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1度目は落ちこぼれ、2度目は平均、3度目はチートでした。  作者: 八尋
第4章 王立フィオレンツ学園篇入学試験
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第46話 魔術試験と成果

遅くなりました。

 武術試験から数日が経ち、今日は遂に魔術試験当日だ。

 武術試験の日と同じように馬車は途中で降ろしてもらい、同じように受付を済ませ案内された場所へと向かう。

 魔術試験は日数が少ないため、武術試験の時より一日に受ける受験者の数が増える。しかし、試験の時間が決まっており、他の受験者の見学もできないため、殆どの受験者が前日に指示された指定の時間に学園に訪れ、試験が終われば帰宅する。そのため人数も武術試験の日と然程変わらない。

 案内通りに進んで行くと大きめの建物が目の前に現れた。中に入ると長い廊下が続いており、およそ5m間隔で扉が見える。それぞれの扉の前に数人が用意された椅子に座っている。どうやら順番を待っているようだ。

 廊下を進んで案内された扉まで来ると、既に2人の受験生が待機している。2人とも集中しているようで、話しかけるのも迷惑だと思い自分も隣に腰を掛け瞑想を始める。

 暫く経って、隣に座っていた子が扉から出てきた。試験時間はまちまちで今の子が中に入ったのは10分程前だったが、その前の子は20分以上中にいた。

 試験内容は入学試験終了後まで他者へ伝えてはならないため、試験内容は一切わからない。(アドルクス家)の諜報部隊を使えば、事前に知ることは可能かもしれないが、それはどの貴族も同じことが言え、それをしないのが普通、というか常識だ。

 そんな卑怯なことをして、もしも不正が公になれば、家が非難されることは疑いようもない。それ以前に人としてやってはいけない行為だ。

 そんなわけで試験内容を知る受験者はおらず、誰もが平等に受験できるのが魔術試験だ。

 前の受験生が扉から出て少し経つと、扉の上に設置されたランプが青に変わった。これは中に入れという意味だと受付で説明された。逆に赤の時は決して開けてはならないとも言われていた。

 深呼吸をし、扉を開ける。


 「失礼します。」


 中に足を踏み入れ、扉を閉める。正面へと視界を向けると、目の前には明らかに廊下の扉の間隔より、横幅が広い。横は50m程はあるだろうか。奥行きも同じような感じだ。天井もかなり高めで、床も壁もすべて木材で造られているようだ。

 

 「受験番号022の方で間違いはないですか。」

 「はい。」


 中に入るとすぐに若い男性が立っていた。その人物から確認がとられ、受験票を見せる。


 「確認しました。私は今回あなたの魔術試験の評価担当官を務めます、宮廷()()()団のヴァミッツです。では早速、試験について説明します。・・・」


 自己紹介もそこそこにヴァミッツは試験内容について説明し始めた。


 「・・・以上が注意事項です。そして今回のお題ですが...」


 そう。長々と注意事項を話していたヴァミッツだったが、然程重要なことは言っていなかった。肝心なのはここからだ。

 一昨年のテーマは、「攻撃魔法で美しく威力の高いもの」、昨年は「生活魔法をできる限りダメージを与えられる魔法にする」だった。今年はどんなものになるのか...


 「「相手を戦闘不能に至らしめることが可能な魔法」です。生活魔法でも、攻撃魔法でも構いません。」

 「なッ!」


 なんてお題だ。正直こんなお題は想像していなかった。武術試験の試験官と言い、今回の評価担当官と言い、このお題と言い、今回の試験は何か裏事情がありそうだな。

 

 「何か?」


 僕が驚きの声を漏らしたことで評価担当官は、怪訝そうな顔をしながら尋ねてきた。未だ10歳にも満たない子供に、そんな要求をするなんて...

 幾ら死と隣り合わせの世界とはいえ、やりすぎではないか。そう思ったが、声には出さず、取り乱した心を落ち着かせる。


 「いえ、何でもありません。戦闘不能にすることが出来たら良いのですよね。」

 「えぇ。」


 含みのある顔でヴァミッツは頷く。

 「戦闘不能に至らしめる」ということは、別に「殺す」必要はないということだ。気絶や戦闘意欲をなくすことなどができればそれで良い。


 「では準備を始めてください。準備が整い次第、あの的に目掛けて放ってください。」


 そう言うとヴァミッツは扉の方へと下がって行く。

 注意事項では、魔法道具を利用した魔法発動は禁止ということだったので、攻撃魔法等が付与されたものは勿論、威力増強や補助的役割を果たす杖なども使用は良くないのだろう。

 僕の場合は、元から杖を使ったこともないし、その点は問題ない。

 この部屋は外から見るのとは比べ物にならない程に広い。恐らく馬車と同じような空間拡張系の魔法が付与されているのだろう。恐らく強化の魔法や防火の魔法等も。

 なら多少、大きめの炎や強めの火焔が出ても問題はないだろう。

 そう結論に至った僕は、精神を落ち着かせ数十m先にある的に向かって魔法を放つ。


 「〘火焔球(フレイムボール)〙」


 僕の手のひらから放たれた炎の球は数秒後、人型の的に当たり、少しその胴体部分を焦がし消える。こちらに少し焦げた臭いが届いた頃、評価担当官が声を発する。


 「成程。この距離で届きますか。別に前に移動してもらっても構わなかったのですが。八段魔法、なかなかの腕前ですね。もう一度、今度は10m程前に出たところから可能ならば別の魔法を放ってください。」

 「わかりました。」


 前に出て良いのかよ。少し遠いからこの魔法にしたけど、前に出て良いならあっちの魔法の方が威力は高いはずだ。

 僕はさっき魔法を放った場所から言われた通り、10m程前に進み次の魔法を繰り出す。


 「〘猛炎(ストロングフレイム)〙」


 先程とは違い、距離が短くなり、射程距離の短めな高威力の炎が的を燃やす。数秒後、先程よりも黒い部分が目立つようになった的から、焦げ臭い臭いが部屋に充満し始めたところで、評価担当官が口を開いた。

 

 「七段魔法、どうやら君はかなり優秀なようだ。無詠唱の上、距離に応じて臨機応変に魔法を変更し、対応できる。どちらの魔法も相手に深手を負わせ、戦闘不能にする威力はある。将来が期待できそうですね。以上で魔術試験は終了です。お疲れさまでした。次の学術試験も頑張ってください。」

 「ありがとうございました。失礼します。」


 そう言うと、僕は扉へと向かう。その途中、部屋が普通のサイズ、3,4m幅程の小さな部屋へと戻った。どうやら永続的な空間拡張ではないようだ。

 一切装飾品や調度品のなかった大部屋も、小部屋に戻ると余計にその寂しさが際立つ。

 部屋を出ると、部屋に入る前に次の順番を待っていた受験生と目が合った。軽く会釈をして、学園を後にする。

 今日も武術試験の日と同じく、学園内の立ち入り禁止区域以外の散策は自由だ。そのため、あまり試験の結果が芳しくなかった者など、学園内の許可された場所などを見学して帰る者も多いようだ。

 僕は試験結果には満足しているし、今立ち入りが許可されている場所で気になる場所は然程ないので、そのまま学園を出る。

 少し歩いて行くと、乗ってきた馬車が停まっていた。僕が馬車へと近づくと、御者がすぐに気づき御者台から降り、一切の無駄のない動きで扉を開け、踏み台を用意する。こちらを待たせることなく、馬車へと導く。一流の執事の証だ。

 そんな完璧な執事に僕は馬車に乗り込みながら、一言声を掛ける。


 「先に帰ってても良いって言ったのに。」


 その声掛けに「お帰りなさいませ」などと、おなかに左手を当て、右手を後ろに、腰を曲げ、丁寧に出迎えをしながら答えるのは、母を王都に連れてくるとき、御者をしていたイエイツだ。


 「いえ、そういうわけにも参りません。ライル様は目を離すとすぐにどこかへ行ってしまわれます。我々使用人は勿論のこと、奥様もご心配の様子。せめてこの試験期間中の移動の際だけでも、と奥様が仰っておられましたので。」

 「母さんが言っていたなら仕方ないけど、屋敷もすぐそこなのに...」


 ほんの十数分のために馬車を使うなんて面倒くさいと考えているライルは、しぶしぶ馬車へと乗り込む。

 扉が閉まり、馬車が進み始める。殆ど揺れを感じず、普通に歩くよりは早く着くので、楽と言えば楽なのだが、やはりこんな短い道のりで、こんなにも豪華な馬車を使うのにはむずがゆさを感じる。

 馬車から見える王都の街の風景は普段より子供が多い。高級街よりの位置に存在する学園から屋敷を目指すと、辺りは静かで落ち着いたものだ。それでも、今日が試験ということもあって、いつも以上に貴族の馬車と何度もすれ違っている。

 やがて屋敷へと到着する。キーナが試験の手ごたえを聞いてくるが、軽くあしらい部屋へと戻る。

 数日後には最後の入学試験。学術試験が控えている。机に向かい、気合を入れ直した僕は、最後の関門に向けての勉強を始めた。

本作品の改稿版を8月1日より1日1話更新予定です。


それに伴い、誠に勝手ながらこちらでは次話で完結とさせていただきます。

学園入学試験篇以降も改稿版の方で投稿したいと思っています。


改稿版「三度目の人生を満喫したい」ご覧いただければ幸いです。

(ある程度加筆しているので多少内容が異なっています。)


また、「冒険者は副業です」という新作を7月31日に投稿しました。

こちらは、月1(毎月末)で更新します。


更新時にはTwitterの方でお知らせしたいと思っております。

 Twitter:@Yahiro123narou


ご迷惑をおかけしますが、今後ともよろしくお願いいたします。

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