第三十四話
「双葉殿、報告に参りました」と下っ端忍び。
「伺いましょう」
「木津川口にて、九鬼嘉隆率いる巨大鉄甲船が毛利水軍を撃破!
そののち、石山本願寺が和睦を申し入れ信長が受け入れたとの事。
鈴木家一族は雑賀城に引き上げ、孤立状態でござる」
「ご苦労です。引き続き動向を探ってくだされ」
「承知!」
「翔平、これって厳しくないか?」
「ヒジョーにキビシー!です」(財津一郎風)
「10年以上に渡って抵抗してきた本願寺さえ、ついに降伏!
もはや、誰も信長を止めれれないな」
「はい、あと姉者がお昼寝中に報告があって、安土城にて徳川家康の接待役の
明智光秀が解任されたとか。 信長の怒りが凄まじかったとも」
「翔平、明智殿に会いに行くぞ!」
「はい、まずは斎藤利三さんの屋敷に。」
斉藤利三の案内で光秀に会うことができた双葉は静かに頭を下げた。
「お互い名乗らない方が良いようだ。して御用の向きは?」
「信長殿、いや信長の最近の様子が常軌を逸していることを危惧しています」
「確かに叡山の焼き討ちあたりから、まるで人が変わったような振る舞いが...
「ようなではなく、変わったのです。あれは信長であって信長ではありません⁈」
「どうゆうことかな? 何者かに操られているとでも?」
「さすがの推理だよ、明智君!」
「拙者は名探偵ではありませんが...」
「これは失礼⁈ にわかには信じ難いことでしょうが、人の憎悪や怒りが
一線を越えたときに精神を乗っ取る魔物がいると聞きます!
今の信長がまさにそれかと⁈」
「そうなのか? いや、言われてみれば..思い当たる節が何度も...
「そのことを踏まえた上で、忠告に来た次第。
誰かが信長を止めなければ、この先も必要以上に血が流され続けるのは必定!
明智殿と羽柴殿が信長にとって最も使える家臣でござれば、二人には重要な任務や
無理難題を押し付けてくるやもしれません。
ですが、くれぐれも軽はずみな行動は控え、しかるべき機会を伺い、
その時がきたら...それがしと共に魔王・信長を倒してもらいたいのです!」
「これほどのこと、即答は到底できようはずもない⁈
だが、これからもお互いに連絡が取れるよう繋の忍びを手配してくれると有難い。」
「二人連れてきました。暗号名ハゲタカとガマガエル、十分お役に立てるはず⁈」
「桔梗の紋が入った小柄を渡しておきましょう。
これを見せれば拙者に会えるように話を通しておきます」
「お預かりします。 ではこれにてご免!」
「姉者、里に帰る前に紀伊に行きませんか?」
「雑賀衆か?」
「はい、雑賀孫市の兄貴は同志に加えるべきかと」
「雑賀城まで急ごうか!」
「はいな、姉者!」
口ぶりから察するに単なる顔見知りではなく、かなり親しい間柄のように思われる。
その翔平が推挙するのだから勝算があるのだろう。
例によって、あっさりと面会できた。
「雑賀城はいまや孤立無援、囲まれる前に城を出て野に潜むのが良いのでは?」
「行く当てもないし、気が進まぬな」気難しそうな相手だ。
「美濃にある我らの里に是非とも来てくだされ⁈」と双葉。
「ちなみに孫市兄貴、新型鉄砲が欲しくはないですか?」と翔平。
「今すぐ行くぞ! 案内してくれ⁈」と孫市。
翔平にかかれば簡単なものだ。
北近江の国友善兵衛の鍛冶場に向う道すがら、
「ときに、孫市さんはどのような女子衆がこのみですか?
胸の大きさとか?」
「胸はまあ、それなりであれば十分。
それよりタッパとケツがでかいのが好みじゃな⁈」
(奇しくも虎杖悠〇と同じとは意外だな⁈)
「我らの里に、三、四人ほど心当たりがあります⁈
合意の上でなら好きなところを、好きなだけ触っても構いませんぞ⁈」
「翔平、急げ! 遅れを取るなよ⁈」
案外と分かりやすい御仁だった⁈
国友善兵衛に以前の新型鉄砲を上回る鉄砲を造って欲しいと頼み込むと、
「そういう仕事がしたかったのじゃ」と引き受けてくれた!
腕が振るえる仕事に飢えていたようで気合が入ったようだ。
前に十三に造ったアーマテラス?より良いものを必ず仕上げて見せると。
出来上がるのが待ち遠しい!
これって〈一日千秋の思い〉であってます?
「珍しくあってます!」と翔平。
名物屋敷に着くと、
「報告に参りました」と下っ端忍び参上。
「承りましょう」
「播磨の名門、赤松家が織田家に臣従。
羽柴秀吉が御着城に移転し、居城としたうえで毛利攻めを命じられましたぞ。」
「ご苦労、引き続き動向を探ってくだされ」
「承知」
「孫市さん、まずはゆるりと天然温泉でくつろいでは?」
「おぉ! それは良い、お言葉に甘えさせてもらおうか」
「翔平、お背中流し隊の中から、タッパとケツのでかいのを見繕ってくるのじゃ」
「直ちに!」
「風呂の後は、ささやかながら夕食と歓迎の宴などを用意させますので」
「心配り感謝する。
最近は面白くないことばかりで、良い気晴らしになりそうで楽しみだわい」
大浴場の前に4人の精鋭が並んでいた。
お亮(三類)、お雛(四類)、瞳(五類)、伊達直子(三類)
「全員、後ろ向いてポーズ!」と翔平の掛け声。
「どうぞ、お好きなケツを選んでくだされ」
「おぉ! どれもこれも素晴らしい! 迷うではないか...
「ではいっそのこと、四人全員でお背中と言わず全身を洗ってもらえば
身も心もスッキリしますぞ!」
「そのようなこと、してもらうわけには...ぜひそれでお願いしたい!」
まさかの土下座をしたよ@@
「どうか手をあげてください。最後に一つだけ助言があります。
もう無理だと思ったら床を三度叩いて、「ギブ、ギブ!」と言えば解放されるので」
「いやいや、拙者とて武士の端くれ、滅多なことでは音を上げませんぞ!」
半刻《1時間》後、大浴場から意識を失い担ぎ出された孫市の姿があった。
「これって、〈雉も鳴かずば撃たれまいに〉であってます?」
「少し違う気がします..敢えて言うなら〈蟷螂の斧〉かと」
「言い得て妙! さすがだな、翔平」
「恐縮です。 次は胃袋を掴めば、もう抗えないでしょう」
「つまり、時間の問題てことよな、グフフフ..」
「時間の問題てことよなです、フヒヒヒ..」
翌日、孫市から里に永住したいと申し出があったのは当然のおケツ...帰結である。
「双葉殿、報告に参りました」と下っ端忍び。
「承りましょう」
「信長は明智光秀に四国長曾我部の調略を命じたのち、その役を解任。
現在の所領地、丹波地方を没収し毛利家の領地を新たに切り取り領地とせよと。
そのため、羽柴秀吉の援軍として中国地方に向かうよう命じられたとの事」
「ご苦労様です。引き続き動向を探ってくだされ」
「承知!」
「翔平! これってかなりの無茶フリじゃね?」
「確かにかなりの無茶フリじゃねです! 明智殿に早急に連絡を取るべきかと」
そのとき、ハゲタカが丹波より書状を届けに来た。
読んでみると「時は今、天が下しる五月かな」と書いてある。
「翔平、これってあれなのか?」
「間違いなくこれってあれなのかです!」
もはや、二人以外には理解できない会話になっている。
だが、風雲急を告げる状態なのは確かだ!
「戦闘要員は全員レベル5装備で京の町に向かう、急げ!」
「了解、少佐!」草薙素〇の出番。
「本職を忘れるなよ、芸人三人衆!」
「そうだった!」 ボーっとしていた三バカ衆が我に返って慌てて支度を急ぐ。
「ハゲタカ、堺の町のベルさんと勘三を京の更科に呼んできてくれ」
「承知!」
双葉は直感的にベルを呼ぶべきだと判断したのだ。
ついでに勘三も呼んでやらないと後でうるさいからな。
見栄晴は足手まといなので来ない方がよいが、付いてくるかもしれない。
京の町で更科に入ると小梅がテテテと寄ってくる。
「小梅さん、何か伝言はありませんか?」
「大久保長安さんの繋、昆吉さんより硝石の鉱脈を見つけたと報告。
村正さんに硝石を持ち込んで火薬の加工を始めるって言ってたよ」
「それは超朗報! もう南蛮商館のぼったくり硝石を買う必要がなくなった!
あんな商売は、例え神が許してもこの私が許さん!」
どの口が言うのかな?
そのとき、光秀からのもう一人の繋、ガマガエルが伝言に来た。
「明智殿より伝言。 敵は本能寺にあり! 現地にて待つ」と。
「承知! 家康殿の所在は?」
「少数の家来と堺の町を見物中とのこと」
「ガマよ、家康殿に直ちに浜松に帰るように伝えてくれ!
私の名前を出しても構わない」
「承知!」
「三平! 秀吉殿に毛利と講和し急ぎ姫路に戻るように。
理由は...言わずともよい」
「承知!」
今打てる手はこれぐらいか? いざ、本能寺に!
一方、主人公?であるはずの虎熊龍馬は、ほとんど出番がないまま今に至る。
龍馬にも言い分があるのだ。
本能寺の変が発生するまで歴史が変わるような行動を避けるべきだと。
信長には相談役として常にそばにいることことを命じられて、助言を求められる。
歴史を知っているので、時折り予言を的中させては信長を感心させた。
だが最大のライバル、木下藤吉郎改め羽柴秀吉には大きな差をつけられた。
かたや国主として中国地方の毛利家討伐の指揮官。
龍馬は部将どまりの相談役では話にならない。
しかし生まれ変わってから22年、明日は1582年5月2日、そう本能寺の変が発生するのだ!
すべてはそこから始まる、ここからが正念場なのだ。
十三は信長に明日は野暮用があるので本能寺には同行できないと告げると
信長は怪訝そうに十三を見つめる。
「なぜそんな目で儂を見る? そう...まるで死者を憐れみ見送るような⁉」
(ギクッ!鋭すぎるぞ⁉ アーユーテレパス?)
あなたの命運は明日尽きるのです!とは言えようはずもない。
ましてや、道連れで死ぬのは真っ平御免などとは口が裂けても...
「滅相もございませぬ、気に障ったならお許し下さい」と頭を下げた。
「いや、もう良い。頭を上げよ。龍馬、思えば二十年以上共に歩んできた...
「二十二年でございます」
「もうそんなになるか? だが我が覇業もあと少しで成就する。
その時はお主にも報いるつもりだ。これからも頼むぞ」
最近は近寄りがたいほど恐ろしいときも多くなったが、今日は珍しく?穏やかな信長だ。
龍馬は目を伏せたまま「万事順調な時こそが一番危ないのです」というのが精一杯の諫言だった。
「ふむ...そうさな。そうかもしれぬ」これが龍馬が聞いた信長の最後の言葉になる。
「では、これにて失礼仕ります」 龍馬は永遠の訣別を信長に告げた。
もう目を合わせることはできなかった。
龍馬が去ったあと、信長は蘭丸に
「今日のあやつは何か変だったな」と問いかける。
「はい、まるでもう会えないかのようにさえ感じました」と蘭丸。
「そうか、まさかそのようなことはないだろうが...」
明日は運命の日、そうとも知らぬまま信長は本能寺に向かった。
一方、秀吉は高松城を水攻めの真最中。
もう数日で落城すると思われるが、何か胸騒ぎがして仕方ない。
光秀の援軍が来る予定と聞いてはいるが、なぜかその実感がわかない。
すべて順調なはずが一気に崩れ去るような不吉な感じが増していく。
明日になれば果たしてこの不思議な感覚は消えるのだろうか?
もし竹中半兵衛が生きていたならば少しは不安も減るだろうか?
それぞれの思いがその夜を駆け巡る。
―以下に続く




