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『そなた……、生きているのが難しそうじゃな』


 突然、眩い光が放たれたと思い目を閉じていたら、そんな声が聞こえ、同時に目を開けると街灯の真下の怖いモノは消えていた。そして、眩い光が放たれた方から聞こえてきたコエに視線を向けると、なんだかとても古めかしい衣装の美しい女性が地面から数メートル浮いた状態で、無表情で片膝胡座に肘をついてこちらを眺めていた。


「な、なに?」


 春香は怖いと思いながらも心のどこかで相手に敬意を持っている己の気持ちを持て余しながら、目の前の存在に問いかける。恐れ慄く自分の心。けれど一方で神々しく恭しい気持ちも持ち合わせる自分の心もある。それが畏怖、という感情であることを身を持って知る。

 深夜とは言わないけれど夜八時。もう暗い時間帯であるのに眩い光。灯りではない。太陽のように強く眩い光。それが放たれている中に浮いている女性。


 彼女から目が離せない。


 春香はここまではっきりと生きている人とは違う存在を見たことは無かった。


『なに、か。まぁ驚くのも当然じゃな。(わらわ)は、そう。そなたらの言うところの霊魂、じゃの』


「れいこん?」


 わらわ、とか、れいこん、とか聞き慣れない言葉を繰り返す春香は、先程の怖いモノが消え去っていることも、この状況も現実離れしていて、脳が飽和状態。


『霊魂。魂じゃな。幽霊とも言う』


 幽霊と言われ春香はギョッとして後退る。怖いモノと違うナニカだと思っていたが、幽霊だとはっきり言われてしまえば怖い。


『ああ、落ち着け。そなたの思う怖い存在とは違う。そなた、先祖を敬い墓参りに行くじゃろ? そこに眠る亡くなった者たちと妾は変わらん』


 恐怖でパニックを起こしかけた春香に、その女性は殊更にゆったりとした口調で先祖と自分は変わらない存在だと訴える。春香は、わらわ、というのが私という一人称と同じだということを、この時覚えた。どうでもいいことを考えてしまったのは現実逃避か。


「先祖と同じ」


『そうじゃ。まぁ妾はかなり年寄りじゃがの。そなたたちから見ると1000年以上は昔の存在かもしれぬな。死んでからも色々と勉強してきた故、現代のことにもそれなりに理解しておる。そうじゃな。例えば、この街灯というもの。大昔には無かったが、灯りだということは知っておる。この灯り、そろそろ元通りになるはずじゃ。そうすればそなたは怖くないじゃろ』


 女性が全く機能していなかった街灯をほっそりとした指先で示したと同時に、街灯がまるで最初から煌々と夜道を照らしていたかのように明るく照らし出す。

 春香は目を瞬かせ、手品でも見たかのような狐に摘まれた顔をした。


「なんで。故障というわけでもなく、普通についた。灯りが、なんで」


 混乱して言葉を紡ぐというより単語を吐き出す春香は、けれどその灯りを見てホッとする。同時に寮のエントランスの灯りも見えたし、その中に入る同い年くらいの女性の背中まで見えた。それに気づいてまた目を瞬かせる。


「えっ、さっきまで人が居なかった、はず」


『いや、おったぞ。そなたの視界が少し違う世界を見ていただけじゃ』


 春香の疑問に答える声に、春香はハッとする。目の前に居るその女性の存在を少しの間、忘れていた。

 この女性……幽霊は何者なのだろう。街灯の灯りで消えることもなく、まだそこにいる。

 いや、それよりも幽霊は何かおかしなことを言わなかっただろうか。


「私の視界が違う世界を見ていた……?」


『そうじゃ。……ふむ、日常生活を送るためにも、ここで突っ立って独り言をぶつぶつ呟かない方が良いかも知れぬから、そなた、落ち着ける場へ行こうかの』


 宙に浮く女性、彼女曰く幽霊に促された春香は、独り言を呟く怪しい人間に思われることを回避するために、寮の自室へ幽霊を招くことになった。

 色々混乱し過ぎて頭の整理もしたい。それに幽霊に尋ねたいことも出来たので。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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