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本話にて、感心と関心の字がありますが、誤字ではなく使い分けてます。

感心……言動に心が動く。動かされる。の意味。

関心……興味を引く。注意を向ける。の意味。

 帰宅して夕食どき。親子丼を囲みつつ春香は急な帰省について話し出した。


「あらぁ……つまり、この家に神功皇后様がいらっしゃる、ということで合ってるかしら?」


 聞き終えた後の短い沈黙後に、母がのんびりとした口調で尋ねる。春香は、うん、そこに、とダイニングテーブルで親子丼を食べながら話していたが、背後を振り返って示す。ダイニングと続きのリビングはテレビが置いてあり、テーブルを挟んで反対側にソファーが置いてある。

 神功皇后はそのソファーの中空で浮いていた。

 その位置を示す春香。両親は見えてないが、それでも娘を信じるようにそちらに向かって頭を下げた。


「そうか。そうだとすると、神功皇后神社に行くことになるか」


 父の当たり前のようなスケジュール確認にも春香は頷く。何一つ疑ってない両親が、春香は嬉しかった。それから春香の大学生活を聞きながら、親子丼を食べ終えた三人。春香の母はいそいそとソファーの方へ向かい、春香に位置を確認してから改めて頭を下げた。


「神功皇后様、実は私の祖母が春香と同じように貴方さまに救われたと聞き及んでおります。なにぶん、一度聞いた話で、その上私が子どもの頃のことでしたからすっかりと忘れていました。ですが、今回は娘を救ってくださったとのこと。誠にありがとう存じます」


 春香は母の言葉に目を丸くして事情を聞く。母曰く祖母、春香の曾祖母もかつて神功皇后に人に見えざるモノと遭遇し助けてもらったことがある、と言った。母が子どもの頃に聞いた話だったから忘れていた、と。神功皇后はほうほう、と頷き聞いていた。


『なるほど。そなたのそのチャンネルの多さとやらは、血筋か。よく血筋にそういう者も現れるの。まぁ条件など様々じゃが。そなたの場合は血筋であったらしいの。血筋は強く出る者と全く出ない者と様々じゃが、まぁ妾と縁のある者の血筋ゆえに、そなたと妾の縁も出来たというわけじゃな』


 感心したように頭を下げる母を見遣りながら、神功皇后は得心がいった、という表情を浮かべた。

 もちろん母の方は声も聞こえない、姿も見えない。だが真摯に礼を述べる母の姿は、神功皇后の関心を得たようで、春香は見えない相手でも居ると信じて、敬うその姿に、無償の愛というものを与えてくれる両親の姿勢を理解した。

 少ししてから戻ってきた母がこっそりと春香に尋ねる。


「神功皇后様は、あの辺りにいらっしゃったのでしょう? きちんとお礼を言ったけれど受け取ってもらえたかしら。失礼ではなかったかしら」


 神功皇后に聞こえないようにこっそり話しているようだけれど。


『うむ、謝意は受け取ったよ』


 完全に聞こえているらしい神功皇后の返事。春香はおかしくなって吐き出す。それから、当たり前じゃないことを当たり前のように受け入れてくれる両親が側に居たから、春香は自身が歪まないでいられるのだろう、と神功皇后に出会ってからそこに気づいた。


「まぁ、春香。なんだか楽しそうね」


 質問しているのに応えない娘を、ちょっぴり睨むように見る母に、春香は「お母さんの内緒話、神功皇后に丸聞こえでね。感謝の心は受け取ったって言ってるよ」と笑いながら伝える。

 母は、聞こえてたの、と少しショックを受けた顔をしながら、でも照れ臭そうな顔で良かった、と笑う。


「母さんのお祖母ちゃんの話は父さんも初めて聞いたが、春香がそういうモノが見えるのは、血筋なんだなぁ。そんで、母さんのお祖母ちゃんを助けてくれただけでなく、春香も助けてくれたのなら、神功皇后様の神社に行ったらよく拝まないとね」


 春香と母のやり取りを見ていた父がのんびりと言うけれど、血筋だと考えついた父は、見えないけれど、そういうことに否定的でないことの証みたいで。

 この人たちが自分の両親であることが、春香は本当に嬉しかった。


「取り敢えず、みんなで行って昼ごはんに瓦そばを食べるか」


「それはいいわねぇ」


 父の提案に母が賛成し春香も頷く。神功皇后も良い良い、と機嫌良く頷いているから明日の予定はそれで決まりだろう。

 寝支度をした春香は、ふと、また気になることがあって部屋の中を見回す神功皇后に尋ねた。


「そういえば、神功皇后、日本全国、あちらこちらに行かれると大変そうですが、あの光が使えないときがある、と仰っておられましたね。魂が疲れるとして、でしたか」


『うむ。使えないというのは要するに力が減って疲れているようなときじゃ。だから妾を祀る社にて、妾の力を補う。その間見回るのは、また別の者がやっておるがの』


 それで今回は疲れたから神社にエネルギー補給に行くわけだ、と思いつつ、春香はサラリと言われたことに固まった。


「見回るのは別の者、とは……」


『そのままの意味じゃ。妾は日の本を見て回り、そなたの言うところの見えないモノ、つまり悪しきモノを祓っておる。使命だと妾が勝手に思っておるが、別に妾だけの使命ではないよ。他にも妾のような存在はおる。誰とは言わぬが、そうじゃなぁ。分かり易く言えば、仕事仲間みたいなものじゃ』


 仕事仲間。

 崇高な使命だと思って聞いていたのに、随分と日常生活な話になった。でも、多分、神功皇后やその他の人にとっては、日常生活なのだろう。と春香は思うことにした。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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