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1度目は落ちこぼれ、2度目は平均、3度目はチートでした。  作者: 八尋
第4章 王立フィオレンツ学園篇入学試験
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第41話 試験開始と細剣少女

遅くなりました。すいません。

 ハーニス担当官の一声で始まった武術試験第1試合。通常の模擬戦闘(イミテーションバトル)と異なり、戦闘力が違いすぎるため、受験生は試験官ゼンバールを殺す気でかかる。

 しかし、エイヴィスティン王国王営機関の中でもトップクラスの実力者と、未だ学園入学前の子供では差があり過ぎる。対格差もさることながら、乗り越えてきた経験が段違いだ。

 受験番号015の少年が「始め」の合図とともに踏み出したのと違い、ゼンバールは一切動こうとしない。

 少年が剣を構えゼンバールへと突進する。子供の割には速いのかもしれないが、それでもまだまだスピードが足りない。

 突進した勢いを乗せた一振りをゼンバール目掛けて振りかざすが、ゼンバールは一切動じず、自身の剣で弾き返す。幾ら子供だからといっても、ある程度の重量があり、そこに突進により加速した勢いも加わっているにもかかわらず、受け流すのではなく、真正面からその一太刀を受け止め、少年ごと後方へ飛ばした。

 恐らく自身の全速力であったのだろう。弾き返された少年はそのまま吹き飛び、白線の近くまで転がった。ゼンバールは受験生が怪我をしないように手加減している。それでも、余裕の笑みを浮かべている。


 「その程度なのか、少年よ。それでは、()()では生き残っていけないぞ。」


 ゼンバールが倒れこんだ少年を挑発する。ゼンバールの言う「ここ」のことが学園のことなのか、はたまた別のどこかを指しているのかはわからないが、この程度の挑発に乗っていては戦場で痛い目を見ることは目に見えている。

 しかし、幾らエイヴィスティン王国のトップクラスの学園といっても、たかが入学試験だ。まだ碌に戦闘技術も学べていない子供に、このような高い要求をするだろうか。

 そもそも、王宮騎士団のような普段は王宮を守護する者達の長が、このような場所に来ること自体異常ではないか。

 そう言えばさっき団長が、今年の試験は今までと違う、とか何とか言っていたような。勿論王宮騎士団の団長が出てくるようなことは今までにはなかっただろう。一体何故。

 ライルがそんな思案を巡らせている内に、少年は立ち上がり体勢を立て直す。ゼンバールからは攻撃はしないようで、ずっと同じ場所で立ったままだ。再び戦闘準備が整った少年が口を開く。


 「もう一回行きます。風よ、我が元に集いて風を成し、我が歩みの力となれ 四段魔法〘速度上昇(スピードインクリース)〙」


 少年が風魔法を利用し、自身の突撃スピードを上げる。先程の2倍は速度が出ているだろうか。しかしまだ遅い。ゼンバールはまたも正面から弾き返す。

 少年もこれは予想外だったようで、驚きと悔しさが混ざったような表情で同じ位置へと転がって行く。

 先程よりスピードが増したにもかかわらず、同じ場所に転がったのは、ゼンバールが仕組んだことなのだろうか。それとも偶然か。

 

 「今のはなかなか速かった。しかし、それでもまだ足りんな。」


 ゼンバールからまた挑発を受けた少年は、しかし今度は諦めた顔になり、口を開く。


 「参りました。降参します。」


 少年の一言でその試合が終了した。ゼンバールも他の評価担当官も極わずかに興ざめた顔になる。しかし、すぐに元の顔へと戻り、次の試合へと移った。

 次の試合も、その次の試合も、同じようなものだった。ゼンバールに一切歯が立たない受験生はすぐに降参した。その度に評価担当官たちの顔が歪んでいるのだが、それに気づくものはライルを除いて受験生の中にはいないようだった。

 

 「次、受験番号018、位置につけ。」

 

 ハーニス担当官の声で受験番号018番の少女がゼンバールの前へと歩み出る。長い髪を後ろで纏めて垂らしている至って普通のポニーテールだが、黄緑色の髪は毛先にかけてだんだん薄くなっている、とても綺麗なグラデーションカラーだ。

 腰に下げた細剣は、装飾も殆ど見られず、簡素なものだ。しかし、魔法が付与されているようで、どんな魔法が付与されているのかは〖鑑定〗してみないことにはわからないが、値が張るのは確かだ。

 彼女は細剣の他に一本、短剣を携えているが、恐らくは補助武器マンゴーシュの類だろう。

 少女が右手に細剣、左手に短剣を構えると、ハーニス担当官が号令をかける。


 「では、始め」


 その声と共に仕掛けたのは、勿論少女の方である。ゼンバールは前の三戦と変わらず、その場を動こうともしない。そのまま突進して刺突での攻撃を繰り出すのかと、ここにいる大勢の受験生が考えたが、少女は試合スペースの円の白線ぎりぎりを回転し始めた。

 そのスピードは次第に速くなっていく。詠唱は聞こえないが、どうやら加速系の魔法をかけているようだ。数秒の後、その速さはもはや残像すら見えるほどにまでなる。

 そして、少女の姿が消えた、ように見えた。先程まで分身でもしているのかとまで思わせるほどの速さで回っていた少女は、ここにいる殆どの者が視認できない速さでゼンバールに背後から仕掛ける。

 凄まじい速度で繰り出される刺突は、回避することは不可能かのように思われたが、ゼンバールは背後からの攻撃にもかかわらず、身体の数ミリ前で少女の細剣を弾く。

 攻撃を予想したのか、動きを全て見切っていたのか、攻撃が来ると考えていなければ、確実に攻撃は通っていただろう。

 少女が右手を突き出し、その手に握る細剣がゼンバールを突き刺した、と勘違いするほどまでに、ギリギリでの防御だった。しかし、そこからのゼンバールの動きは実に速かった。

 目にも止まらず速さで180度身体を反転し、少女の細剣を弾き返したかと思えば、その弾き返した振りから、そのまま反撃に利用する。

 少女は攻撃を弾かれ、何とか細剣を手放すことはなかったが、とてもゼンバールの攻撃を受け止められるような位置に右手はない。

 そこで少女は左手に持っていた短剣で、咄嗟にゼンバールの攻撃を受け流す。が、全てを受け流しきることはできず、バランスを崩してしまう。

 そんな隙をゼンバールの2度目の攻撃が襲う。今度は先程とは違い、しっかりと握られたゼンバールの長剣が、少女を吹き飛ばす。

 無論、手加減はされているので致命傷に放っていないだろうが、刃引きが施されているとはいえ、多少は傷を負っているだろう。

 しかし、少女はすぐに立つ。しかし、ダメージは深刻なようで、すぐに倒れこんでしまった。


 「そ、そこまで。」

 

 ハーニス担当官の少し焦った声で、第4試合の幕が下ろされた。途端に受験生たちが騒めき始めた。


 「なぁ、今のあの子の動き見えたか?」

 「いや、全然。くるくる動き回ってると思ったらいきなり消えたもんな。」

 「ていうか、あの回っている時、分身でもしてたのかっていうくらい残像が見えたんだけど、どのくらいの速さで動いたらあんな風に見えるんだ。」

 「さっきから倒れてるけど、あの子大丈夫なのかな?」


 試合中に少女が見せた10歳にも満たない子供が、目にもとまらぬ速さで繰り出した攻撃に対しての驚きの声や、先程から倒れて動かない少女を心配する声などが聞こえてくる。

 担当官3人と、ゼンバールが少女の意識を確認していると、少女が目を開く。


 「あれ、私...」

 「良かった。どこか痛いところはない?」

 「えっと、はい。特に問題はないみたいです。」

 「そう、良かったわ。」


 気が付いた少女に優しく声を掛けるセスレナは、かなり少女を心配していたようだ。痛むところがないことを聞いて、ホッと胸をなでおろす。

 他の担当官2人も試験開始前の偉そうな雰囲気はなく、安心した様子で、本気で心配していたことが見て取れた。

 少女がこのような状態になってしまった原因を作ったゼンバールも、少女の無事を確認して安堵しているようだ。


 「すまないな。君が想像以上に速い動きで攻撃してきたものだから、つい反射的に反撃してしまった。本当はこの試験中、私からの攻撃はしないつもりだったのだがな。」


 確かにゼンバールは、先の3試合では防御のみで、自分から攻撃はしていなかった。しかし、この少女には反撃をした。つまり、それだけの強さがこの少女にあるということだ。

 

 「いえ、噂に名高い王宮騎士団の団長様に、反撃をさせるだけの攻撃ができて、大変嬉しく思います。」

 「ああ、君の動きは素晴らしかった。速さもそうだが、死角からの一撃は誰でも思いつく初歩的なことだが、あれだけの速さで動き回っていながら、正確に私に突きに来るとは見事。それに防御も一朝一夕で身につくものではなかった。余程努力をしてきたのだろう。是非我が騎士団に欲しい人材だ。」


 ゼンバールの最後の一言で、試験会場が騒めく。王宮騎士団の団長クラスからのスカウトともとれるその言葉の重みは計り知れない。

 国の重鎮である人物からのその言葉に、少女自身も大変驚いた様子だ。しかし、すぐに落ち着きを取り戻し、ゼンバールに向かって口を開く。


 「そのお言葉、大変ありがたいですが、私はまだまだ未熟者です。この学園に入学できた暁には、精一杯努力する所存です。それこそ団長様に一撃でも与えられるほどに。その時にまた、一戦お願いできますでしょうか。」

 「言うではないか。良いだろう。その時に私がまだ今の地位であったなら、我が騎士団に向かい入れよう。」


 少女の言を受け、ゼンバールが次ははっきりと口にした騎士団への誘いは、この場にいる全員が耳にした。そして歓声が上がる。王宮騎士団第三団体団長による直々の勧誘は、事実上、将来を約束されたようなものである。

 かなりの実力者であるゼンバールに、これほどまで言わせた彼女が、学園を不合格になるとは思えない。そして、彼女には伸び代もある。学園卒業までには、確実にゼンバールに攻撃を食らわすことも可能となる実力を身につけるだろう。

 彼女の胸の内はわからないが、彼女が将来大物になるのは間違いない。既に彼女の周りに、受験生の殆どが集まっている。優秀な者とコミュニケーションを図ることは不利益になることはない。

 ここに集まっている者はそれを理解して、彼女に寄り集まっている。彼女はこれからかなりの苦労をすることになるだろうが、あれだけの実力があれば乗り越えられるだろう。

 

 「静粛に、次の試合を始めます。受験番号019、準備を。他の者は速やかに試合スペースから離れなさい。」


 ハーニス担当官の声で集団が解散される。一人の少年を残し、他の者は観戦席へと戻る。そして入学試験は再開する。

また、ライルの試験まで進みませんでした。

昨日更新しようと思っていたのですが、睡魔に負けました。

ハロウィンネタとかしたいのはやまやまですが、本作は異世界モノなので、

そういうのをするのは、番外編とかになるんでしょうか。

まぁ、まだキャラが揃っていないので、そういった回はやるとしてもかなり先になると思います。


〈次回予告〉

 遂にライルの試験が回ってきた。

 相手は王宮騎士団第三団体団長というかなりの実力者。

 果たしてライルの剣は彼の者に届くのか。


 更新日時未定

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