第十一話
道中、東雲姉妹二人は同じことを考えていた。
何としてもこの任務果たさねば!しくじったら解雇されるのは必然。
となれば昨日の夢のような夕餉や風呂に二度とありつけなくなる。
里に戻り、もとの極貧暮らしになるかと思うと耐えられそうもない。
「今、この時こそが忍び人生最大の正念場だと感じざるを得ません。」あぱれる君ならきっとそう言うに違いない。
岡崎の町に着いた三人は予てからの手はず通り、東雲姉妹はここから岡崎城まで徒歩で向かう。
双葉は別行動で町で今川軍の噂や情報を集めたり今日明日ぐらいは交易をしても問題ないかなと考えている。
東雲姉妹の任務は短期間で達成できるはずもなく、数日かかるとみるのが妥当だからだ。
二日に一度は生存確認を兼ねて岡崎の町に報告に来て、食料の補給をするようにと伝えてある。
つまり三日以上音沙汰が泣けれ無ければ二人は死んでいて任務の失敗を意味する。
必要以上に不安がっても仕方がない、双葉は切り替えて座に向かう。
岡崎の町では綿花と陶磁器が利益が出そうだ(正解である)。
堺の町で捌いて南蛮商館でカステラと金平糖を買って岡崎の町に戻るつもりだ。
一方、東雲姉妹は岡崎城の裏手から少し離れた森の中で準備をする。
衣服を全て脱ぎ、ほぼ全裸になると着ていた衣服を裏返して再び身に着ける。
サービスシーンはできれば一話に一度は入れておきたいと読者への配慮を忘れない
いままでの旅芸人風から忍者装束に早変わり⁉ 特注のリバーシブル?だそうだ。
東雲流三大秘術(自称)の一つ、変身の術と自慢げだ。
それから用意してもらった弁当の握り飯を食べた。
これがまた絶品!
抜群の塩加減に中の具が素晴らしい。
鮭と梅干、これこそ王道の美味しさ。
この握り飯のためなら死ねる!
死ねるリスト(㊟岩清水健〇郎による特殊リスト)に載せておくことにする。
背中合わせの態勢で日が暮れるまで交替で仮眠をとる。
日暮れ前になって、ようやく二人は慎重に動き出した。
最初に依頼の今川家の伝令の旗印がどこにあるのか探さなければならない。
城の裏手にある高い木に登り十三から借りた遠眼鏡で様子を探っていく。
なんじゃこりゃあ、めっちゃよく見えるやんけ⁉と言いたげな顔の黒忍。
(声を出せない状況下での苦肉の表現)
端から順に見ていくと入り口らしき扉があり、その横にある篝火がある。
ふむふむ、ご丁寧に見張りまでいるじゃアーリマセンカ...
寝ずの番がいるってことは相当エロイ...もとい怪しい⁉
地下倉庫の入り口に違いない!
倉庫には先祖代々伝わる家宝のエロ本とか、門外不出の秘蔵のエロ本などがある...はずもなく普通に武器や鎧、弾薬など軍備品が置かれているはずだ。
侵入するタイミングは見張りが交替した後を狙うのが常套だ。
理由は言わずもがな。
見張りも飯を食べる必要がある以上夕食後や朝食後に交替すると予想される。
予想通りなら交替はそろそろかな?
時を待たず案の定、交替の兵が現れ、二、三言葉を交わして何かを手渡す様子。
もしや入り口の鍵なのか? だとしたら随分とおそ松さんな警備体制だ。
襲う側にとっては涎もんのアリガタイコッテス、アイランドゴッテス(馬名)!
ゴ無礼、韻ヲフンデミマシタ⁉
さておき、もうすぐ日が落ち、篝火が灯される。
だが行動するにはまだ早い。はやる心を抑えつつ自分自身に言い聞かせる。
待て待て、まだ慌てる時間じゃないと。
やがてあたり一面を闇が支配した中、目が慣れてきた東雲姉妹はゆっくりと動き出す。
城の裏手から城壁を乗り越え、見張り番の近くまで忍び寄る。
茂みの中に潜み待つ、ひたすら待っている。
二人は辛抱強く待ち続ける。
いや、忍びの者にとってこれしきの事は辛抱とは言わないか。
一刻を過ぎようとしたころ、枝の葉がかすかに震え始めた。
少し風が出てきたようだ。
懐から道具一式を取り出し準備を始める。
強すぎず弱すぎず良い塩梅の風になった時を見計らって薬をまき始めた。
効果てきめん、門番は地面にへたり込み眠り始めた。
これぞ東雲流三大秘術・春化の術...て、ただ眠り薬をまいただけ。
大急ぎで駆け寄って、首にかけてある鍵を手に入れ門番を茂みに隠した。
篝火の松明をそれぞれ手にして、鍵を開けて中に入った。
下り階段を降り切った部屋は割と広く、多くの道具が整然と並べてある。
これなら探すのも簡単だ。
部屋の奥の方の壁に竹竿が立てかけてある。
もしや旗印の竹竿ではあるまいか。
だとしたらその近くに伝令隊の旗印が置いてあるに違いない。
竹竿の近くの葛籠を開けると、まさしく今川家特有の八咫烏が描かれた伝令隊の旗印!
黒忍が一枚だけ抜き取り懐に忍ばせた。
もう長居は無用。
部屋から出て、門番を茂みから戻し立ち去ろうとした、そのとき...
気配を感じた二人は後ろに飛んだ⁉
伊賀の者が使う十方手裏剣が二人のいた位置に突き刺さる。
間一髪!あぶにゃいところだった。
今は相手は一人のようだが、如何せんここは敵地。
おっつけ伊賀衆が駆けつけてくるに違いない。
ひたすら撤退あるのみ。
裏手の塀を乗り越えて近くの森に逃げ込む。
どうやら追手の人数が増えてきた様子。
あちこちでピー!と呼び笛の音がする。
こうゆう時は下手に動かずに、闇に溶け込み潜んでいるほうがずっと良いと飛び加藤から教わった。
それでもいつまでもその場にいるわけにはいかない。
細心の注意を払いながら少しづつ移動する。
長い時間をかけ、城からかなりの距離まで離れることができた。
どうやら追手を振り切ったか?
ここまでくれば見つかったとしても、通りすがりの遊び人姉妹でごまかせる...はずもない。
なにせ見るからに怪しげな忍び装束の二人なのだ。
夜明けとともに二人は極力音をたてぬように忍び装束を脱ぎ始める。
再度のサービスシーンと東雲流秘術・変身の術!
あとは岡崎の町を目指すのみだ。
街道を行く旅人や行商人に紛れて目立たぬようにしてようやく町に着いた。
目ざとく双葉が二人を見つけて走り寄る。
「どうだった?」と双葉。
声を揃えて「上首尾!」満面の笑みの姉妹。
「おお、やったか! では急いで清州に戻りましょう」と双葉。
「合点承知!」
名馬揃いの三騎は一気に清洲城まで駆け抜けた。
案内された部屋には龍馬、藤吉郎、利家、長秀そして信長の五人。
皆が一斉に双葉と東雲姉妹を見る。
双葉は黒忍から預かった今川家の伝令隊の旗印を差し出し
「首尾よく例の物、入手できましたぞ」
おおっ⁉ と歓声が上がる。 これがあれば偽伝令隊が編成できるなとか、
間に合って良かったですななど皆が明るい表情で喜び合う。
「見事な働きであった! 双葉、この任務は後ろの二人が?」信長が問う。
「はい。軒ざるの里から雇った、大きい方が紫忍、小さい方が黒忍」
「はて? 二人とも小柄...大きい方とは?」と信長。
「ああ、胸です。ご覧になりますか? 二人とも胸を見せて差し上げ...
「いや、見せずとも...良い」と信長。わずかに迷いがあったか?
「殿!みすみす好機を逃すとは、らしくありませんぞ!」と利家。
「そうですぞ、せめて大きい方だけでも!」と藤吉郎が。
「家臣の気持ちも少しは考えてくだされ!」長秀までもが。
「儂が間違っていた、皆の言うとおりだ、ゆるせ。
...ということで、ご覧になります⁉」と今更ながら信長。
キョトンとしている東雲姉妹に双葉が
「もっと近づいて間近で見せて差し上げなされ」と促す。
紫忍はガバっと「とくとご覧あれ⁉」ブルンと揺れる。
「おお!」「でかい!」「見事!」「うにゃあ!」と称賛?の声。
「こちらの胸が大きい方、すなわち紫忍です、次は小さい方...
何をしている、小胸?」
「小胸言うな! せめて大きい方だけでも...じゃなかったか?」
「この状況で拒否権はありません。さあ!」
「グヌヌ...やむなしか」カパッと。
「うん?」「小さ!」「哀れ!」「うにゃ」と反応が違う。
「これが小さい方、すなわち黒忍です。
二人には義元の上洛戦まで働いてもらいます」
「相分かった! 存分に働いてくれ、紫忍に黒忍」と信長。
「我らの働きとくとご覧くだされ!」
その翌朝、双葉は目を覚まし相変わらず半裸状態の東雲姉妹を尻目に
庭に出た。
夏風の世話をしてからいつもどうり鍛錬を終えて部屋に戻ると龍馬の様子がおかしい。
どうやら、おかずを目の前にして元気溌剌すぎる龍馬である。
しかもすでにブッコキ態勢に入ってる様子?
立ち去るタイミングを失った双葉はその場に座り込み観察することにした。
ふむ、あの右手の捌き方、あの速さ...達人の域?なのか。
「ただ者ではないな、あの熟練度は! 龍馬だっけ?」
見れば横に十三が並んで座り込んでいるではないか。
「いつの間に!」驚く双葉。
「しっ、静かに! 気づかれますぞ、あと少しで...
気配を察したのか、龍馬が後ろを見る!
二人と目が合ってしまった...
どちらも気まずさのあまり声も出ない。
龍馬もさすがに手を止めて立ち上がり目を合わさず、そそくさと部屋から出ていった。
「最後まで見たかったが、残念じゃ」と十三。
「まさか、そういう趣味とは...
「いや、勘違いなさるな。決して男色などではなく、ただのスケベ心」
十三は胸元を開けてサラシをほどいた。
そこには紫忍に負けず劣らずの巨乳(二類)があった。
そんな中
今川上洛まであと数日、運命の一戦がすぐそこに迫っている。
―以下に続く




