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【十人十色〜伝説の宝石に従ったら狂人戦隊ができました〜】第1巻: 「細波の子守唄」第1章 「アンツィア王立学園」初日…

アンツィア王国が、魔物による攻撃で戦火に飲まれてから、40年。しかし、訪れた平和は所詮ガラス張り。水底では黒い魔物が復活を虎視眈々と狙っていた…。戦禍に消えた王家に伝わる10の宝石。「宝物が再びアンツィアに集う時、大きな波が国を襲う」宮廷魔術師はそう言い残して絶命した。果たして、彼が伝説のジュエリーに込めた魔法は何なのか?


先月まで通っていた、女子学園は最悪だった…

7月某日。歌手志望の少女・マリンは、念願の王立学園に転校する。目標は、ミュージカル『町娘マルタ』並の歌唱力を身につけること!集会中に二度見された髪飾り。親友との登校。文化祭前のせわしない空気の中、彼女が見つけたものは…?


プロローグに続く、転校初日です!

リリリリリリリリリリ、リリリリリリリリリリ。

「マリン、遅れるわよ」


途切れることなく響く、耳障りな鈴の音。遠く霞む耳慣れた声。


「ん…。あとちょっと」

マリンは生返事をすると、また枕に顔を沈めた。

頭がガンガン痛む。もう朝か…。昨日は夜中まで曲を聴いてたからなあ。

ゆっくり目を開けながら寝返りを打つと、右手にコトンと何かが当たった。


 去年の誕生日に買ってもらった魔法携帯(スマートフォン)。

連絡来てないと良いけど…。

 頭の中で、前の学園のクラスメイト達の高笑いがこだました。

慌てて、枕に突っ伏すと、力の入り切らない指で、画面をタップした。

液晶にあったものはーー


「えっ、もう7時⁉︎」

 信じられない時刻である。


 おまけに、画面の下には、10を超える通知の山。


『今、坂の下の公園』

『マリン、待ち合わせ20分過ぎてるけど、大丈夫?』

『そろそろ行かないと、本当に遅刻するよ』


 まずいまずい、まずいぞ、これは。

反射的に布団を翻(ひるがえ)し、椅子にかけてあったスカートを掴んだ。


「マリン、クララちゃんが来たわよ!まだですか、って」


 転校初日で遅刻だけは、絶対できない。

 いや、それよりも…クララをこれ以上怒らせることが、怖くて無理…かな?


 ******

 

「なんとか、間に合った…」

 音楽科の教室に慌てて駆け込むと、そこにはスラックス姿の女性だけが立っていた。


「あら、おはよう。マリンちゃん、だったかしら。転校生の子よね」

「お、おはようございます! みんなは、その、どこへ行ったんですか?」


「大講堂よ。もうすぐ『文化祭』っていう学園中が参加するコンテストがあるの。

 歌とか、踊りとか、絵画、劇…得意なものを披露するためものよ。…そうそう、今年から何種目か追加されるって話もあるわ」


「そうなんですか⁉︎」

 前の学校に、そんな行事なんてなかった…

「ええ。本当は食べ物なんか売ってもいいんだけど…。音楽科(うち)の子達張り切っちゃって、朝から練習してるのよね」


「私も、参加できますか?」

「もちろん。丁度よかったわ。詳しいことを今から大講堂で説明されるから」

「はい、頑張ります!」

 

 だが…。

 大講堂では、とてもそんな軽快な言葉では片付かない空気が漂っていた。


「僕たち経営学科の売店が、賞を取るに決まってる!」

「あら。それは負け惜しみ?演劇科が一番に決まってるでしょう?」

「心理学科の文学描写をなめてるのか?」


集会の始まる前は、どこも同じなのか…。と、マリンは苦笑いした。


しばらくすると、パンパンと2回音が鳴って、天井に白い光が集まった。

マリンが、キョロキョロする傍(かたわら)、講堂中が静まり返る。


「学園長、今日はどこに現れるんだろう」

「ね、楽しみ」


「どういうこと?」

マリンが聞き返そうとするも間に合わず、すぐ耳元でボンッという音がした。


「フォッ、フォッ、フォッ。本日は転校生がいると聞いてな。君のことだね」

優しげに笑うマントの老人に、マリンは頭のてっぺんまで真っ赤になる勢いだった。

「はい…」

「ほう、ほう。そうか。頑張ってくれたまえ…おや?」

学園長の目がわずかに開き、しわがれた逞(たくま)しい指が、マリンに向かって伸びた。

…かと思えば、髪飾りに触れた。


小さい時に、海辺の市場で見つけたものだ。

『お嬢ちゃん、マリンって言うのかい?

 キラキラした目をしてるねぇ。どうだい、これあんたになら売ってあげるよ』

 絨毯に並べた結晶の一つを指して、おばあさんが言った。

 降り注ぐ日の光が、波のように揺らぐ青い石。

 周りには貝殻のような飾りがたくさんあって、海そのものを閉じ込めたかのように感じられた。

 アクアマリンという名前だと知ったのは、ずいぶん後のことだ。

手持ちのお小遣いを全て使ってしまって、あとで叱られたけれど、それでも後悔はしていない。


「ずいぶん素敵な髪飾りじゃな。君の転入も祝福してくれるだろう」

学園長はそれだけ言うと、また立ち上がった。


「それでは、第一回文化祭会議を始める!」

 会場は再び、ぴりりと張り詰めた空気に包まれたのだった。

いかがでしたか?

次のエピソード第2章は、彼女が図書館であるものを見つける物語。

お楽しみに!

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