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~監査人・三ツ谷 華~  作者: 船橋新太郎
第1章・~宝石箱~
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第三十一話 失敗の報告

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


・祖母屋 宇禰 (そもやうね)

美咲に仕える女中頭で金庫番。元は寺院で守役をする知恵と人望の持ち主。今は秘八上の美咲に流れる金を管理している。人の良さそうな笑顔を振りまく老婆。美男子を部屋に監禁し、自分の魅力を肯定する異質な性癖を持つ。その実は違法宝石の仲介人であり、更には美咲に流れる募金に着手する悪人。


・棋山 柱 (きやまはしら)

その立案能力を買われ、宝石箱の幹部入りを果たした作戦補佐官。通称・碁石。若く、ハンサムだが、利になるなら手段を厭わない性格。


・瑠璃川 三葉 (るりかわみつば)

置田村東部・秘八上の沙汰人で顧問。ここ数年で名を馳せるまでになった、上流階級の娘で33歳。平和的思想が美咲に買われ、刀禰から沙汰人へと上がる。気品に満ちた出立と話し方が、更にその人間性を物語る。曲線美を見せる為か、常に胸の谷間を象徴する着物と、片足は生足を見せる着こなしをする。その実は❝初夢❞と呼称される【宝石箱】の幹部。


ーーー


・❝頭❞ (あたま)

九狼党のトップで、❝頭❞と呼称される絶対者。その実体は謎だが、祖柄樫山の表と裏で、かなりの権威を持つ存在とされる。


■ ▢ ■ ▢



【前回までのあらすじ】


違法宝石の流通を探る華は、次々と暗殺されていく重要参考人を保護することを考える。

華と宗助は、手に入れた顧客名簿に載る人物を追うも、❝宝石箱❞の顧客たちは、次々と暗殺されていくのだった…

華と宗助は、桐谷医院で死体と密書を見つけると、浦路と水本(貴婦人)が宿屋・波にいる事が発覚。

急ぎ、保護へ向かい、受付前で張り込んでいた。

不覚にも睡眠薬を混ぜたお茶で眠らされる宗助は、犯人が暗殺者・雪平若子と断定する。

急ぎ部屋へと向かう華と浦路は、惨殺された水本とその愛人を前に、憎悪と悲しみの気持ちを抱く。

浦路から、【宝石箱】の正体を聞くと、その一人【薔薇】は、祖母屋だった。

そして浦路が違法宝石を取引していたのは南蛮人で、その者の名はロベルト・ロマノ。

翌日、赤島の死体が上がり、華と宗助は、冴島と合流すると、福本も現れる。

赤島は心中したと処理する福本に、異を唱える華。

福本は冴島に、この事件の背後には九狼党の脅威を示唆される。冴島は、華に真実を話す代わりに条件として、今回は赤島の件から手を引いて貰う事を提示。

華ら一行は、秘八上へと向かうと、美咲の代理と瑠璃川と面会となる。

これまでの経緯と、薔薇も正体が祖母屋であることが、生存者の浦路からの情報と説明する華。

これに対し、瑠璃川は後日、連絡をすると残し、この場を解散する。

瑠璃川は、美咲に華との報告を済ますと、しばらく外回りをすると伝え外出する。

祖母屋と、その腹心・棋山は❝頭❞より結果報告にと一早く旅館・瀬織津へ赴いていた。初夢への対抗心を燃やす祖母屋。

しかし、二人へのその評価は散々たるもの。浦路は生きており、華は祖母屋の正体に気付いたことに、生かす価値を問うが、❝初夢❞が最後のチャンスを与えるよう、フォロー。

二人は、悔しながらも、それに応じ、華らの殺害へと向かう。

その運びをする❝初夢❞に才を感じる❝頭❞。❝初夢❞、彼女は実は❝瑠璃川 三葉❞だった。

そして、その正体も知らず、ただただ【宝石箱】根絶を目指す、華たちに、忌部と雪平の魔の手が忍び寄るも、華の機転と仲間の反撃で撃退する。


明くる日、藤香は春浪と、最終的な現状整理を済ます。

時は少し遡り、その日のまだ真夜中2時、忌部と雪平の撃退を見ていた祖母屋は、旅館・瀬織津へと戻ってくるが・・・

◎和都歴452年 3月26日 2時 置田村・本置田 旅館・瀬織津 客室


「はぁはぁ…」

「どうしてんですか?こんな夜中に?」

息を切らせて戻る祖母屋を、慌てて迎える棋山。

「どうしたんですかじゃないよ!アンタの作戦はまんまと華に見破られた。どうするつもりだい?」

祖母屋が激昂する。

「まぁまぁ、落ち着いてください。」

「まぁまぁ?アンタ、この作戦で100%華を殺せると言ってなかったかい?」

「それは計算上ではその筈でしたが、現場で殺し屋の拘りか何か、ヘマが生じたのでしょう。」

慌てる祖母屋を他所に、二つのグラスに葡萄酒を入れ始める棋山。

「2回目の日の出、27日の朝の報告、❝頭❞にはどう説明するつもりだい?」

「殺し屋の暴走が予定を狂わせた。我々に罪はない。どうです?」

片方のグラスを祖母屋に手渡す棋山。

「…なるほどねぇ。」

祖母屋がグラスを受け取ると一気に飲み干す。

「ぷはぁ…!…でも、そんなことで許されるかねぇ?」

「次こそ、計算通りに行くよう、我々が直に動きます。で、どうでしょうか?」

「なるほど。アンタのプラン、聞きたいね。」

棋山の答えに安心すると、祖母屋は棋山からグラスを奪う。

「では、ごゆっくりと。まだ夜は長いですよ。」

「あぁ、わかってるね、アンタわ!」

祖母屋は葡萄酒のグラスを落とすと、寝床に二人、倒れこむ。



◎和都歴452年 3月27日 8時 置田村・本置田 旅館・瀬織津 調理場地下・秘密会場


旅館・瀬織津。知られもしないが、この旅館は、置田村発足の前から集会所として、存在していた。その頃から、九狼党の手の者が管理をしていた。

食堂の奥、調理場の更に奥に食糧庫の棚が扉になっていることは言うまでもない。その最奥の階段を降りていくと、そこには広間があり、中央に円卓が置かれ、手前にある暖炉が、唯一の灯りとなっている。

円卓の左には、上半身は陰で見えずにいる❝初夢❞らしき人影が、綺麗な生足を組んで座っていた。

中央の奥には、一段上がりになった場所に❝頭❞が一人座っていて、右隣に全身赤い忍装束を纏う人影が立っている。

変わらず、12色の洒落た簾が掛かっていて、❝頭❞の下半身しか伺うことができない。

「さて、今回集まってもらったのは他でもない、我が組織のルール、信賞必罰に基づくものである。では、薔薇、碁石、掛けたまえ。」

❝頭❞がそういうと、2人は会釈をして席へ座る。

「前回の私の依頼は、達成できたかね?」

「・・・」

❝頭❞のいきなりの質問に、祖母屋は頭を下げる。

次回2025/5/22(金) 18:00~「第三十二話 決死」を投稿予定です。

   

※5月(金)はGW読書・強化月間です。

期間中は毎週(金) 及び祝日18:00に投稿致しますので、御期待下さい。

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