表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/18

拾漆

「その、ということは神功皇后が追い払ってもまた呼び寄せる?」


『可能性は高いの。性根を変えねば次々と呼び寄せるじゃろな。妾が追い払ったのは、あの女性を見たときは分からなかったからじゃ。波長が合って拾ったのじゃろ、と思い追い払った。あんなのが居るのでは悪影響じゃからの。だがの。あんなのと波長が合うというのは、そこそこに良くない性質の人間だと追い払ってから気づいた。そうして思い返してみれば、アレらは女性に呼び寄せられたのか、と分かった。尤も呼び出した本人は気づいておらんかったがの。呼び出した、というか。呼び寄せた、というか。まぁそんなわけじゃがそんなもんを無意識に寄せ付けている段階で、あの女性が良い人間なわけが無かろ』


 そう言われてみればその通りである。

 神功皇后が一目見て「アレは拙い」と判断するくらい悪いモノを背後に背負った女性。偶々波長が合っただけだとしても、波長が合うこと自体、女性の価値観だか性根だかに問題がある、と言える。

 その上、神功皇后曰く「女性の背後にそんな悪しきアレらが居る時点で、女性に悪影響は確かに起きているはず」だとのこと。


「だから、神功皇后が追い払ったことで女性は倒れた」


『そうじゃの。影響を受けていたからこそ、じゃ。追い払ったことが良いことだったのか、悪いことだったのか。それは妾にも分からぬ。言えるのは身体に影響を及ぼすくらい、アレらと共に在ったということ。そして身体に影響しているということは必然、精神にも影響しているということじゃ。病は気から。という言葉があるじゃろ。気持ちが弱ると身体も弱るという意味じゃ。逆も然り。身体が弱るなら気持ちも弱る。そういうもの。故にあの女性が倒れたのも必然』


 春香はよく分かる。

 多くの人には見えないモノを見ることで、疎外される気持ちを味わった。疎外されることで心は負を背負う。そうすれば身体も人前へ出ていくことを拒むように、頭が痛くなりお腹が痛くなり熱を出し吐き気を催してきた。

 まさしく病は気から、である。

 そうして身体に影響が出るからさらに心が弱る。


 それでも無理やり学校へ足を運んで保健室へ直行したのも両手両足の指では数え切れない。

 学校側が保健室登校を許してくれたから、小学校も中学校も卒業出来た。高校はそんな経験から逆に他人への期待をあまり持たなかった。疎外されるより先に距離を置いていた。結果として、小学校や中学校よりも通えることが出来た。殆ど期待を持たなかったからか、偶に親切にされると嬉しいという気持ちも感謝の気持ちも持てたが、それ以上踏み込むことはしなかった。いや、踏み込ませることが無かったのかも、しれない。

 そのおかげだろうか。小学校や中学校より高校の方が穏やかな気持ちでもいられた。

 でも、やっぱり寂しい部分があったと自分で分かっている。だから、春香は都内への進学を希望したのだから。

 自分のことを知らない人たちが居るなら、改めて人間関係を築けるかもしれない、という淡い気持ちと共に。今のところ、その淡い気持ちに対する成果は出せていない。

 でも、当たり前なことだけれど、顔を合わせて挨拶を交わす、会釈が出来る、それは春香にとって大きな一歩である。それが中々出来なかった日々と比べればとても大きな一歩。

 同時に、少しだけ身体が強くなったとも思う。

 不調が減ってきた。高校生の頃から熱も出さなくなってきたが、それでも不調はそれなりにあった。卒業する頃から減ってきた。

 つまり、気持ちの変化が身体の変化に繋がった、ということだった。


 大学生活凡そ一ヶ月。

 気持ちが前向きだからか体調はかなり良い。

 体調が良いと気持ちがさらに明るくなる。

 友人と呼べそうな人は居らずとも、焦ることは無いと気持ちが持てる。暗く憂鬱になることも無い。

 一人だけれど、新発売のコンビニスイーツを見つけたときや、気になるコーヒーチェーン店に入ったときに笑みが溢れるようになった。細やかだけど、それもまた春香の変化。


 春香がそんな一ヶ月を送っているからこそ、あの女性がどうして悪いモノをつけてしまう、呼び出してしまうような気持ちになってしまっているのか分からないけれど、残念な気持ちになってしまう。

 見知らぬ人ではあるけれど、心穏やかに健やかに過ごせないことは、残念ではないかしら、と同情してしまう。

 女性が知ったら、もしかしたら大きなお世話かもしれないけれど。


「心穏やかに健やかに過ごせるようになれないのは、残念ですね。私が経験してとても辛かったからこそ、そうなれるといいのに、と思ってしまいます。まぁ見知らぬ人にそんな同情なんて、大きなお世話かもしれないですけど」


 春香が苦笑しつつそんなことを口にする。人によってはマウントと思われるような、傲慢な発言かもしれない、と思いながら。それでも、春香はそんな風に考えていた。


『見知らぬ人、かの。妾の勘じゃが、あの女性、そなたと何か縁があると思うぞ。それゆえに、そなたの前に現れたと言えば良いのか、そなたと共に在った妾の前に現れたと言えば良いのか。以前にもそのようなことがあったのでな。そんな気がするのじゃ』


 春香は見知らぬ人だと思うが、神功皇后はそうとは思っていないような発言をした。これから先、また関わる人だと、思っているらしく春香は、そうなのだろうか、と困惑した。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ