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1度目は落ちこぼれ、2度目は平均、3度目はチートでした。  作者: 八尋
第3章 エイヴィスティン王国王都篇
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第37話 公爵家夫人達と協議

名前...

 シルビアが到着したことで、公爵家夫人全員が王都に揃った。マティーナ王妃からの依頼で、来年催されるヴァミニアン王国との国家間社交界の企画準備を公爵家夫人達がすることとなった。

 今日はその件の話し合いをするため、メレテナール公爵家王都別邸に公爵家夫人達が集まっていた。


 「さて、皆さま。そろそろ本題に入ることにしましょう。王妃陛下から仰せつかった今回の件、失敗すれば私共だけでなく、それぞれの家にも泥を塗ることになります。」


 雑談をしていた夫人達だったが、キリーナスがそう口にしたことで、全員が真剣な顔つきとなる。普段、親しい間柄の人々との会話の際はくだけた調子の彼女だが、こういった他の貴族との集まりや、正式な場では一変してお堅い雰囲気となる。

 それは貴族として当然な行為だが、アドルクス公爵家の者達には普段と変わらぬ彼女の、ありのままの姿で振舞うことができる。

 貴族は貴族なりの振る舞いがあり、それを幼い頃から行ってきた彼女にとっては、それ程苦ではないものの、心のどこかでは安らぎを求めている。家族の他にそういった素でいられる相手がいることは、いつの間にか彼女の癒しとなっていた。それに本人が気づいているのかはわからないが。

 そんな彼女の古くからの友人以上の間柄であるシルビアもまた、キリーナスと同じような境遇のため、彼女もまたキリーナスと同じ感覚がある。そんなシルビアが次に口を開く。


 「王妃陛下からの勅命です。一切の粗相も許されません。」


 今回の事の重大さを改めて感じた夫人達は一斉に息をのむ。

 

 「周到な計画と念入りな支度が必要ですわね。社交界の開催は来年の文月、あと16ヶ月。準備に半年は掛かるでしょうから、諸々の発注作業等の時間も含めて、あと2,3ヶ月で計画は完璧にしたいところですわ。」


 そう言ったのは、数ある貴族家の中でも有数の財力を持つイニギルッサ公爵家、その当主ヴァブック・カレイル・イニギルッサの第一夫人、セレトレア・カニアッス・イニギルッサだ。

 イニギルッサ公爵には3人の妻がおり、セレトレアの他、第二夫人ケーヒス・ココソッツ・イニギルッサ、第三夫人モミダーナ・コレアル・イニギルッサの全員が参加している。

 中でも第一夫人のセレトレアはヴァブックの初めての妻であり、嫁ぐ前はカニアッス侯爵家の家系だったこともあり、3人の中で一番の発言力を持つ。ケーヒスがココソッツ伯爵家の出で、モミダーナは元平民である。

 かと言って、3人の仲が悪いかと言われればそうではなく、寧ろ仲は良く、揉め事になることはそうそうないらしい。そのため、殆ど対等な関係性であり、今日も先程まで普通に会話を楽しんでいた。

 貴族の中には、平民をよく思わない者もいるが、公爵家ともなればそういう考えを持つ者はいない。そういうことを考えるのは大抵下級貴族である。

 

 「社交界に近づけば、大勢の方がヴァミニアン王国からお越しになるわけですから、その分警備も強化しなければなりません。ヴァミニアン王国の国王陛下もお見えになるので、やりすぎは良くありませんが。」


 次に声を発したのは、貴族家の中でも屈指の戦力を誇るピロックス公爵家、その当主ザーギッグ・デリボン・ピロックスの第一夫人、ニーケッチ・ロエスッタ・ピロックス。辺境伯家出身ということもあり、軍事的なことは今回彼女が担当することとなる。因みに、ピロックス公爵家の戦力を増やした人物でもある。

 クロットズ城伯家出身の第二夫人のマナリニア・クロットズ・ピロックスは、出産間近ということで今回は召集に答えられていない。落ち着いたころには今回の件に参加も可能かもしれないが、時間的に難しいだろう。マナリニアがザーギッグに嫁いだことも、ピロックス公爵家の戦力を上げた一因である。


 「今回はエイヴィスティン王国全公爵家の共催で、王家が協賛ですから、資金の問題はありません。会場も王城ですし、場所の問題もありません。ですが、我々が普段開くレベルでは問題外でしょう。王妃陛下が態々我々をお集めになられたのですから、最高のものを用意しなければ王妃陛下のお顔にも泥を塗ることとなります。些細な失敗も許されません。」


 全員が先程よりも深く息を飲む。場に緊張が走る。そんな空気を作ったのは、エイヴィスティン王国公爵家内で一番の領地面積を持つボロッサル公爵家、その当主ジャイガス・ルニーマ・ボロッサルの妻、メアーナ・ロニーナ・ボロッサル夫人。

 エイヴィスティン王国全公爵家の夫人の中で最年長である彼女の言は、ボロッサル公爵家の領地の広大さとは関係なく、とても重く受け止められるものである。

 多くの貴族家夫人達が彼女に助けられている。そのため尊敬するものは多く、平民出身であるにも関わらず、下級貴族の夫人達の多くも彼女を慕っている。

 領地面積の広いボロッサル公爵領は、それに比例して領地民が多い。しかし、不満を持つ民は殆どいない。それもこれも彼女の手腕によるものである。ボロッサル公爵家に嫁ぐ前は、王宮にて宮廷補佐官を務めており、その技量は両陛下の他、多くの重役も認めるほどである。

 平民が王宮で務めることは大変珍しいことである。エイヴィスティン王国建国から2桁にも上らない程に。そんな彼女は国内でもかなり著名で、ボロッサル公爵家に彼女が嫁ぐとなった時に、多くの民がボロッサル公爵領に移ったともいわれている。


 「では、早速話し合いを始めましょう。」


 キリーナスの一言から、総勢7名による協議が始まり、それは夜遅くまで続いた。


・・・・・

・・・・・

・・・・・


 翌日からも夫人達は協議をするため、様々な場所で集まっていた。時には社交界で利用する物品の確認に王都内の店を回ることもあり、王都内で公爵家夫人が殆ど全員集まっていることから、多くの場所で何があるのかと噂が立っていた。

 アドルクス、メレテナール、ピロックスの3家にはそれぞれ、今回の王立フィオレンツ学園入学試験の受験生がいるため、初日以外はその3家の別邸には集まらないこととなり、主に他の2家の別邸や王城で王妃陛下を交えて等で協議をしていた。

 夫人達がそんな日々を送っている間、その裏ではライルやマリーナ達受験生が必死に試験対策に取り組んでいた。因みにピロックス公爵家次男のザナックは、武術科の受験のため、既に試験期間となっていた。

 ライルの受験する総合科、マリーナの受験する普通科の試験までは残り僅か、そのためシルビアやキリーナスは、我が子の初の受験を見守ってやりたい気持ちでいっぱいだったが、王妃陛下の命を後回しにするわけにもいかず、夕食の際などに普段以上に接していた。

 それが本人たちに少しうざがられているのには、彼女たちは気が付いていなかった。

 学園に合格するまでは、ライルとマリーナはお互いに会わないようにしようと決めていた。絶対に一緒に合格すると約束をしていたのだ。

 王立フィオレンツ学園の入学試験は毎年倍率が高い。昨年も総合科が5倍近くになっていた。しかしそれには訳がある。勿論、フィオレンツ学園がエイヴィスティン王国の中で最大最高峰の学園ということも一因であるが、王国内には数百の学校が存在しており、王都に住む者以外は自宅近くの学校に通う方が効率が良い。

 では何故、フィオレンツ学園にこれ程人気があるのかというと、将来が約束されているからである。王立フィオレンツ学園は少数精鋭の学校であり、入学前から優秀で将来国の役に立つ人物を育成することが目的だ。

 卒業後は、王宮騎士団や王宮魔法師団他王宮守護の団体、各地の騎士隊や魔法師隊他各地方の守護団体、宮廷補佐官や官僚等の国を担う重要な役職に就くものも多い。

 無論、そんな進路が選べる学園に簡単に入学することはできない。受験費用は高額で、到底普通の平民が払える額ではない。初めにここで多くのものが脱落する。当然そんな場所に一般人が記念受験などできるはずもない。

 受験費用や入学金、授業料などの金銭的な面での問題がなくとも、試験のレベルがかなり高い。各領地にある学校の入学後数年分の授業内容が入学試験で出題される。また、実技面でもかなりの能力が求められる。ここでまた、多くの者が脱落することとなる。

 しかし、学費が払えないだけで、優秀な人材は当然ながら出てくる。その者達は同じく王立のトロスタイナ学園への受験が薦められている。

 こちらは、学費が普通の学校と変わらず、平民向けにフィオレンツ学園同様、優秀な人材を育成するために創られた。

 これは、貴族と平民の間での無用な争いを避けるためでもある。主に下級貴族の嫡男嫡女は、平民を見下す傾向がある。親の影響が強いことが原因であるため、しっかりとした親の子はそんなことはないのだが、一部の生徒にそのような問題がある。

 そのため、学園を分けるようにしているのである。フィオレンツ学園のような完全序列制という制度がある学校は少ないが、これがまた各人の争いを生む原因にもなっているのだが。

 そんなフィオレンツ学園だが、授業が難しいのも有名である。初めの方は簡単なものだが、兎に角スピードが速い。すぐに普通の学校の卒業までの学習内容を終了し、将来に役立つものを懇切丁寧に教えていくのが、この学園のやり方だ。

 しかし内容が難しいため、毎年多くの者が退学や落第をする。その場合は他の学校へ移ることとなる。逆にフィオレンツ学園に編入するのは大変難しく、入学試験よりも厳しいものである。過去にも合格者は殆どいない。

 そんな王立フィオレンツ学園の入学試験は今年も厳しいものとなるだろう。ライルやマリーナ、その他まだ見ぬ若人達が学を高め合う学園での生活が今始まろうとしていた。

というわけで、予告通り第3章エイヴィスティン王国王都篇完結とします。

今回出てきた公爵家夫人達の話もまたどこかで、続きが語られることかと...

一つ注意が、王城、王宮、宮廷等の単語がありますが、すべて同じものだと認識していただければ問題ありません。後々統一するかもしれませんが、取り敢えずはすべて国王のいる場所、政を行う場、国の最重要拠点という風にとらえてくだされば嬉しいです。


次回から、第4章王立フィオレンツ学園篇 第Ⅰ部第1節入学試験編 に突入したいと思います。

ライルと同年代の人物が続々登場予定です。


次回、9月1日更新


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