第三十話 状況整理
今回の登場人物
■ ▢ ■ ▢
・置田 藤香 (おきたふじか)
故・蓮次の妻。器量と度胸に優れ、夫亡き後は置田勢を率いてきた。若い世代を教育後、村を託そうと切に願う。若くして蓮次に見初められた強靭で屈強な戦士の資質と、美しく気の付く女性の品格を持つ。
・春浪 十茶 (はるなみじっさ)
置田村東部・秘八上の沙汰人で副統括。元は黛村の沙汰人だが、平和思想を訴えていたため、追放・暗殺の危機に際し、一揆が始まり、置田蓮次に沙汰人の待遇で移り住んだ。両村に顔が利く面もある、貴重な存在で紳士的人物。
■ ▢ ■ ▢
【前回までのあらすじ】
違法宝石の流通を探る華は、次々と暗殺されていく重要参考人を保護することを考える。
華と宗助は、手に入れた顧客名簿に載る人物を追うも、❝宝石箱❞の顧客たちは、次々と暗殺されていくのだった…
華と宗助は、桐谷医院で死体と密書を見つけると、浦路と水本(貴婦人)が宿屋・波にいる事が発覚。
急ぎ、保護へ向かい、受付前で張り込んでいた。
不覚にも睡眠薬を混ぜたお茶で眠らされる宗助は、犯人が暗殺者・雪平若子と断定する。
急ぎ部屋へと向かう華と浦路は、惨殺された水本とその愛人を前に、憎悪と悲しみの気持ちを抱く。
浦路から、【宝石箱】の正体を聞くと、その一人【薔薇】は、祖母屋だった。
そして浦路が違法宝石を取引していたのは南蛮人で、その者の名はロベルト・ロマノ。
翌日、赤島の死体が上がり、華と宗助は、冴島と合流すると、福本も現れる。
赤島は心中したと処理する福本に、異を唱える華。
福本は冴島に、この事件の背後には九狼党の脅威を示唆される。冴島は、華に真実を話す代わりに条件として、今回は赤島の件から手を引いて貰う事を提示。
華ら一行は、秘八上へと向かうと、美咲の代理と瑠璃川と面会となる。
これまでの経緯と、薔薇も正体が祖母屋であることが、生存者の浦路からの情報と説明する華。
これに対し、瑠璃川は後日、連絡をすると残し、この場を解散する。
瑠璃川は、美咲に華との報告を済ますと、しばらく外回りをすると伝え外出する。
祖母屋と、その腹心・棋山は❝頭❞より結果報告にと一早く旅館・瀬織津へ赴いていた。初夢への対抗心を燃やす祖母屋。
しかし、二人へのその評価は散々たるもの。浦路は生きており、華は祖母屋の正体に気付いたことに、生かす価値を問うが、❝初夢❞が最後のチャンスを与えるよう、フォロー。
二人は、悔しながらも、それに応じ、華らの殺害へと向かう。
その運びをする❝初夢❞に才を感じる❝頭❞。❝初夢❞、彼女は実は❝瑠璃川 三葉❞だった。
そして、その正体も知らず、ただただ【宝石箱】根絶を目指す、華たちに、忌部と雪平の魔の手が忍び寄るも、華の機転と仲間の反撃で撃退する。
明くる日、藤香は春浪と、最終的な現状整理をしていた・・・
◎和都歴452年 3月26日 15時 置田村・本置田 置田家
「長々とお世話になりました。」
「いや、こちらが事情を聴きたかったのだ。むしろ春浪殿には旅館・瀬織津に部屋を取らせ、毎日ここまで通っていただいた。長く引き留めたようで恐縮です。」
春浪が藤香に、美咲が兵を割けない事情を数日にわたり説明していた。
「とはいえ、その元凶たる赤島は死体で発見され、今は復興に尽力するのが、美咲様の意志と思います。」
「ああ、それは私としても是非とも願う事。やはり、美咲にあれこれと頼る私が甘すぎたのだ。」
「御子息の蓮太殿から連絡は?」
「いや。もはや10日近く経つが。あいつの事だ。死ぬようなヘマはしておらんだろうが。稲穂の行方も不明のまま。神器の事件と相まって気に病むばかりだ。」
春浪の質問に答える藤香。
「この数週間で、様々なことがありすぎた。双子の脅威、赤島の死、神器を集める禍津社。」
「それに、巻き込まれた稲穂殿、ですか。」
「家守の話では、宝石箱なる組織の暗躍も生じているとか。」
言葉を付け足す春浪に、藤香は宝石箱の話も加える。
「宝石箱…ですか。」
「その件は監査人の華がかなり調査を進めているようで、明日の昼にはここで詳しい報告を聞けるはず。」
「また、妙な組織があるものですな。」
藤香が宝石箱の話をすると、春浪も数多の火種に頭を悩ます。
「挙げ句、白石組へ討伐競争なる大規模な衝突も起きるとあらば、置田村も窮地。」
「この期に及んで黛が再び侵略に出てくるかもしれませんな。」
「そうだ。まるで誰かに置田村の隙を作られてるかのようだ…」
「はて?一体誰でしょうか?」
「…わからん。しかし、しばらく置田村の平和を保っていた事に、良く思わない連中もいる。」
「黛紅蓮ですかな?」
「まあ、対立者としてはそうだが…」
「双子の暗躍かもしれません。最近では忍も雇い始め、諸国からも傭兵を集い、兵力を拡大しているとか。」
お茶を啜りながら話す春浪。
「私が言うのはその黛村の主力・七草や迦具夜の月将九足を陰ながら操っている存在を感じてならぬ。」
「…ほう。それを可能とするとなると、また壮大な勢力ですが…まさか、あの双子までも?」
「わからぬ。ただ、双子の手綱は握っている…か、その暴走性を利用しているか…」
「ハハハ、あ、失礼。しかし、その様な大きな影響力は、もはや藤香様と紅蓮以外居りますまい。」
藤香の話を茶化す春浪。
「まあ、現実的には居ないのだが。」
「考えすぎでは?」
「可能性としては…」
「可能性、とは…また一体?ー」
「ー九狼党…」
「…!」
藤香の話に驚きを隠せない春浪。
「まさか?古の言い伝えにある、あの九狼党ですか?」
「あくまで可能性だ。しかし、私はどうも最近のこの状況から、身近に感じなくもない。」
「今回起こっている一連の騒動…その黒幕だと?」
「ああ。知る限り、九狼党の企みは、祖柄樫山に調和と古の文化を取り戻すことだという。あながち、置田と黛の弱体、支配を狙うことにも頷ける。」
「わかりました。私の人脈を使い、調べてみましょう。」
藤香の見立てを聞きながら、春浪はお茶を飲み干し、赤い羽織を纏い、部屋を出た。
次回2025/5/15(金) 18:00~「第三十一話 失敗の報告」を投稿予定です。
※5月(金)はGW読書・強化月間です。
期間中は毎週(金) 及び祝日18:00に投稿致しますので、御期待下さい。




