第1話(10)
各エリアに配置されているギルド員の指示に従うことや、回復系のアイテム(俺にはいらないけど)の受け取りかた、食料は配布されるなど、一通り説明を聞き、地図を渡されて配属場所の説明を受けた。
地図は大量に準備してあり、各パーティに譲り渡しているのだという。普段なら高額で取り引きされるはずのその地図は、かなりの緊急事態であることを浮き彫りにしていた。
ギルドを出たところで、ブラウに乗って行くことにした。
街中も混乱している。が、構っている暇はない。まだ街中は安全であるし、テンバド鉱山までには少し距離がある。
人々の間を縫うようにして駆けるブラウ。ノノルを抱えた俺は必死で振り落とされまいとしがみつく。とにかく速い。
後ろにはディールが乗っているが、様子をうかがう余裕は俺にはない。
街の出入口で何事かと警備の者たちが声をあげたが、構わずに走り抜ける。
なだらかな道がしばらく続き、山道に入った。
ブラウは山道だろうと速度が緩むことはない。優秀だな。
早く着いてくれ……!
怪我人を心配してではない。振り落とされそうなこの状況が続くのがつらいだけなんだけど。
ようやく鉱山の入り口が見えてきたところでブラウの速度が落ちた。
『すごいひとだかりですね』
「突破するか」
ディール、なんてこと言うんだ。
「待て待て待て待て! ブラウ、ありがとう。ここからは歩いて行こう。ギルド員がいるはずだから、まずは指示を受けよう」
『はい』
ブラウから降りて、入り口に近づく。
「危ないので依頼を受けた方以外は下がってください! 中は危険なんです! 下がってください!」
「うるせえ! 中にはここにいる連中の大事な仲間や家族がいるんだ! いますぐ会わせろ!」
え……?
馬鹿なの……?
早く助けたいなら邪魔するなよ。
人が多すぎて前に進めない。
「どうす……」
どうする? と訊こうとしてディールを振り返ると、
「黙れ、愚民ども。焼き殺されたいか」
たぶん魔法で声を拡張しているんだろう。この場にいる全員に聞こえるほどの大音量で悪魔のように低く恐ろしい声が響き渡った。
静まりかえる鉱山入り口付近。
やがてざわざわと話し声が聞こえてきた。
「まさか……」
「あれって……」
「破壊魔の化身ディール?」
俺のパーティ有名人ばっかりかよ! しかも悪いほうの!
「さっさと退かないとおまえらから先に葬るぞ。それとも、それが望みか?」
じりじりと後ずさる人々。依頼を受けて来たような人たちも混ざってるような気がするのは気のせいだと思いたい。
「だいたいな、非戦闘員は邪魔なだけなんだよ。回復魔法でも使えるのか? 補助魔法か? 役立たず共は消えろ。目障りだ。おまえらなぞには何の義理もない冒険者たちが人命救助のために集まってる。邪魔だてして、おまえたちに何の得があるというんだ?」
最後だけ正論ー!
それからは早かった。
やっと自分たちの愚行に気づいた人々は道をあけ、ギルド員がテキパキと指示をしていく。
冒険者たちは指示に従ってそれぞれの配置へ向かい、俺たちも避難場所へと急いだ。死人が出てなきゃいいが。
「助かりました。収拾がつかなくなっていて……」
ギルド員の感謝の言葉に、ディールは、
「ああいう馬鹿はどこにでもいるものだ。気にするな。さっさと指示をよこせ」
尊大でした。




