第1話(11)
地図を見ながら避難場所へとたどり着くと、思いの外そこは広かった。
驚きの声をあげるとディールが説明してくれた。
「まあな……。普段は集めた鉱石やら持ってきた荷物やらを置いて置くためにスペースを多めにとってある。この鉱山は広いからな、大勢の鉱夫が働いている。それにしても、もともと置いてあったものはほとんど運び出したんだろう、普段はもっとごちゃごちゃしているんだがな」
今は人で埋め尽くされている。
瀕死から重傷の者が多いスペース、あとは交代で前線を守っているだろう冒険者たちだ。休憩しているのだろう、飲み物や簡単な食料を口にしたり、作戦会議のようなことをしている集団もいる。皆、疲れた表情だ。これから戦線へ出れる者は増えるだろうから、休憩時間は多くとれるといいなと思った。そのぐらい、疲労の色が濃い。
さっそくギルド員のもとへと向かった。
「回復要員で来ました。ウォルンです。魔獣と魔術師は護衛です」
簡潔に名乗る。
「助かります。とにかく回復術師は人手が足りなくて……。人数がいてもだめですね、すぐ魔力切れで。休憩してもすぐさま魔力が回復するわけではないですから」
困り果てたような顔でそう言う。
回復魔法を待つ重傷者がまだまだいるようだった。
「ディール」
「なんだ?」
「回復魔法ができる者で、優秀そうなのがいたら、魔力供給をしてほしい。俺はそんなにすぐ魔力切れを起こさないんじゃないかな」
「そうは言ってもな。おまえほど優秀な回復術師なんてそうはいないぞ?」
「人数が多すぎる。早く片付けて前線のフォローに回りたい」
そうだ。どう見ても、炭鉱夫以外の負傷者が多すぎる。それはつまり、集まった冒険者のレベルより、敵のレベルが圧倒的に強いからじゃないのか?
だけど、ディールは前線はにらみ合いと言っていた。持ちこたえている。なのに負傷者が多いというのはどういうことなんだ?
「わからないな」
「何がだ?」
「いや、いい。今はまず片っ端から回復魔法かけてやる」
ずいずいと奥へ進む。
奥へ行けば行くほど、怪我の度合いが高いようだ。
「待って下さい!」
ギルド員に呼び止められる。
「なんですか?」
「手遅れの負傷者より、助かる見込みのある負傷者を優先して欲しいのです。気持ちはわかります、ですが……。そのせいで魔力切れを起こす術師が多かったのです。ここは、堪えて」
「気持ちって何だ? 手遅れの負傷者? 死んではいないんだろ?」
ギルド員は沈痛な面持ち、ディールは対称的に面白いものを見るような目付きだ。
「なあ、ウォルン。軽傷の負傷者だけを請け負えばいいか?」
「充分だ」
ディールは俺の意図を汲んでくれたのだろう、回復術師たちが休憩している場所へと向かう。
俺はギルド員を手で制し、付いてこないよう訴える。
「あなたは指示を。俺にではなく、ね」
困惑の表情で、だがギルド員は諦めたように元の位置へと戻って行った。ここに集まる者たちの流れを把握しなければならないからだ。俺1人に割ける時間はそんなにないはず。
最奥へ着くと、暗い表情の者たちが、身動ぎひとつしない負傷者たちの持ち物を整理していた。
「何をしているんですか?」
「身元の確認ができる物がないか探しています」
「なぜ?」
「なぜって……」
今にも泣きそうだ。理由がわからない。
ディールに規格外だとは言われたが。せいぜいが10人が限度かな。
軽く息を吐き、深く息を吸う。
まずは、10人。
息を吐くと同時に、回復魔法を発動。
「うっわ! 魔獣!」
「来るな、来るなぁああ!」
第一声がそれかよ!
「ああ、皆さん落ち着いて。この魔獣は何もしませんよ。むしろ、護衛です。守ってくれるんですよ」
『どこかにかくれていましょうか?』
「見つかったときに余計混乱するからそばにいてくれ……」
魔獣にやられて目が覚めたら魔獣がいたら恐いよな、……うん。




