第35話 近隣諸国と試験対策
少し遅くなり申し訳ございません。
カードと本を受け取り、冒険者組合を後にした僕たちは、屋敷へと向かっていた。帰り道、受け取ったカードをよく見てみると、信じがたいことに名刺ほどの小さなカードにはかなりの情報が収まっているようだ。
通常時は金属板にしか見えないのだが、持ち主が触ると何故か情報が浮き出す。何かの魔法が付与されているのだろう。便利なものだ。組合にある機械を通せば、カード内の情報を見ることができるらしいが、それ以外は持ち主本人しか、見ることができないようになっているらしい。
本には、規律の他に組合のシステムやカードについても色々と書かれていた。本と照らし合わせてみると、カードに浮き出しているものがよくわかる。
カードには様々な文字や数字が浮き上がっている。
まず初めに目につくのは、カード右側にでかでかと「B」とでている冒険者ランクだ。本の説明を読んでみると、SランクからEランクまでそれぞれのランクが浮き出るらしい。SSランクだけはカード自体が違うようなので、また別物らしい。
他に出ている情報は、名前、Lv、種族、職業・称号等、ステータスに出ているものと、冒険者組合特有の、AREPと呼ばれる冒険者ランクを上げるために必要な経験値を表した一本の線。僕も天蝎も紅葉も「0」となっている。因みに名前、Lv、種族、職業・称号については、昨日の検査前に既に3人とも〖隠蔽〗済みだ。
経験値は依頼を成功することで増え、逆に失敗すると減るらしい。経験値が一定以上マイナスになるとランクが降格されるようだ。
ランクを上げるためには多くの経験値が貰える依頼をすることが望ましいが、その分難易度も高くなる。勿論成功報酬の金額も高くはなるが、失敗時の損失経験値や違約金も高くなる。初めの方は簡単な依頼の方が良いかも知れない。
その他にも、クランや師弟等こちらも冒険者組合特有の制度の覧が用意されているのだが、僕たちはそういったものはまだ一切していないので、すべて空欄になっている。
本にはかなり細かくそう言ったことの説明も書かれていて、これを読んでいるのといないのとでは大きな差が生まれることは間違いないだろう。帰ってから試験勉強の休憩時間にでも読もう。
天蝎も紅葉も幸いエイヴィスティン王国と近隣国家、ヴァミニアン王国、キュエート公国の公用語、エイヴァート語は読めるようなので、エイヴィスティン王国語とエイヴァ―ト語の二言語表記されている本を読める。
エイヴィスティン王国では、通常エイヴィスティン王国語が使われており、公用語としてヴァミニアン王国、キュエート公国の3か国間ではエイヴァ―ト語が使われている。
そのため、この3か国の教養を受けた者は自国語と公用語の2か国語を使うことができる。大国バッゼーガンヌ帝国や超大国ベールメイヌス連邦国は、公用語を使わない国家のため、他国との友好関係を殆ど持たない。
戦争時の勧告や、条約締結、国家間交流等の国際的な有事の際はその教養がある者が間に立つ。この2か国のような大国の頂点に立つ者は、傲慢にも自国語以外の言語を使用しない。そのため、小国は他国との戦争などの一大事にならない限り、関わりを持とうともしない。
下手に出れば、他国に属国になったかと思われる上に、無理難題を押し付けられかねない。逆に対等な立場のように振舞えば、攻め滅ぼされる危険性がある。
このようなことから、冒険者組合は本にその国と公用語のみを記載するようだ。バッゼーガンヌ帝国及びベールメイヌス連邦国はそもそも冒険者組合が存在しない。比較的温厚なベールメイヌス連邦国の方は兎も角、バッゼーガンヌ帝国には近づかないようにしよう。
すっかり行きつけの場所になった屋敷近くの路地裏で、次に会うのは少し先になることを伝えてから、天蝎と紅葉を還してから屋敷へと戻る。
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次の日から今まで通りの入学試験に向けた勉強とトレーニングを再開した。ここ数日はずっと外出ばかりだったので、使用人達も前とは逆の意味で心配を始めていた。そのため、今まで以上に追い込みをかけて取り組んだ。試験まで残り時間も少ない。どんな結果だったとしても悔いの残らないように頑張らないと。
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学園の入学試験まで残り1週間となった日、母が屋敷に到着した。キリーナスさんの言っていた通り、王城からの召集があったらしい。詳しく聞いてみると、どうも今回公爵家夫人全員を集めようとしているのは王妃陛下らしい。召集の内容まではわからないそうだが、重要な案件だそうだ。もう少し通達が早ければ、王都まで一緒に行けたのにと嘆いていた。
王族からの召集に答えないのは、貴族としてかなり不敬な行為とみなされる。場合によってはその限りではないが、赴かないと良くて罰金、最悪の場合降爵、奪爵もあり得るという。公爵家であれば、後者程の罰は与えられないだろうが、訳もなく無視すれば相応の刑が下されるだろう。
無論、平民であれば更に罰は重くなる。良くて半永久的な強制労働や流罪、悪くて死罪や一族郎党処刑などだ。
そんな重罰を受けるわけにはいかないので、過去にこのようなことを仕出かした者はなかなかいない。勿論アドルクス公爵家も祖先の代から王族の命に背いたことはない。
僕がこの家に生まれてから、王城からの召集が父や母に掛かったのは僕の知る限り数回だ。過去の召集の殆どが国にとって重要なものだったので、今回も同様だろう。
しかし、公爵家の夫人が一斉に呼ばれたというのは聞いたことがない。母もそれは同じようで、何事かと思いなるべく早く到着できるようにしたようだ。到着次第、王城に向かわなくてはならないようだが、到着したのが夜だったこともあり、明日謁見するそうだ。
久しぶりに使用人達も家族同然だが、実の家族に会えたことで、嬉しい気持ちもあったが、母は明日一番に王城に向かう上、長旅の疲れもいやすため、すぐに休息をとった。
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翌日、朝食を食べ終えた後、母は王城へと向かった。
僕はいつも通り試験対策をする。試験まで残り僅か、最近は総合科の試験内容、武術試験と魔術試験に備えた訓練を重点的にすることにしている。学術試験対策はもうしっかりと終わっているので、前日にもう一度復習する位で十分だ。
ホーラン先生が教えてくれた試験内容では、武術試験が試験官との模擬戦闘。幾つかの追加ルールがあるようだが、基本的に普通のものと然程変わらないらしい。
魔術試験は、自身の使える魔法で最もその年のお題にあったものを行使する、というものらしい。因みに一昨年のテーマは、「攻撃魔法で美しく威力の高いもの」、昨年は「生活魔法をできる限りダメージを与えられる魔法にする」だったらしい。
お題は年々難しいものになってきているようで、過去のものを数十年遡ってみても昨年のお題はかなり難しい。生活魔法を攻撃魔法のようにするには、それなりのMPが必要になる。
主に生活魔法と呼ばれるのは初級の三段までだ。その名の通り、生活する上で使用する魔法であり、薪に火をつけたり、水を張ったりと日常生活で使うものだ。
それを攻撃に使うことなど滅多にない。大したダメージを与えられないからだ。ある程度MPを込め、それを持続したり制御したりできる程の能力があれば、火傷や窒息などはさせられるだろうが、学校入学前の少年少女がそんな高レベルのことをできるはずがない。英才教育を受けた貴族の嫡子や嫡女であれば別かもしれないが。
そのため、昨年の試験結果は皆同じくらいのレベルとなってしまったらしい。そのため、今年はレベルが下がるという噂もある。だが、油断は禁物。僕はどんなお題が来てもいいように毎日トレーニングを怠らなかった。
魔術試験の練習は一人でもできるが、武術試験は相手がいた方がやりやすい。デスト先生が帰ってからは、レードやジール、偶にケヴァンに相手になってもらっていた。
王都に来てからは、王都別邸の警備隊のブドールやジェヌクに付き合ってもらっていたが、冒険者組合で登録してからは、天蝎や紅葉にあの姿になってもらい、相手をしてもらっている。
試験では、【制御腕輪】をレベル1の状態で受けるつもりだ。ステータスが【制御腕輪】と連動しているので、普段生活する時のステータスで試験に臨むこととなる。
そのため、Lvが数十離れている屋敷の警備隊は勿論、百以上の差がある従魔の天蝎や紅葉にも、勝つことはできない。しかし警備隊員達には、立ち回り次第では意外に接戦になったりすることもある。
ここ最近は天蝎と紅葉と屋敷の訓練場で稽古をしている。訓練場は普段警備隊や騎士隊が訓練に使うのだが、試験前の稽古場として一時的に貸してもらっている。天蝎と紅葉に関しては、知り合いの冒険者と誤魔化している。勿論、色々と調べられたが問題なく認められた。
稽古は僕と天蝎か紅葉の1対1で、僕の相手をしていない方がそれを見て、指導するという感じで行っている。数日間の稽古のおかげで大分腕上がったように感じる。
今日も日が傾くまで稽古を続ける。
【感謝】
お陰様でブクマ登録100件&30000pv突破しました。ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
〈次回予告〉
王城に集められた公爵家夫人達、王妃陛下の召集の訳とは...
近日更新予定
次回はライルが登場するかわかりません。誰視点になるかもわかりません。




