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1度目は落ちこぼれ、2度目は平均、3度目はチートでした。  作者: 八尋
第4章 王立フィオレンツ学園篇入学試験
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第40話 試験会場と試験官

 アルフと別れてから案内された場所、第二訓練場に到着した。

 そこには既に数名の受験者らしき同年代の子たちがいた。残念ながら知り合いはいなかったが、皆それぞれ自前の武器を磨いたり、素振りしたりと試験に臨む準備をしている。

 受付の話では、総合科武術試験第二会場であるここには、受験番号015~029の受験者が案内されているようだ。試験の順番は受験番号の順なので、自分の番が来るまで時間がある者は、最初の話の後は試験時間まで自由にして良いらしい。

 暫くして15人の受験者全員が揃うと、受験者用の出入り口とは反対側の今まで閉まっていた扉がゆっくりと開く。扉が開いた瞬間に空気が変わる。他の受験者には気づかれないように発動した〈気配察知〉で数人いることはわかっていたが、一人尋常でない気配を感じていた。その主は扉から出てきた4人の戦闘に立つものだとすぐに分かった。

 後ろの3人もそこそこの実力者ではあるが、一人だけ桁違いなのがかなり離れているここからでもひしひしと伝わってくる。階段を一歩ずつ降りてくるその動きには一切の隙が無い。

 受験者の殆どが身動きをとれず、硬直してしまっている。中には咄嗟に自分の得物に手を掛けた手練れもいた。この年でその反応ができるとは、相当の実力者だろう。実戦経験もかなりあるのではないだろうか。

 やがてこちらまで降りてきた試験官たちの後ろの一人がこちらに声を掛けてきた。


 「全員揃っているようなので、早速説明を始めたいと思う。今回武術試験の評価担当官を務めるハーニスだ。知っての通り、王立フィオレンツ学園は完全序列制という制度を取り入れている。この序列は絶対であり、校則に則った範囲で序列下位の者が上位の者に逆らうことは原則認められていない。序列を決めるのは「フィオレンツ学園ポイント」通称FCPだ。このFCPの入手方法は主に定期試験や学内行事、学期ごとの成績だ。初めに手に入るFCPはこの入学試験。入学できたとしてもFCPがなければ充実した学園生活は送れない。そのため、入学するためでなく、入学後のことも考えて試験に臨むように。」

 

 一人の試験官がそう言い終わると隣の眼鏡をかけた試験官が変わって口を開く。


 「同じく評価担当官のノイトルだ。今から行う武術試験は、君たちの戦闘能力を見極めるために行われる。試験時間は一人およそ10分。その間に自身の力を出し切れ。バテたりするのは構わないが、諦めないことを約束しろ。これ以上動けないと判断したらその場で終了とする。自己申告も可だ。魔法の使用も許可する。ただし大規模な行使するまでに時間のかかる魔法は原則禁止だ。戦いながら詠唱できるのであれば構わないが、あくまでこれは武術試験だということを忘れるな。立ち回りや技での加点や減点があるのでそこをよく考えて試験に臨め。」

 

 なかなか難しい試験のようだ。純粋な戦士には容易な試験だろうが、魔法を得意とする、魔法師等を目指す者向けの試験ではないな。詠唱で固まっていたら、そこを攻撃されるのは当然であるため、当たり前のルールだとは思うが、あまりSPを獲得できていない子供では〖魔法無詠唱化〗等のスキルは高レベルまで取得できていないだろう。

 

 「同じく評価担当官のセスレナです。武器は各自で持参した武器を使用して構いません。勿論武器がない、若しくはこちらの用意した武器の方が良いという方は、あの中からご自由にお使いください。もし、この他の武器が使用したい場合はお申し出ください。用意できるものは用意します。」


 そう言って4人の中で唯一の女性であるセスレナと名乗る担当官は会場端の長い台を指す。片手剣、両手剣、短剣、双剣、細剣、盾、槍、棒、杖、棍、鞭、弓など、様々な武器が揃えられている。

 しかし、どうやら投擲武器や暗器、格闘用武器等の類は置いていないようだ。これらはやはり人によって大きさや物が大きく変わるからだろう。

 用意されているものにはすべて〘伸縮自在(テレスコーピック)〙が付与されていて、それぞれ使う人の好きな大きさに変えられるようだ。

 

 「以上で説明は終わりだ。何か質問のある者はいるか?」


 初めに説明を始めたハーニス評価担当官が質問の有無を確かめ、暫く待って誰も質問がないことを確かめた。しかし、質問があったとしても誰も声を上げようとしなかったのではないだろうか。

 今もなお、残りの一人の人物から伝わってくる圧力が、受験生の大半を怯えさせている。この人物がここに入ってきたその時からの緊張感は、並大抵のものではない。よく誰もへたり込むことなく、立っていられているものだ。

 普通のこの年代の者がこの場にいたのなら、失禁するものさえ出ていたかもしれない。そんな緊張感がこの場にはある。

 しかし、仮にもこの場にいるのは誇り高きエイヴィスティン王国最大最高峰の学園に、入学を志す者達である。学園の生徒になるため日々努力する、将来この国を引っ張て行く人材だ。そんな者達が、ただの闘気で倒れるほど柔ではない。

 

 「では、そろそろ試験に移る。その前にお前たちの対戦相手、試験官となる御方からお言葉をいただく。皆、心して聞くように。」


 受験生たちが一斉に唾を呑む。そして試験官、この空気を作り出した張本人の言葉を待つ。

 程なくして、他の3人とは違い、少し大柄な男が一歩前に出る。綺麗に切り揃えられた短髪に、髭の類は一切なく、頬に傷の残ったその顔は、幾度もの死線を越えてきた、まさに歴戦の猛者という言葉が相応しい。

 そんな人物がここへきて、遂に口を開く。受験生全員の視線が男へと向く。


 「私の名はゼンバール。王宮騎士団第三団体団長を務めている。今回は訳あって、君たちの試験官をすることになった。試験に関しては先程評価担当官から話があった通りだ。それとは別に私から一つ、君たちに言っておくことがある。全力で掛かってこい。今年の試験は今までとは少し違う。私からは以上だ。」


 男、王宮騎士団第三団体団長ゼンバールは、それだけ言うと訓練場の中心へと向かって行った。ゼンバールの話が終わると受験生たちは周りの者とひそひそと話し始めた。


 「王宮騎士団ッ!何故そんな国の重要機関から人が来るんだ?」

 「しかも団長って言ってなかったか?」

 「ゼンバールって言ったら、ノーテーネでの戦争の英雄じゃない?」

 「長剣一本で何百人も切り伏せたことから剣鬼と他国から恐れられている、あのゼンバールか?」

 「じゃあ、あの腰に下げている剣があの伝説を作った剣なのかな?」


 などと色々と話しているようだが、そんな国の重要人物が来たということは...

 それにそんな重要職に就く人物なら、魔法具も持っているだろう。〖鑑定〗はしなくて正解だったな。さっきの〈気配察知〉も気付かれていたんじゃないだろうか。

 受験生たちのひそひそ話は続いていたが、評価担当官はそんなこと気にした様子もなく、話を進めた。


 「ではこれより試験を開始する。受付でも説明はあっただろうが、自分の番が来るまでは自由にしていて構わない。だが、他の者の試験を見学する場合は、試験の邪魔にならぬよう、観戦席で見学するように。試験が終わり次第帰っても構わない。他の試験会場へ行くのも自由だが、くれぐれも立ち入り禁止区域への侵入や、他の受験生の邪魔になるようなことはするな。もしそのような行為が発覚した場合は、どのような試験結果であっても即失格とする。では受験番号015、準備を開始しろ。他の者は直ちに試合スペースから離れるように。」


 ノイトル担当官の言葉で受験生たちが静まり、一斉に動き出す。受験番号015の少年だけがゼンバールの元へと向かい、他の者は皆、観戦席へと移動した。

 この訓練場は正方形で、試合スペースは地面に円形に描かれた白線が境界となっている。地面は砂で、試合スペースから少し離れた四方に低めの壁がある。その周りに観戦席がいくつも並べられており、そこから残りの受験生14人が固唾を呑んで試合が始まるのを待っている。

 受験番号015が腰に下げた片手剣を抜剣する。同じくゼンバールも抜剣し、両者が剣を構え戦闘態勢へと入った。そしてハーニス担当官が声を上げる。その一声で、王立フィオレンツ学園総合科入学武術試験(第二会場)の幕が上がった。


 「始めッ」

 

〈次回予告〉

 遂に開始した武術試験。

 王宮騎士団第三団体団長の実力は...


 次回更新は11月1日予定です。

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