第三十二話 決死
今回の登場人物
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・三ツ谷 華 (みつたにはな)
蓮太と同じく乙名学科を専攻、卒業し、沙汰人として、周囲からは女史と称える人格者。監査人といわれる権力に打ち克つ役職として、活動を開始した。前髪パッツンのボブスタイル、青いタータンチェックのベレー帽を被り、服装も気品漂うお嬢様スタイルに変貌。
・羽黒 宗助 (はぐろそうすけ)
乙名専攻学科卒業後、官人を束ねる官人所役となって活躍。黒の燕尾服に白のウィングシャツに黒のリボンにシューズを履いて如何にも紳士的な服装。
・関 家守 (せきいえもり)
置田村・東地区・八俣の貧民。いきなり拉致され、相島の倉庫に監禁される。ただの貧民ながらも道徳観を備え、観察眼と機転の利く秘めた特性がある。その天性の才能で惟神収容所を脱出、藤香の側近となる。
・置田 藤香 (おきたふじか)
故・蓮次の妻。器量と度胸に優れ、夫亡き後は置田勢を率いてきた。若い世代を教育後、村を託そうと切に願う。若くして蓮次に見初められた強靭で屈強な戦士の資質と、美しく気の付く女性の品格を持つ。
○宝石箱(九狼党)
・祖母屋 宇禰 (そもやうね)
美咲に仕える女中頭で金庫番。元は寺院で守役をする知恵と人望の持ち主。今は秘八上の美咲に流れる金を管理している。人の良さそうな笑顔を振りまく老婆。美男子を部屋に監禁し、自分の魅力を肯定する異質な性癖を持つ。その実は違法宝石の仲介人であり、更には美咲に流れる募金に着手する悪人。
・棋山 柱 (きやまはしら)
その立案能力を買われ、宝石箱の幹部入りを果たした作戦補佐官。通称・碁石。若く、ハンサムだが、利になるなら手段を厭わない性格。
・瑠璃川 三葉 (るりかわみつば)
置田村東部・秘八上の沙汰人で顧問。ここ数年で名を馳せるまでになった、上流階級の娘で33歳。平和的思想が美咲に買われ、刀禰から沙汰人へと上がる。気品に満ちた出立と話し方が、更にその人間性を物語る。曲線美を見せる為か、常に胸の谷間を象徴する着物と、片足は生足を見せる着こなしをする。その実は❝初夢❞と呼称される【宝石箱】の幹部。
・❝頭❞ (あたま)
九狼党のトップで、❝頭❞と呼称される絶対者。その実体は謎だが、祖柄樫山の表と裏で、かなりの権威を持つ存在とされる。
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【前回までのあらすじ】
違法宝石の流通を探る華は、次々と暗殺されていく重要参考人を保護することを考える。
華と宗助は、手に入れた顧客名簿に載る人物を追うも、❝宝石箱❞の顧客たちは、次々と暗殺されていくのだった…
華と宗助は、桐谷医院で死体と密書を見つけると、浦路と水本(貴婦人)が宿屋・波にいる事が発覚。
急ぎ、保護へ向かい、受付前で張り込んでいた。
不覚にも睡眠薬を混ぜたお茶で眠らされる宗助は、犯人が暗殺者・雪平若子と断定する。
急ぎ部屋へと向かう華と浦路は、惨殺された水本とその愛人を前に、憎悪と悲しみの気持ちを抱く。
浦路から、【宝石箱】の正体を聞くと、その一人【薔薇】は、祖母屋だった。
そして浦路が違法宝石を取引していたのは南蛮人で、その者の名はロベルト・ロマノ。
翌日、赤島の死体が上がり、華と宗助は、冴島と合流すると、福本も現れる。
赤島は心中したと処理する福本に、異を唱える華。
福本は冴島に、この事件の背後には九狼党の脅威を示唆される。冴島は、華に真実を話す代わりに条件として、今回は赤島の件から手を引いて貰う事を提示。
華ら一行は、秘八上へと向かうと、美咲の代理と瑠璃川と面会となる。
これまでの経緯と、薔薇も正体が祖母屋であることが、生存者の浦路からの情報と説明する華。
これに対し、瑠璃川は後日、連絡をすると残し、この場を解散する。
瑠璃川は、美咲に華との報告を済ますと、しばらく外回りをすると伝え外出する。
祖母屋と、その腹心・棋山は❝頭❞より結果報告にと一早く旅館・瀬織津へ赴いていた。初夢への対抗心を燃やす祖母屋。
しかし、二人へのその評価は散々たるもの。浦路は生きており、華は祖母屋の正体に気付いたことに、生かす価値を問うが、❝初夢❞が最後のチャンスを与えるよう、フォロー。
二人は、悔しながらも、それに応じ、華らの殺害へと向かう。
その運びをする❝初夢❞に才を感じる❝頭❞。❝初夢❞、彼女は実は❝瑠璃川 三葉❞だった。
そして、その正体も知らず、ただただ【宝石箱】根絶を目指す、華たちに、忌部と雪平の魔の手が忍び寄るも、華の機転と仲間の反撃で撃退する。
それを見ていた祖母屋は、棋山に失敗の責を問うも、報告を誤魔化せると強気な姿勢に出る。
❝頭❞への報告をしに、棋山と出頭する祖母屋は、いきなり責を問われてしまうが・・・
祖母屋と棋山は、❝頭❞に華殺害の結果を尋ねられるが、祖母屋は俯いてしまう。
「聞く限り、華は健在だと聞いているが、それは一体どういうことかな?」
❝頭❞の言葉に呼応するように、❝初夢❞は右手を軽く挙げ、合図すると、赤い忍装束を纏う人影が祖母屋と棋山の前に茶碗を置いて行く。
「華も我が組織に降ったというなら話は別だが?まさか取り逃がしたんではあるまいな?」
「申し訳ありません、閣下。しかしー」
「ー私の計画は❝頭❞も御覧の通り、完璧なモノでした。現場での指示は❝薔薇❞に任せておりました。何やら華が若い女ということもあり、拘る手法を取ったかと思われます。」
「な…アンタ!!」
説明しようとする祖母屋の言葉を遮り、棋山の予想外の裏切りに声を荒げる祖母屋。
「私は殺害ターゲットに対し、綿密な計画を立てたまで。実行するのは❝薔薇❞が雇った殺し屋であるならば、その責務も当然ながらー」
「ーわかった、もういい。」
棋山の弁明を打ち切る❝頭❞。
「報告、御苦労。しばし決断するまで喉を潤わせてくれ。」
❝頭❞の言葉と共に、祖母屋と棋山の席に、茶釜を台車で押してくる❝初夢❞。
「どうぞ。」
「…!」
❝初夢❞は祖母屋の茶碗に柄杓でお茶を淹れる。
「…美咲の傍で澄ました態度で接していたくせに…❝初夢❞が、まさかアンタだったとはね。瑠璃川 三葉…!」
祖母屋は睨みながら瑠璃川を目で追う。
「どうぞ。」
瑠璃川は棋山にもお茶を淹れる。
「ありがとうございます。」
棋山は礼を言うと、瑠璃川は二人の席の前に立つ。
「どうぞ、我が点てた茶を御堪能下さい。」
瑠璃川は一礼する。
「・・・(ちっ)」
「では。」
祖母屋は面白くないながら、二人は茶を飲む。
「…ぐ!ぐぐぎゃぁぁぁっ…!!!!」
ーガタ・・・
棋山は一瞬苦しむと、直ぐに倒れた。
「もっと毒葉を盛っても良かったな、❝初夢❞よ。」
「そうですね。」
「❝薔薇❞よ?」
「ーは、はい!!?」
「今日の昼に、藤香と華が情報を整理しに会うそうだ。そうなれば、お前の存在は藤香にまで知られる。それがどういうことかは分かるな?
不服かもしれぬが、❝初夢❞が用意したその茶葉で、二人共々、殺せ。」
「は、はい!この❝薔薇❞、命に代えても任務を全うします…!!」
怯えながら畏まる祖母屋は、行動に移すのだった。
◎和都歴452年 3月27日 12時 置田村・本置田 置田家
馬車で置田家へ着く華一行。
「報告だけだし、皆は馬車で待っていて。直ぐ戻ると思う。」
「大丈夫か?」
「うん。」
宗助の心配を他所に、華は笑顔で振り返り、置田家へと入っていく。
「失礼します。」
関 家守に案内され、藤香の元へと顔を出す華。
「おお、久しいな。まぁ座ってくれ。」
「失礼します。」
藤香に寛ぐよう言われ、席に座る華。
「どうだ?調査の進捗は?」
「ええ。宝石箱なる組織、何やら金策に重点を置く組織だったようです。」
「そうか、やはりな。」
「その金策を命じた大元は、どんな組織で、誰なのかは分かりませんが。」
報告をしていると、長い髪の女中がお茶を淹れに来る。
「おお、すまぬ。」
「いいえ…」
女中は茶碗を二つ置いて、茶釜を取りにまた部屋を出た。
次回2025/5/29(金) 18:00~「第三十三話 祖母屋、死す」を投稿予定です。
※5月(金)はGW読書・強化月間です。
期間中は毎週(金) 及び祝日18:00に投稿致しますので、御期待下さい。




