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好敵手(ライバル)は藤吉郎⁉ 【改訂版】  作者: ケロボッチ


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第十七話

 墨俣築城で美濃攻略の拠点ができたとはいえ難攻不落の稲葉山城に加え

 大垣城や曽根城などの支城による万全の防御態勢が斎藤家の強みだ。


 そんな中、奇妙な噂が龍馬の耳に届いた。


 稲葉山城を家臣の竹中半兵衛が乗っ取ったという。

 なんでも当主の斎藤龍興の放蕩三昧を諌めるための所作らしい。


 すぐさま信長は藤吉郎に稲葉山城ごと竹中半兵衛の調略を命じた。

 さすがに打つ手が早い!


 だが龍馬はこの調略はできないことを知っている。


 ここは一つ藤吉郎に会って助言しておくのがいいかもしれぬな。


 龍馬たちは7人全員で藤吉郎の屋敷に急いだ。


 屋敷にはすでに藤吉郎の姿はなく寧々が出迎えてくれた。


 双葉にテテテと寄ってきて、手を取りブンブンと振り回しながら

「ようこそ、双葉様⁉」と満面の笑みでの挨拶。


 似たもの夫婦か!


 自分と同じぐらいの小さい胸をもつ寧々は反比例の法則による絶大な好感度を双葉からすでに獲得している。


「ついさっき美濃に向かったところなので、急げば追いつけますよ」と。


「承知した。ではこれにてご免!」


 あっけないぐらい簡単に追いついた。


「おお、龍馬殿、双葉殿! 奇遇ですな」


 奇遇なわけないないだろ、ふつう。


「途中まで同行しても良いですか?」


「ぜんぜん桶《おけ》〇《まる》でござるよ」

(桶〇とは?)


「ちなみに今回の竹中半兵衛どのの調略は確実に...」


「確実に?」


「失敗します!」龍馬が断言する。


「ガーン⁈ そうなのぎゃ?」


「そうなのぎゃでござる」

 ついつられてしまったぎゃ。


「下手をすれば会うことすら難しいかと。」


「信長様直々(じきじき)の主命ならばそれは困る!


 にゃんとかにゃらにゃいか、龍馬殿?」

 動揺して噛みまくる藤吉郎。


「にゃんとかにゃります」つられまくる龍馬。


「ここにいる翔平に手土産の好物団子を持たせて同行すれば

 会うことぐらいならできるかと存ずじます」


「それは凄い! だが会えても調略が無理ならあまり意味がないか⁈」


「いえ、意味はありますよ。 稲葉山城乗っ取りは主筋の龍興に対する諫言を行動で示したとの事。 

 ならば近いうちに城を返上するはず。


 ですがあの龍興の気性なら竹中殿を疎んじる公算が大きい。

 調略はそれからがよろしいかと!


 その時のための今日は顔つなぎと思えば十分意味はありましょう。


 決して無理強いはせず、好印象を与える振る舞いに徹してみてはいかがでしょうか?」


「素晴らしい⁈ この藤吉郎感服しました!」


「交渉の使者に危害を加える竹中殿ではありませぬが、城を出た後の斎藤家の家臣はその限りではありません。


 護衛に十三さんと東雲姉妹をつけますのでご安心ください。」と龍馬。


「重ね重ねの配慮かたじけない」


「まだまだ家訓の受けた恩の倍返しには遠く届きませぬ」と双葉。


(十二分に届いてるし、おつりがくるぐらいだぎゃ)


「それがしと勘三はここから別行動です。 後ほど清州でまた!」と双葉。


「また後程、再見《サイジェン》!」と藤吉郎の謎の挨拶、まあなんとなく意味は分かる。


 双葉と勘三は勘三の炭焼き小屋に寄り薪炭を運べるだけ持って隠し蔵元に薪炭を納め格安で酒を買い求め、蜂須賀砦に向かった。


 蜂須賀砦の門の前に立つと誰何《すいか》なしに門が開いた。


 双葉の顔は墨俣の件以後蜂須賀衆に知れ渡っているようだ。


 頭領の小六、いや今や木下藤吉郎の股肱の臣に特級酒を渡すと大いに喜んだ。

 これに勝る手土産はあり得ないのだ。


「墨俣攻略の報告の際にここの砦と蜂須賀の里を我らに据え置きにと、信長様に進言してもらい認められたことには一同感謝している。


 木下藤吉郎の家臣ではあるが、望むことあればできる限りの協力はさせてもらう!」


「わっち(お孝)の里の警護を引き続きお願いできればそれで充分です」


「確かに引き受けた、安心して任せてくだされ!」


「かたじけない。 今から里に向かうのですが、一緒にいきませんか?」


「うむ、一度その里を見ておきたいし同行しよう。」


 小六と数人の家来を伴って双葉たちがわっちの里に着くと、目ざとく権三が駆け寄ってきた。


 小六を見て少しビビった権三は

「頭領自らお越しとは何かまずいことでも?」


「いまは頭領ではなく、織田家の侍大将、木下藤吉郎の配下じゃ。


 この里は東風殿の預かりとなり我らが引き続き警護する。

 異存はあるか?」


「依存などあろうはずがないよね、あんた!」


 いつの間にか現れたわっちの里の実質的な支配者、お孝が哀れな旦那〈以下哀旦〉に問いかける。


「もちのろんでおじゃる⁈」突然の鬼嫁...もとい愛妻の登場に言葉遣いがおかしくなる哀旦。


「小六殿、新種野菜の種の盗難防止を兼ねて、里の防御柵を強化したいのですが手伝ってもらえませんか?」


「手の空いてるものに極力手伝うように伝えておく」


「助かりますわあ、兄貴い!」さながら兄貴分にお小遣いをもらったチンピラの返事のようである。


「兄貴いはやめてくれ! 双葉よ、ここの里がおぬしの生命線で相違ないな?」


「相違ございませぬ!」


「ならば蜂須賀党がある限りこの里には誰にも手を出させはしない!」


「頼もしき事、この上ない!」


 双葉はお孝に「以前から住んでいる里の者は良いとして、新たに里に入るものは慎重にお孝さん自身で選んでもらいたい。


 新野菜をできるだけ長く独占販売したいゆえ、種の流出だけは避けたいのです」


「わっちは人を見る目があるから任せなよ。今まで見誤ったのはうちの旦那ぐらいじゃわ」


 少し不安になったが、任せるしかない。


「最初の収穫では種を増やし、次の収穫から野菜を販売する段取りでいきます」


「分かったぞなもし。 先を見据えて畑も増やしておくよ」


 これで今回の目的は全部達成できた。

 清州にもどるとしよう。


 清州の我が名物屋敷にもどるとすでに龍馬たちも帰宅していた。


 予想通り調略は失敗に終わったが、その時の竹中半兵衛の毅然とした態度と

 理知的な風貌に藤吉郎は憧れさえ抱いたという。


 龍馬の助言に従って執拗に勧誘しないで

「願わくば竹中殿の覚悟と斎藤家への忠義が竜興殿に伝わればと⁈」


 その言葉を聞いた半兵衛は少し驚いたような表情の後、目を閉じて軽く頷いた。

(悲しいかな、おそらく伝わらないであろうな)


「久作、使者殿を城外まで丁重に案内せよ!」

 弟の竹中重矩(しげのり)に命じた。


 城門で別れ際に「皮肉なことよな、織田家の貴殿らが我らの苦悩をわかっているとは」


 藤吉郎は無言で頭を下げ清州に向かった。


 途中の人気のない所に来たとき、先頭の東雲姉妹が馬の歩みを止めた。


 斎藤家家臣の襲撃に違いない!


 全員下馬して藤吉郎のまわりに位置どった。

 10人以上はいる。


 龍馬は皆に出来るだけ殺さないようにと指示を出す。


 東雲姉妹は煙玉を投げ、素早く森に入り潜んでいるであろう弓隊の駆除にかかる!


 龍馬は藤吉郎の前に仁王立ち⁈ 内心ビビりまくり。


 襲い掛かる斎藤家の武者たちを張ったりで威嚇して抑える⁈


 十三は次々と襲撃者をなぎ倒す。わざとみねうちで済ませておいた。


 弓隊の駆除を終えた東雲姉妹が十三に加わると、ものの数分で決着がついた。


 総勢15人の襲撃隊が実質、忍び2人と十三の三人に圧倒されたのであった。


 龍馬が護衛につかずに、藤吉郎と従者の2人だったら藤吉郎の物語はここで終わっていたかもしれない。


 藤吉郎は信長に《《今日のところは》》調略に失敗しましたとわるびれずに報告すると含みを察した信長は「そうか」と一言。



 二日後の夕方、双葉たちが風呂に入っているところに藤吉郎が素っ裸で乱入してきた。

「てえへんだ、てえへんだ‼ 龍馬、双葉!」


「どうされた、でこっぱち...じゃなくて藤吉郎?」


「竹中半兵衛殿が稲葉山城を返上して出奔! 自宅にて蟄居《ちっきょ》とのこと⁈」


「それはたしかにてえへんだ! だがまもなく日が暮れる。

 明日の朝一番で竹中屋敷に参りましょう⁈」


「拙者もこの屋敷に泊まって明日同行します!」


「紫忍、黒忍! 風呂から上がって急いで夕餉を食べ竹中屋敷の警護に向かうように! 

 斎藤家の者にも竹中屋敷の者にも気付かれないように⁈」


 声を揃えて「合点承知!」  湯舟から飛び出して藤吉郎の前を横切り、食事をとる部屋にむかった。


 藤吉郎は紫忍の揺れっぷりに感動したようだ⁉

 ちなみに嫁の寧々は全く揺れない。


 湯けむりで視界は悪いが藤吉郎は娘たちをガン見している。


 さてはこれが目当ての乱入か⁈

 まあ今日のところは大目にみてやるか。



 夜が明けた。


 五騎の風が竹中屋敷に向かう。

(間に合えばよいが。)


 いま使用人には暇を出し妻も実家に帰し、屋敷には半兵衛と久作の二人しかいないらしい。


 藤吉郎と龍馬の二人だけで竹中半兵衛に面会することにした。

 他の者は屋敷の警護につく。


 玄関で声をかけると久作が出てきて案内してくれた。


 半兵衛の前に二人が座った。


「して木下殿、こんなに朝早くからの訪問。今日の趣《おもむき》はなんでしょう?」


「天下を論じて友好を温めに参った次第でござる」


「ほう。悪くない申し出だが、この場に長居は無用です。

 いつ刺客が来るやもしれぬ状況なれば」


「ならば何故に二人してここを出ないのでしょうか?」


「一縷《いちる》の望みに賭けています」


「一縷の望み?」


「刺客ではなく城からの呼び出しの使者が来ることです。

 もし使者が来たなら同行してどのような裁きも甘んじて受ける所存」


「よくて切腹、悪ければ斬首かと」


「覚悟の上です。斎藤家、いや道三公への最後の奉公を全うできれば本望」


「凄まじき覚悟! 比類なき忠義! しかし刺客がくれば如何しますか?」


「その時は斎藤家を見限って久作と血路を開き逃亡するまで」


「十中八九、刺客が来るでしょうな」


「悲しきことですがおそらくは」


「では我らは使者か刺客が来るまでここに居候させていただく。


 刺客が来たときは加勢します、下心がありますので」


「酔狂な方々よ、好きになさるが良い」


「米俵を持参していますので全員分の握り飯をつくりましょう」


 あきれ顔で「久作、皆に粗茶でも振舞って差し上げなさい」


 握り飯を食べ終わり一息ついているときに、指笛が聞こえた。


 これは刺客が来たことを意味する!


 全員臨戦態勢に入った。


 見張りの黒忍が「弓兵5名を含むおよそ30名!」


「二人相手に30人の刺客とは、仰々しい。だが、30人なら楽勝だな!」


「楽勝ですね」 「楽勝ですぎゃ」藤吉郎まで強気だぎゃ。


「龍馬殿、双葉殿、できればなるべく殺さずに」と半兵衛。


「もとよりそのつもり、安心あれ!だが、龍興のやり方にはがまんならん!


 虫の居所が悪いので覚悟しなよ、めちゃくちゃ...痛いぞ⁈」


 双葉の相手をした刺客は皆キャンタ...金的を蹴られて悶絶した。


 ものの数分で決着がついた。


 長居は無用と清州の名物屋敷に全員で向かった。



 ―以下に続く―


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