことないのかも」
「傷を治すってレベルじゃないがな。まあいい。俺様の魔力は必要なさそうだな」
「それは、うん。そうかもしれない」
「じゃ、決まりだな。俺はブラウに乗って怪我人を連れてくる。ウォルンはここでおるすばんな」
「俺も行くよ」
「ブラウの速度が落ちるだろうが。それに、他にも救出されてくる怪我人が集まるのがここだ。ウォルンはここにいてどんどん回復させてくれ。あと、回復薬で回復しきれないような怪我を負うような奴はこの鉱山から叩き出せ。いいな?」
「叩き出せってそんな無茶な」
「結局はそれが原因なんだよ。おかしいと思わなかったか? 人数が多いわりに怪我人が多い。強い連中だって弱いのを守りながらじゃ効率が落ちるんだよ。とにかく、任せたぞ。おい、ブラウ行くぞ」
『うぉるんさま、こいつはちょっときにいらないですけど、いってきます』
「おう、ブラウ。いい度胸だ」
ディールはブラウに乗って行った。
ハンカチでも振っときゃ良かったか?
『ごちゅじたまー。おうすばんー』
「そうだな」
ノノルとおるすばん、悪くない。
回復した人々は護衛をつけて街へ帰すようにギルド員さんが指示をしている。俺は気が進まないが、口を挟む。
「Bランクの依頼が受けられないレベルの冒険者も一緒に帰してください。護衛も兼ねられるし、ちょうどいいでしょう」
「けれど、人数が……。この鉱山は広いんですよ」
ここでひるむわけにはいかない。幸いまだ死人は出ていないが、これからどうかはわからない。
「まだまだ冒険者は増える予定では? 街のギルドにはたくさんの冒険者が来ていましたよ。強い人だけ残して、あとは帰ってもらうべきです。怪我人ばかり増えてもしょうがないでしょう」
まだ救出されていない鉱山夫はディールがなんとかしてくれるだろう。更に冒険者がどんどんやられてたらそれだけディールの手間が増えるのは明白だ。それどころか、堂々巡りになりかねない。
重傷者さえ出なければ、俺が前線に出れる。ここは今いる回復術師で充分だろう。そのうち魔力も回復するだろうから。
前線は、持ちこたえているだけで勝機が見いだせているとは言えない状態のはずだ。さっさと加勢に行きたかった。




