第十二話
もう打てる手はすべて打った。
後は今川義元の上洛を待つのみ。
1560年5月12日
ついに東海の覇者、今川勢2万5千の大軍が駿府城から出撃した。
松平元康が先鋒を命じられ、尾張に向かって進軍を始め後続軍も順次出発。
本隊も早ければ5日とかからず国境近くまで進み沓掛城に入るだろう。
清洲城での軍議は籠城か野戦で意見が分かれ、何も決まらぬまま軍議は終わった。
だが信長の心はすでに決まっている! 奇襲以外に勝ち目はないと。
5月19日未明に今川勢が丸根・鷲津砦への攻撃を開始。
その知らせを受けた信長は鼓を打たせ敦盛を舞い終わると、僅か6騎で出陣した。
その中には龍馬や双葉はまだいない。
熱田神宮に兵力を集結し善照寺に向かい偵察隊の連絡を待った。
約2千の兵が集まった時、偵察隊から義元本隊の情報が入った。
まもなく桶狭間に着くとのこと。
信長は決戦の場を桶狭間と決めて全兵力を桶狭間に進めた。
その先頭に龍馬や双葉たちがいた。
東雲姉妹を斥候に出し、敵軍がいないことを確認してから慎重に進軍を重ねる。
もし義元本隊以外と戦闘になれば勝機はなくなってしまう。
即ち、東雲姉妹が判断を間違えれば織田家は滅亡する。
黒忍は前方200メートルで義元本人が村人からの献上品を納め、どうやら休息を命じたと察した。
紫忍をその場に残し、黒忍が最終報告として信長の元に走り出す。
その黒忍の顔にポツリと水滴がかかった。
しめた!
もう少し雨足が強くなればぎりぎりまで気配を消すことができる。
織田軍には最高の援軍だ。
やはり信長には天運があると感じざるを得ません。
もう義元の本陣はすぐ近くにある。
「狙うは義元の首! 全軍突撃‼」
信長の号令と共に、戦闘が始まった。
土砂降りの中、乱戦になったが今川勢は混乱している。
義元の旗本たちは、ここで戦闘になるとは夢にも思っていなかっただろう。
双葉たちは先陣となり今川勢を蹴散らしていく。
「尾張のおおうつけ見参! 東海一の弓取りの顔拝みに来たぞ!」
義元の旗本隊はほとんど逃げ腰で既に勝負はついたも同然だった。
今まさに今川本陣を織田軍が圧倒している。
義元は一番槍をつけた服部一忠に反撃して膝を切り割ったが、毛利新介によって組み伏せられ、首を討ち取られて死亡した。
「義元公、打ち取ったり!」叫ぶ新介。
信長のもとに伝令が走った。
「やったか! 皆の者勝どきだ!」
えいえいおー‼
こうして織田軍の大勝利で幕を閉じた。
ほとんど無名に近かった織田信長の鮮烈な全国デビューだ。
世に言う桶狭間の戦いである!
清洲城に凱旋した信長を領民たちが大歓声で迎えた。
戦に負けていれば、町ごと今川勢に蹂躙されていてもおかしくなかった。
この熱狂ぶりも無理はない。
今宵は町を挙げての祝勝会が行われることだろう。
清洲城では今、論功行賞が行なわれていた。
勲功第一は梁田正綱、以下毛利新介、服部小平太など。
双葉たちの凄まじい働きを目の当たりにした信長は、藤吉郎を介して破格の待遇で直参を打診してきたが、客分のままがいいと辞退した。
まだ何やら言いたげな藤吉郎にまだ何かと問うと、この後寧々さんと祝言をあげるので良ければ来てほしいと言う。
喜んで伺うと答えると藤吉郎は嬉しそうに走り去った。
とっておきの祝い酒を持っていくことにしようか。
双葉たちが藤吉郎宅に着くと、すでに宴は盛り上がっているようで大騒ぎ!
それほど広くない部屋はもう満員だ。
それでも龍馬たちのために席を設けて膳を運んでくれた。
この席からは藤吉郎と花嫁がよく見える。
新婦の寧々は笑顔を常に絶やさず、双葉と目が合うと丁寧に頭を下げた。
かなりの器量良しに加え聡明そうな雰囲気がある。
胸はあまりない(貧乳七類)。つまり双葉は寧々に好感が持てる。
この場に集まった者は皆、藤吉郎が大好きなのだろう。
大声で笑い、はしゃいでいる。
ここで東雲姉妹が祝いの舞?を披露すると申し出た。
なんでも龍馬に教えてもらったらしい。
双葉は少し嫌な予感がしたが、許可するしかない。
姉妹はまわりの目を気にせずに服を脱ぎ(ほぼ全裸)その場で変身の術?を使い衣服を裏返した。
リバーシブル⁉
紫忍の惜しげもないサービスシーンに一同大喝采!
黒忍にはそれなりの喝采。
そんな中、不思議な舞?が始まった。
例えるならドラク〇Xオンラインの太陽の踊りに似ているか。
モスラヤ モスラ♪
ドゥンガン カサクヤン
インドゥムウ
ルスト ウィラードア
ハンバ ハンバムヤン
ランダバン ウンラダン
トゥンジュカンラーカサクヤーンム
モスラヤ モスラ♪...
終わると静寂が訪れた...
皆啞然としている。
少し間が開いて大爆笑!
まあ、受けたからいいか。
さて、そろそろ屋敷に戻るとしよう。
屋敷の近くに来ると案にたがわず、大勢の見物客が待ち構えていた。
既に出来上がってるようだ。
門から屋敷に入るときにはやんややんやの大騒ぎ!
三吉が飛んできて風呂はちょうどいい湯加減ですと。
もらい湯に来ている娘たちもいつもより多いようだ。
例によって一番風呂から10人以上が入浴を許可された。
十三もガン見の気合いが入りまくり。
お約束のサービスシーンがまさに展開されようとしている。
戦勝祝いもかねて、ど派手に大小(胸)があちこちでプルンプルン⁉
いつもより長めに揺らしております!
もうこれは映像化して永久保存するしかないと感じざるを得ません!
風呂から上がると食事の膳が次々と運ばれてくる。
今までで一番豪勢で見るからに涎もんである。
各自に尾頭付きの鯛、船盛の刺身に天婦羅盛り合わせ、鰻のかば焼き、アワビの柔らか煮、五目御飯、猪肉の塊の炙り焼き、特大の伊勢海老..
東雲姉妹はあまりのうまさに感動して涙を流しながら食べている。
全て平らげた東雲姉妹は龍馬と双葉の前で額を擦りつけんばかりの土下座をする。
何やら願いがあるという。
「今川勢を撃退したいま、我ら二人は任務完了となりました。
ですが、これこの通り伏してお願いします。
我らを雇い続けてくだされ!飯と風呂があれば銭などいりませぬ、何卒‼」
「龍馬さん、この二人の処遇はそれがしに任せて貰えませんか?」と双葉。
「ほう、それは構いませんが、どのようにするおつもりなのでしょうか?」
「このまま二人を里に返さななければ、下手をすれば抜け忍扱いで追手がかかる。
ここは一度里に戻って筋を通し、見受け?の交渉をしようかと」
「なるほど、では双葉さんの配下にするのですね?」
「いえ、以前にも話しましたがそれがしには大望があります。それを成すには同じ志を持ち、共に歩む同志を集めています。ですが決めるのは本人の意思次第」
「地獄の底までついていきます!たとえ体毛...もとい大望が世界征服でも!」
「聞いておくれよ、双葉さん。あたいが里にいた頃、無駄(に大きい)乳とか馬鹿胸などと呼ばれてたっちゃ。
それが今や紫忍! 紫式部みたいに気品ある二つ名までつけてもらった。
この恩に報いたい気持ちで胸が溢れてしまいそうになる。小胸は溢れないけど...
「今、小胸と言ったな、馬鹿胸! 何が紫式部じゃ、紫陰部のくせに!」
「な、何を言うか! 知らない人が聞いて本気にしたらどう責任を取る?」
ムキー!ウギャア!
「それぐらいにしておきなされ、二人とも!」と龍馬がなだめる。
「当分は急ぎの仕事もないだろうし、朝一で軒ざるの里に向おうかと。」と双葉。
「そのことだが、以前に受けた隠し蔵元の件を先に片付けませんか?」龍馬が提案する。
「おお、すっかり忘れてた⁉ 良いですな、皆で探せばきっと早く見つかるでしょう。さす龍!」
この日の晩は祝宴が開かれ大いに笑い、例によって酔いつぶれた者から眠りについていく。
―以下に続く




