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好敵手(ライバル)は藤吉郎⁉ 【改訂版】  作者: ケロボッチ


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第十六話

 清洲城 評定の間にて


 織田家の主だったものが集まる中、信長が席に着く。


 家臣一同平伏している。


 信長が口を開くと全員面《おもて》を上げた。


「皆に伝えておく。この度岡崎にて今川家から独立した松平家と同盟を結ぶ。

 過去のこだわりはお互い水に流し、東の今川家は任せて我らは美濃を取る!」


 世に言う清州同盟を結び、いよいよ美濃攻めがはじまるのだ。


 だが稲葉山城はあの斎藤道三が築いた難攻不落の名城。


 力攻めでは被害も大きくなるのは必定。


 果たしてどのように攻略するのか興味深い。


 下知あるまで各々《おのおの》役目を全うするようにと。


(まさかまだ何も攻略法がないわけではないだろうな。


 あの信長殿の事だ、凄い秘策があるに違いない)双葉はそう考える。


 一方信長の思案


(困った⁈ 皆には美濃攻めを示唆したが良策が浮かばない。

 どうしたものか?)


 ポンと手を打ち


 そういえば義元上洛のときの虎熊龍馬の見事な献策!


 あ奴なら何か良い方策があるかもしれぬ。


「猿!龍馬を呼んでまいれ」


 いきなりの呼び出しに戸惑いながらも信長の前に座った龍馬。


「猿、人が来ぬように見張ってこい。誰にも聞かせられぬ内密の話じゃ」


「お任せを!」

(見張りながら猿は聞いても良いということだよな)


「龍馬、美濃攻めの方針が見あたらない」


「無いんかい!」大名に思わず突っ込んでしまった!


「失礼ぶっこきましてございます」


「許す、許す代わりに美濃攻めの献策をせよ。今川上洛の時のような見事な献策を頼む!」


 (困ったな。信長殿はわたしを皮被り..じゃなくて買い被っているようだ。


 ここは一つ軍師っぽく適当にごまかすのがいいか)


 龍馬は竹中半兵衛をイメージしつつ瞼《まぶた》を閉じ考える...ふりをする。


 確か、歴史では藤吉郎の一夜城だったか?


 薄目を開けて懐から扇子を取り出して、トンと床をたたき


「ここが清洲城、そしてここが稲葉山城。


 このふたつの間の墨俣に美濃攻めの拠点を築くのが良いかと存じます」


「おぉ!さすがは龍馬じゃ。実は儂もそれしかないと思っていた」


(思っていたなら献策を無理強いするなよな!)


「さすがは信長殿」


「ガッハッハ!」「わっはっは!」


 二人して高笑い! 案外二人の相性は悪くない。


 そのとき

「なりませぬぞ、お市さま!」


「どきゃれ、猿殿⁈」


 いきなり襖を開け信長の妹、お市の方が乱入してきた。


 見れば哀れ藤吉郎はお市の方に踏みつけられもがいている...が嬉しそうな顔!

(まさかご褒美なのか?)


「市か? 猿、通してやれ。どうした。市?」


「噂の新参の家臣を見に参ったのです」


 お市の方は龍馬をジロジロと値踏みしたあと


「お立ちあれ。」と有無を言わさず。


「なかなかの偉丈夫、顔も悪くない」ふむふむ...


 龍馬も訳が分からぬまま、お市の方を観察する。


 美しい顔立ちだがかなりのじゃじゃ馬、胸はまあまあ人並ぐらいはある。

 ふと藤吉郎の回想シーンが脳裏に蘇る。


「市、今は大事な話の途中だ。控えておくがよい」


「ふんだ、おじゃまさま!」舌をだし、もう一度藤吉郎を踏んづけて出て行った。


 嬉しそうな藤吉郎! やはりご褒美なのか?


「猿!誰も入れるなと言ったはずだぞ!たわけが⁈」


「面目ござらぬ! ですがお市の方は猿では止められませぬ」


「まあよい、明日主だった者たちを集めよ!」


「御意⁈」



 翌日

 清洲城 評定の間 


「これより美濃攻めの方針を申し渡す!」


 一同緊張した面持ちで唾をのむ。 ゴクリ!


「墨俣に砦を築き美濃攻めの拠点とする!」


「殿!お待ちくだされ、かの地は川に挟まれており物資の運搬が困難なうえ

 斎藤勢も黙って見ているはずもございませぬ」


「無理は百も承知! だがこれを成さずして美濃攻略はあり得ぬ。

 誰ぞこの任務成し遂げるものはいるか⁈」


「その任務、是非とも拙者に!」名乗りでたのは木下藤吉郎⁈


「ええい!出しゃばりすぎぞ、猿! 引っ込んでおれ⁈

 殿! この任務、佐久間盛信が相応しいかと⁈」と柴田勝家。


「盛信、どうじゃやれるか?」


「無論、お任せくだされ」 なにやら声が頼りない気がする。

 勝家に無茶振りされて仕方なし感。


 藤吉郎のやる気を買うべきだと龍馬は思った。

 おそらく佐久間は失敗するだろうと思っても新参者が口を出すべきではない。


「ではこの件は盛信に任せるとして、これにて評定は終わりとする」


 我らが名物屋敷への帰り道に藤吉郎がついてきた。


「木下殿、墨俣の件に何か勝算があっての名乗りとみましたが?」


「そのことでお願いがあります」


「伺いましょう」


「これから拙者と一緒に蜂須賀小六殿との交渉に来てもらえませぬか?」


「なるほど! それが切り札でしたか。 いいですとも、敵地なので護衛をかねて全員で行きましょう」


「それは心強い!」


 いったん別れて我が名物屋敷に集合することにした。


「皆揃っているか?」屋敷に着くと出迎えた翔平に問いかけた。


「はい! 三人は新しい宴会芸を練習していますよ」


「本業を忘れていなければいいが⁈」


 どうせなら東雲姉妹にはしょぼい秘術じゃなく、木の葉隠れとか変移抜刀霞切りとか、カッコイイ技を覚えてもらいたいものだが。


 井ノ口の町まで六騎の風が吹き抜けた。


 馬屋に預けてここからは徒歩で蜂須賀党の砦まで進む。


 東雲姉妹を斥候に出しながら慎重に進んでいく。


 何とか無事に蜂須賀砦まで着くことができた。


 翔平が酒壺を掲げると門が開いた。


 翔平の顔パスで小六の部屋までいともたやすく辿り着ける。


 翔平が声を掛けると部屋の中から


「翔平か、構わん入れ」との返事。


 6人が部屋に入り小六の前に藤吉郎と龍馬が座り、残りの5人は後ろに控えて座った。


「お! 日吉ではないか。」


「小六殿、拙者は日吉丸改め木下藤吉郎、織田家家臣にて、今は足軽大将を務めています。」


「ほう、武士になって出世したのか。それは重畳!


 では、そろそろ今日の用件を聞こうか」


「今、織田家は美濃攻略のために墨俣に砦を築かんとしています。


 しかし簡単にはいきますまい。


 おそらくこの藤吉郎以外には誰も成し遂げられぬかと存じます。


 拙者に役目が巡ってきたときに蜂須賀衆に助力をお願いしたく参りました」


「ふむ。 蜂須賀党は道三公のときはそれなりに良い関係を保っていた。


 だが道三公のあと義龍、次の龍興の代になると次第に険悪になり、今や我らを野盗扱いする始末。


 よかろう、その時がくれば使いをよこせ。 助力、確かに引き受けた」


「おぉ!かたじけない」 


「木下殿、やりましたな!」


「うんうん」藤吉郎は龍馬の手を取りブンブン振り回して大喜び!



 案にたがわず佐久間盛信は墨俣築城に失敗した。


 次に名乗りを上げたのは織田家随一の猛将、柴田勝家!


 二日目にある程度砦ができた頃を見計らって斎藤勢が打って出る。


 勝家は迎撃にでて斎藤勢を追い返す。


 さすがと思いきや砦に戻ると斎藤勢の別働隊に砦が跡形もなく壊されていた。


 おまけに資材も丸ごと奪われていた。


「誰ぞ、墨俣築城成し遂げるものはいないか?」少しイラつき気味の信長。


「その役目、是非とも拙者に!」藤吉郎の名乗りに今度は誰も異を唱えない。


「藤吉郎、任せたぞ!」


「お任せあれ!」満を持しての藤吉郎である。


 評定のあと龍馬は信長に呼び出された。


「龍馬よ、義元を打ち取ってから皆儂を尊敬、いや憧れの目でみたものだが、

 2度の墨俣築城の失敗で何やら雰囲気が変わってきたのじゃ。


 次は失敗するわけにはいかぬ。


 そこでここは一つ藤吉郎の手助けをしてやってくれぬか?」


「もとよりそのつもりですのでご安心を!」


「そ、そうか。なら大丈夫だよな⁈」


 家臣の前では決して見せない姿をさらけ出す信長を見て

 思わず、〈役者じゃのう⁈〉と。


 我が屋敷に戻ると藤吉郎と弟の小一郎に加え蜂須賀小六、全員そろっていた。


 墨俣築城の作戦会議が始まった。


 まずは美濃の地理に明るい蜂須賀衆が、墨俣の上流で木材を伐採して筏《いかだ》を組み下流に流す。


 それを墨俣で受け取って組み立てる。


 初日の昼は堀と土豪だけを作り柵は立てないでおけば、斎藤勢は翌日までは出てこないだろう。


 ある程度砦を作らせてから襲撃し資材を持ち帰るのが狙いだからだ。


 そこを逆手にとって夜のうちに一気に砦を完成させる。


 大量の資材を現地調達するのがこの作戦の妙なのだ。


 東雲姉妹は蜂須賀衆に同行させ周辺の哨戒をさせ、夜明け前に墨俣で合流させる。


 そのあと出撃してくる斎藤勢を撃退させれば任務は完了となる。


 いよいよ明日から蜂須賀衆による資材調達が始まる。


 二日もあれば十分だ。


 藤吉郎と龍馬たちは2日後に資材なしで墨俣に向かい堀と土豪を作り始めた。


 日暮れ前には上流から流された資材の筏《いかだ》が到着しだした。


 筏をばらして柵と物見櫓を立てていく。


 上流で全ての筏を名がし終えた蜂須賀衆と東雲姉妹も墨俣に合流して

 砦造りを手伝った。


 夜が明けた。


 斎藤家の見張りが墨俣を見ると、そこにはにゃんと砦があった!


 世に言う一夜城である。


 慌てふためきながらも斎藤勢が出撃してくると、十分に引き付けてから双葉たちと蜂須賀衆で迎え撃ち藤吉郎たちにはそのまま砦を強化させる。


 あっけないぐらい簡単に斎藤勢は逃げて行った。


 双葉たちが強すぎるのだ。


 どうやらこれで任務完了⁈


 砦に戻り勝鬨を上げた後も砦の強化を続ける。


 守備隊を残し信長に報告に向かうことにする。


「小六殿、今回の働きは誠に目を見張るものがありました。


 良ければ信長様に推挙しますが。」


「いや、儂は信長には仕えぬ。性格的にぶつかりあうに相違ない。


 だから藤吉郎...いや木下殿に仕えることにする。」


「これは驚いた! それが本気なら信長様にお伺いを立ててみますが、許してくださることでしょう...たぶん。」


「それでは清州に凱旋といきましょう!」


 清洲城謁見の間にて

「墨俣築城成し遂げてまいりました!」


「でかしたぞ、藤吉郎! 今これより侍大将に昇格してやろう。」


「はは! 有難き幸せ。 ですが皆の協力によるところが大きく、中でも後ろに控えている蜂須賀小六どのと龍馬どの東風どののおかげです。」


「さようであったか。 蜂須賀小六、ご苦労であった。

 褒美をとらせる。何か望みはあるか?」


「我ら蜂須賀衆、願わくば木下藤吉郎殿の配下として織田家に仕えたく存じます。」


「相分かった! 双葉は何か望みがあるか?」


「美濃の山奥に我らに協力してもらっている小さな里があり、今まで蜂須賀衆に警護してもらっていましたがこれからも引き続き守っていただければ幸いです。」


「蜂須賀の里を小六の預かり領地のままとすれば良いということだな?」


「ご賢察!」


「許す、良きにはからえ。」


 かくして美濃攻略がまた一歩前進したといえる。



 ―以下に続く―


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