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1度目は落ちこぼれ、2度目は平均、3度目はチートでした。  作者: 八尋
第4章 王立フィオレンツ学園篇入学試験
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第47話 学術試験と始まり

大変遅くなり、申し訳ございませんでした。

 武術試験、魔術試験共に手ごたえを感じる結果で終えられたライルは、遂に最終関門の学術試験の会場へと向かっていた。

 今日は総合科入学試験最終日、学術試験の本番当日だ。

 武術試験、魔術試験と異なり、学術試験は受験生全員が一斉に受験する。しかし、人数が多いため、全員が同じ場所でと言うわけにはいかない。

 受付で説明された各会場へ向かうのが常だ。受験番号順に会場が割り当てられており、僕は第一会場の教室へと向かっている。

 他の会場も教室のところが多く、やはり初めから机と椅子がある場所の方が準備に手間がかからないのだろう。前世の講義室のような段々の造りの部屋に、受験番号の記された長机と椅子が用意されている。

 僕が席に着くころには既に半分程の席が埋まろうとしていた。

 その中に見覚えのある顔を見つける。


 「やあ、アルフ。久しぶりだね。」

 

 僕の声に反応した少年は、こちらに顔を向けると初めて会った時と同じような笑みを浮かべ、元気に返事をしてきた。


 「おぉ、ライル。久しぶり。元気そうで何より。武術と魔法の試験に自信があったのか?」

 「んー。まぁ、ぼちぼちかな。」

 「何だよそれ、僕は武術試験の方は力を出し切れたけど、魔法はあんまり自信ないや。」

 「アルフは学術試験には自信あるのか?」

 

 僕がそう質問すると、アルフは不安さを滲みだしたような顔でこちらを見てくる。


 「実は、計算には自信があるんだけど、歴史とかは苦手で...」

 「そうなのか。でも武術試験で結果が出せたなら、そんなに気を重くする必要はないんじゃないか。」

 「そうだね。ライルと会うとなんだか緊張がほぐれるよ。前もそうだったし。ありがとう。」

 「僕もアルフと喋ったことでリラックスできたよ。お互い最後の試験頑張ろう。」

 「あぁ、二人で合格しような。」


 そう短いやり取りで済ませ、僕たちはお互いの健闘を祈った。

 自分の席に着き、持ってきた本で最後の確認をする。

 暫くして、数人の試験官が入ってきた。全員が着席しているのを確認し、一人が声を上げる。

 

 「遅刻者、欠席者がいなくて何より。今から問題冊子を配布する。開始の合図があるまで決して開かぬように。」


 そう言い終わると、試験官が「後ろに回せ」と言いながら、最前列の受験生に冊子を配布して行く。

 全員に行き渡ったのを確認し、またも試験官が教壇から声を上げる。


 「では、注意事項を読み上げる。手元の冊子の表紙を見ながら聞くように。解答は全て冊子の中に挟まれている解答用紙に記入するように。その時、受験番号を必ず記入するように。問題は全部で五分野ある。時間が限られているので、得意な分野から解いて行くことを勧める。試験中に何か用があれば、手を挙げて我々監督者に知らせるように。魔法、スキルに関しては表紙に記載されているもの以外の使用は禁止だ。試験時間は100分、時間内に解き終わっても退出は原則認められない。終了の合図で手を止めなさい。不正行為が発覚した場合は、他の試験の結果に関係なく不合格とする。問題冊子は試験終了後、持ち帰って構わない。何か質問はあるか。」


 試験監督からの質問に誰も手を挙げることはなかった。

 部屋は誰もいないかのように静まり返り、それがまた緊張感を高まらせる。


 「ではそろそろ所定の時間となる...始めッ」


 試験監督の合図で受験生の全員が紙をめくる。一人一人の音は小さなものだが、それが何十人分も重なると騒音となる。

 だけど僕はこの音は嫌いじゃない。緊張から初めの文章がなかなか頭に入ってこない。答えを書こうにも手が震えていつも通りに書けずに苦労する。

 そんな時間の幕開けの嫌な音、前世の定期考査を思い出させる。懐かしい思い出に友人たちのことを思い出すが、今はそれどころではない。本当ならこの回想に浸りたいところだが、試験に集中しなければ。


『分野:算学 

  1.以下の問いに答えなさい。

   1)馬車で5日の道のりをある月の5日に出発し、途中1日休息日を挟んだ時の到着日は何日か。

   2)銅貨2枚と青銅貨3枚の品物を銀貨1枚で購入した場合、おつりは幾らか。

   ・・・・・』


 計算問題としては珍しくもないが、これは一般常識も理解していないと解けないような問題も多く含まれているらしい。しかし、入学前の子供にここまでの計算能力を求めるとは。流石は名門校だけはあるな。

 まあ、前世の数学と比べるとかなり簡単だし、ミスさえなければ問題ないだろう。


『分野:地理・歴史

  1.以下の問いに答えなさい。

   1)世界七大魔境の内、エイヴィスティン王国内に存在する2つは何と何か。

   2)大陸間大戦争で滅んだ魔族の王は誰か。

   ・・・・・』


 まぁ、これもそれほど難しい問題ではないが、入学前からこの知識を持っていることを前提としていては、授業では何を教えるのか...

 その後もライルは特に苦戦することなく、解き進め、時間を余らせて解き終わった。

 見直しも終わったし、幾つかの記述問題に不安は残るが、知っていることは書ききった。

 早めに試験が終わった時、前世では寝てる奴もいたが、見た感じそんな者はこの場にはいない。みんな真面目に集中して問題に取り組んでいるようだ。

 ここで机に伏せるのは何だか気が引ける。それに、あまりそういった態度を人に見られるのは良くない気かがする。立場的に。

 仕方なく、ライルは問題をまた1から見直すことにした。

 そして、ライルにとっては長く、多くの者にとっては短い100分の終わりが訪れた。


 「やめッ。これ以降は回答を記入することも、問題を見ることも禁止だ。すぐに手を置くように。解答用紙を回収する。その場で待機していなさい。」


 後ろから試験官が解答用紙を回収しに回ってくる。何事もなく回収が終了し、試験監督が出て行った。

 安堵のため息を漏らす者、落胆している者、周りの受験生と答えを確認し合う者、そんな何度も見た光景からまた前世を思い出す。

 しかし、また回想に耽る前にその声に遮られる。


 「お疲れ、ライル。どうだった?」

 「結構できたよ。アルフは?」

 「僕はちょっと自信ないなー。魔法の分野も全然解けなかったし。」

 「そうか。でもきっと大丈夫だ。計算はできたんだろ。」

 「うん。多分大丈夫だと思う。」

 「まぁ、終わったことはどうしようもないし、気に病んでも仕方ないよ。」

 「そうだね。」


 アルフはそう言いながらも、不安を払拭しきれていないようだった。

 二人は学園の門で別れ、それぞれの家へと帰った。


 ・・・・・

 ・・・・・

 ・・・・・


 あれから五日が経ち、合格発表の日。今日は一段と多くの人が学園に集まっていた。

 それもそのはず、全学科の合格発表が行われるため、全学科の受験生、その保護者というかなりの人数がここに訪れることになる。

 保護者といっても、親ではなく代理の者が来る場合が多い。休みをとれない、騒ぎになる、学園と家の距離が離れている等理由は様々だ。

 僕はイエイツに来てもらっている。貴族というのがバレたら面倒かと思い、イエイツには執事服ではなく、私服で来てもらっている。

 合格者の発表はそれぞれの学科ごとに場所が割り当てられている。訪問者が多過ぎるため、要らぬ騒動を未然に防ぐことも理由の一つだ。

 総合科の場所へと辿り着いた僕とイエイツは、発表が行われるのを待つ。既に大勢の受験生がその時を今か今かと待っている。

 そして遂にその時が来た。教員と思われる人々が現れる。その場に緊張が走る。誰かが大きく息を呑む音が聞こえる。もしかしたらそれは自分のものだったのかもしれない。

 合掌し神に拝む者、御守りを更に強く握りしめる者、他の者と楽しそうにまたは不安気に喋っている者、そんな様々な待ち方をしていた者達、全ての視線が一点を向く。

 バサッという音と共に幾つもの数字が現れる。

 それをこの場の全員が凝視し、自分の手にある受験票と見比べる。

 そして歓喜する者と落胆する者の二種類に分かれた。大声で合格を喜ぶ者、嬉しさのあまり泣き崩れる者、逆に不合格と知り叫喚する者、悔しさから涙を流す者、その場にいる多くが三者三様に喜怒哀楽を表す。

 そんな中、ライルも自身の受験番号を見つける。


 「おめでとうございます。ライル様。」


 イエイツの言葉にライルも嬉しさを顔に滲ませる。


 「ありがとう。イエイツ。これで胸を張って皆に報告できる。」

 

 僕がイエイツと話していると、後ろから声を掛けられた。


 「やあ!ライル。どうだった?」

 

 声を掛けてきたのは嬉しさを隠しきれていないアルファードだった。


 「合格してたよ。その様子だとアルフも?」

 「あぁ、本当に嬉しいよ。帰ったら母さんに報告しないと。」

 「お母さん来てないのか?」

 「うん。来たがってたんだけどね。仕事は休めないって。」

 「そうか。でも二人とも合格出来て良かったな。今度合格祝いにどこかで食事でもする?」

 「良いね。空いてる日を確認しておくよ。じゃあ、僕はすぐに母さんに伝えたいからそろそろ帰るよ。」

 「あぁ、許可証受け取るの忘れずにな。」

 「もちろん」


 そう言うとアルフは入学許可証を受け取りに行った。アルフを見送っていると、見覚えのある人物を見つけた。

 

 「アレーナ」


 僕の声に反応し少女がこちらに振り向く。


 「あら、ライル様。」

 「アレーナも合格だった?」

 「はい。少し不安だったのですが、合格出来て良かったです。」

 

 その答えに僕はホッとする。アレーナは合格してるだろうと思い声を掛けたが、万が一落ちていたらどう対応するのが適切なのかわからなかった。

 アレーナも合格だったってことは、あと僕の知り合いで結果が分からないのはマリーナか。まあ、彼女のことだから絶対合格してるだろうけど。


 「おめでとう。一緒のクラスだと良いな。」

 「はい。ライル様と同じクラスだと学園生活がより楽しめそうです。」


 その後も少し話してからアルフと同じように入学許可証を取りに行った。馬車が違うので学園でアレーナとは別れた。

 屋敷に帰ると皆に合格したことを報告すると、皆「当然です」というような雰囲気を醸し出しながらも喜んでくれていた。中でも母さんが一番で伝えた途端に僕を抱きしめてくれた。少し涙を滲ませながら自分の事のように喜ぶ母を見て、この人の子に生まれて良かったと改めて思えた。

 入学試験は合格した。でもこの学園は普通の学園ではない。すべてがポイントで決まる。ここで安心していてはついていけなくなるだろう。

 慢心することなく、これまで以上に努力しないと。

 そう僕は固く決意した。数時間後、マリーナも合格だったと知らせが入った。

 今日は夜に合格祝いをするらしい。父さんとエリス、それに向こうの使用人の皆はいないが、盛大に祝ってくれるそうなので、今日くらいは羽目を外す一歩手前くらいまで楽しもうと思っている。

 来月からは学園生活が始まる。新しい生活に不安はあるが、それ以上に楽しみだ。あの二人と同じクラスだったら良いな。

 

 ライルの新たな生活の幕開けまであと少し。彼を取り巻く環境はこれから大きく変わって行く。新たな出会い、多くの楽しみが彼を待っている。逆に悲しき別れ、幾つもの苦難も待ち受けている。

 

 彼は三度目の人生を謳歌することができるのだろうか。

 

 彼の物語はまだ始まったばかりだ。

ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました。

誠に勝手ながらこちらでの更新はこの話をもって終了とさせていただきます。

詳細については活動報告をご覧ください。

学園篇の続きは以下の改稿版にて更新します。


改稿版「三度目の人生を満喫したい」

https://ncode.syosetu.com/n1035gj/


今後の更新は今まで同様Twitterの方でご報告させていただきます。

   Twitter:@Yahiro123narou


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