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拾陸

「アレら、と仰いましたが複数居た……わけですか」


『そうであり、そうでない、と言える』


 複数、人ならざるモノが居たと言えるし居ないと言える。益々春香は困惑する。


『アレらが一塊りになっていた、と言えば分かるじゃろ。妾もきちんと数えなかったが、複数のアレが一塊りであの女性の背後にいた』


 そんな恐ろしい事態に春香は息を呑む。


「それはとても怖いですね」


『怖いとも。だがの、もっと怖いのはそのことに全く気づいてないこと。あの女性は自分がアレらを呼び出したことに気づいてもおらず、複数が一塊りになっていたことも気づいておらなかった』


 春香は背中がゾクゾクした。そんな恐ろしい事態だというのに全く気づいてない女性。それは確かに春香とは違うのだろう、と思う。


「神功皇后はそのようなことも分かるのですか」


 それにしても、そんなことまで分かってしまうとは神功皇后は凄い人、いや、霊魂、だなと春香は感心する。


『呼び出したことや、それに気づいてないことか』


 神功皇后は少し困惑したような表情を浮かべて春香の感心した声に尋ね返す。春香が頷けば、彼女は苦笑を口元に浮かべた。


『そこまで凄いことでは無いよ。複数のアレらが一塊りになっていることが分かったのは、そなたよりも妾の方が見えるから。アレは霊魂である妾と同じ存在じゃからの。要するに霊魂じゃ。但し悪しきモノというわけじゃの。であれば、そなた以上に見える。それだけのこと』


 そう言われてしまうと、身も蓋もないと思うが、それでも凄いことは凄い。


「でも呼び出した、ということも分かったわけですから」


『それはの、波長の話をしたことを覚えておるか』


「はい。私が人ならざるモノが見えるのは、その波長が合う状態だと」


 春香はなぜ自分がそんなものを見てしまうのか、と長年悩んで苦しんでいた疑問が解けたことを教えてくれたので、きちんと覚えていた。神功皇后は大きく頷き言葉を紡ぐ。


『そうじゃ。その波長によって見える。或いは後について来てしまうこともある。だがついて来てしまうモノは人によって長さはそれぞれだが、いつの間にか居なくなる。一日でアレが居なくなる人もいれば、何日もアレが居て影響を受けてしまう人も居る。だが、ついて来ただけゆえに離れれば影響も消える。だがの、あの女性はただ波長が合ったゆえについて来た、という状態ではなかった。詳しいことは言わぬが、アレを呼び出したのでなければ、あの女性のアレらが背後に居たことにはならぬよ』


 女性が人ならざるモノを呼び出した痕跡みたいなものがあった、ということなのだろう、と春香は思う。


「でも悪いモノを無意識に呼び出したのだとしたら、身体に影響は無かったのですかね」


『あったから、妾がアレらを強制的に追い払ったことで倒れたのじゃ』


 どうやらあのタイミングで女性が倒れたのは、人ならざるモノを神功皇后が光で追い払ったから、らしいと知る。


「じゃあ、神功皇后が追い払ったから、きっともう大丈夫でしょうね」


 春香が何気なく口にした言葉に、神功皇后は真顔になった。スン、と擬音が聞こえるくらい急激な真顔。


『そなた……お人好しじゃの』


「ええと」


『アレらが一塊りにあの女性の背後に居るほど、あの女性は呼び出した、と言ったであろう。呼び出したということは、無意識であろうがアレらを自分に引き寄せたということ。自分に引き寄せるということは、それなりのことがある、ということじゃ』


 またも抽象的な言い回しに、春香は必死に思考をフル回転させる。


「ええと、波長が合って悪いモノがついて来たわけじゃない、んですよね?」


 春香が確認のように問いかけると神功皇后は頷く。


「無意識であっても悪いモノを呼び出して引き寄せるくらいのことがある。それって、良からぬことを考えていた? 良からぬこと、というか、物凄く悪いことを考えていた?」


 春香がハッとして神功皇后を見る。


『気づいたようじゃの。そうじゃ。アレらを呼び出して引き寄せるようなことをあの女性は考えていた。或いは既にその考えを実行していた。というところじゃの。何を考えたのかなどは分からんが、複数のアレらを無意識で呼び出すのであれば、それだけ考えだか性格だかが悪いのじゃろ。妾にチャンネルとやらの言葉を教えてくれたそなたと同じ人間が言っていたのは、性根が腐っている、だったの。妾もその言葉は同意でしかない。妾が生きている時にも性根が腐っている人間はおったが、いつの世にもそういう人間は一定数居るものじゃ』


 何度も言うが物凄い美女の外見をした神功皇后。その美女の口から出てきた性根が腐っている、という言葉に、春香はなんて言えばいいのか分からない気持ちに駆られる。

 いや、とっても分かり易い言葉なのは確かだが、もう少し穏やかな表現を口にしてもらいたい、と思うのは、多分外見の嫋やかな美女から過激な言葉が発せられることに抵抗があるから、かもしれない。

 だが、じゃあどんな言葉なら似合うのかと言われてもまた分からないし、結局のところ分かり易い言葉を考えるのなら、春香も性根が腐っている、とか、性格が悪い、とか、そんな言葉しか出てこないので、微妙な気持ちを押しやって黙っておくことにした。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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