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1度目は落ちこぼれ、2度目は平均、3度目はチートでした。  作者: 八尋
第4章 王立フィオレンツ学園篇入学試験
44/47

第44話 細剣少女とゼッセローニ商会

少し遅くなりました。申し訳ございません。

今年ラストの更新です。

 

 「始めッ」


 自分の武術試験を終え、観覧席で次の受験者の試験を見学しながら、一息ついているとライルの方へとポニーテールの少女が向かって歩いてきた。少女の腰にはゼンバールと熱戦を繰り広げた細剣と短剣が見える。

 

 「失礼します。お隣よろしいでしょうか。」


 受験番号018の少女がライルへと問いかける。その声は試験の際の張りつめたような緊張している声とは違い、まだまだ幼さの残る少女の可愛らしい声だった。


 「ええ、構いませんよ。どうぞ。」

 「ありがとうございます。」


 少女はライルの承諾を得ると隣の席へと腰掛ける。その仕草の一つ一つが洗練されており、かなり良いところの出だという雰囲気を感じさせる。先程の試験の際、盛大に吹き飛ばされ、砂埃を被っていたはずだが、彼女が身に纏っている衣服に汚れはなく、その点からも彼女の性格が表れていた。

 

 「.....」

 「.....」


 少女が腰を掛けてから十数秒、沈黙の時間が流れる。

 ライルは隣に座ってもらったは良いものの、初対面であるため、何を話せばよいのかわからない。

 普通、この位の年の子供であれば、話題など考えなくても持ち前の無邪気さで会話や遊びに発展させることができるだろう。

 しかし、ライルは精神年齢的にはもうそこそこな年齢であり、その上、この世界に生まれてからは貴族の嫡男として生活してきたため、発言には気を付けなければいけない立場であった。その為色々と考え込んでしまう。

 一方少女の方も、先程のライルの戦闘を見て感銘を受け、隣に腰掛けたは良いものの、同年代の男子どころか、女子とも今まで碌に関わってこなかったため、どう話を切り出せば良いのか思い付かずにいた。

 そんな沈黙に耐え兼ね、先に口を開いたのはライルであった。


 「私の名前はライルです。何か御用があっていらっしゃったのでは。えっと...」

 「あっ、失礼致しました。私の名前はアレーナ。アレーナ・ロイネス・ゼッセローニです。先程の試合のことで幾つかお尋ねしたくて。」

 「ゼッセローニ子爵家の方でしたか。道理でお強いわけですね。」


 ゼッセローニ子爵家。エイヴィスティン王国四大貴族商会の一角。

 マリッタさんのモルチーダ商会が飲食料品、キリーナスさんのメレテナール商会が家具・インテリア、オッテンヤー商会が衣類や装身具、そしてゼッセローニ商会は武具を主として販売している。

 それぞれが違う分野を商会の商品、利益の大半を占めているため、この貴族商会内での競争は然程なく、大きな問題が起こったことは一度もない。寧ろ商会同士仲が良いくらいだ。

 少女改めアレーナの家、ゼッセローニ商会の武具は非常に人気があり、貴族のみならず少しお金に余裕のある者ならば、一つはこの商会の武具を持っていると言っても過言ではない。

 エイヴィスティン王国内に数多、存在する武具を取り扱う商会、商店の人気店は基本的にドワーフが営むものが多い。しかし、ゼッセローニ商会は人族が営む中では断トツ、更にドワーフの有名店にも劣らないほどの人気を誇る。

 誰しも店を開くとき、普通は自身の得意分野を売りにするものを営むだろう。大きな商会もまた同じだ。特に、武具という特殊なものを販売する店の家系が武器の扱いが下手、ということは考え辛い。

 基本的に武具、特に武器を製造、販売する商会ではそこの店主や従業員は、武器の扱いが普通のそれを凌ぐ。ゼッセローニ商会のような巨大商会ともなれば尚更だ。

 ゼッセローニ商会の商会長は子爵家現当主の息子が務めているはず。その人物は数々の大会で名を残すほどの腕利きと聞く。ならば、その娘ではなくともその親族であることは間違いない。それならばあの強さも納得がいく。

 そんなことを考えていた所為か、注意が疎かになっていたことにあれアレーナの言葉で気が付いた。

 

 「やはりアドルクス公爵家のライル様でしたか。お噂はかねがね伺っております。」

 「そうでしたか。」


 そう答えることしかできなかった。ここで嘘をつくことも可能だが、合格すればこれから同級生になるわけですぐに嘘だとバレてしまうだろうし、あのこともある。そもそも完全に特定されてしまっているようなのでどうしようもないだろう。

 

 「失礼ながら、お強いというお話は聞き及んでおりましたが、予想より遥かに高い実力をお持ちの様で心打たれました。あの剣はお使いになられていないところを見ると、ご身分を隠されているのですか。」

 「どのような噂を聞いたのかは後々聞くとして、あの剣とは何のことでしょうか。」

 

 ライルが聞き覚えのない話を持ち出され聞き返すと、それに心底驚いた表情でアレーナが首を傾げる。

 

 「えぇっと、公爵様よりお聞きになられていないのですか。アドルクス様宛てにヒヒイロカネ製の魔剣を当商会がご用意させて頂いたはずなのですが。」

 

 それを聞きライルは思い至る。例の魔剣だ。出発前に父から受け取り、夫人達を助けた際に使用したあの剣のことだと。


 「あぁ、あの剣はゼッセローニ商会の作でしたか。道理で使いやすいわけですね。大変重宝しております。」

 「それは光栄です。父も喜びます。」

 「もしかして商会長殿が?」

 「はい。商会長である父自身が鍛えたものです。ところで何故私のような者に対してそのようなお言葉遣いなのですか?」

 「うーん、まぁ何というか癖だね。こっちの方が良いならこうするけど。」

 「はい。そうしていただいた方が落ち着きます。」

 「アレーナさんも別に楽に話してくれて良いよ。」

 「いえ、そういうわけには参りません。それに私如きにさん付けなど...どうぞ呼び捨てでお呼びください。」

 「あっ、そう?ならアレーナ、そろそろ僕に聞きたいっていうことを聞いても良いかな?」

 「あッ、申し訳ございません。そうでした。先程の試合でアドルクス様がお使いになられていた技のことなのですが。」

 「ライルで良いよ。えっと、技ってどれのことを言っているのかな?初めの?それとも後の?」

 「えぇっと、〘火球(ファイアーボール)〙の前の一閃です。いきなりスピードが、というよりも全ての能力が跳ね上がったように感じた後の。」

 「ああ、[紫電一閃]のことかな。というか能力が上がったように感じたっていうのは?」


 まさか受験生の中に【制御(コントロール)腕輪(ブレスレット)】の解放に気がつく者がいたとは。試験官にはバレる覚悟で解放したが、アレーナは相当の実力者だな。父親譲りか。


 「気のせいだったのかもしれないのですが、アド...ライル様のMPやその他が非常に上がったように感じたんです。」

 「そうか。まぁ、そのことは気のせいということにしておいて。」

 「はい。わかりました。」


 アレーナは納得はしていないようだが、何も言うことなく了解してくれた。まあ身分の違いのことも関係しているんだろうけど、良い子であることは間違いないだろう。


 「それで、[紫電一閃]のことだっけ。あれは家にあった本に載っていたものを真似しただけだよ。」

 「えッ、神速流の技を独学であの完成度になさったんですか。凄すぎます。」

 「そう?ありがとう。」


 アレーナは心の底から驚いた表情で、その眼からは敬意すら感じられる。どうやら本気で驚いたらしい。


 「というか、よく知っていたね。神速流のこと。」

 「えぇ、父が幾つか技を使えるので。流石にア...ライル様のような極伝の技までは無理でしょうが。」

 「それでも王宮騎士団団長殿には届かなかったけどね。それと名前で呼ぶのに抵抗があるなら無理しなくて良いよ。」

 「いえ、抵抗はないのですが、このように年の近い方と関わる機会が少なかったので...不慣れで申し訳ございません。」

 「そうなんだ。僕もあんまり同い年の子と会わなかったから気持ちはわかるよ。気にしないで。」

 「ありがとうございます。」

 「アレーナの試合も凄かったね。この年であれだけ戦える人初めて見たよ。」

 「ありがとうございます。父に幼い頃から鍛えられていましたから。そのおかげで王宮騎士団団長様にもお褒め頂けましたし。恥ずかしながら昔は嫌々だったのですが、今は鍛錬が楽しくなって来ていて。」

 「恥じることはないよ。あの強さは今までアレーナがしてきた努力の結果だし、寧ろ誇ることだよ。」

 「そう言ってもらえると嬉しいです。」


 アレーナは女の子だし、戦闘よりも他の女の子らしいことがやりたかったのかもしれないけど、あの強さは本物だ。彼女の本気の努力がしっかりと現れている。

 今までしてきた苦労は決して無駄ではなかったことを、王宮騎士団団長に認めてもらえたことで、彼女もわかったのだろう。

 その後も二人は他の受験者の試合を見学しながら色々と話し、最初は少しぎこちなかったが、すっかり打ち解けたようだった。


・・・・・

・・・・・

・・・・・

 

 二人の話が一段落ついたのは、最後の受験者が戦闘を終える頃だった。

あっという間に2019年が終わりました。

今日は大晦日なわけですが、皆さんは今年はどのような年でしたか。

私は例年通りの年でした。

来年はもっと更新頻度を上げたいですが、事情がありちょっと難しいかもしれません。

来年は東京オリンピックが開催されるようですが、私は一切興味がありません。

アニメとかの方がよっぽど熱くなれる自信があります。

そんな私ですが、これからもこの作品をお読みいただければ嬉しいです。

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