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1度目は落ちこぼれ、2度目は平均、3度目はチートでした。  作者: 八尋
第3章 エイヴィスティン王国王都篇
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第34話 変更とカード

 「いやぁ、何事もなく終わって何よりじゃ。」

 「ははっ、そうですね。」


 無事に幹部会議も終わり、晴れて冒険者となった僕、天蝎(アンタレス)紅葉(ルプイメ)とボーレドさんは、会議室から退室しホールの方へと足を進めていた。

 しかし問題が一つ。紅葉の様子がいつもと違うというか、明らかに不機嫌なのだ。


 「会議も終わりましたし、ボーレドさんはこの後?」

 「うむ、ワーライドに帰ることになるな。本当はもう少し王都に滞在しておきたいのじゃが、役職上すぐに帰還しなければならぬのじゃ。」

 「それではボーレドさん、色々とお世話になりました。ワーライドへ行くことがあった時には寄らせていただきます。」

 「こちらも迷惑をかけてすまんかったの。こっちへ来たときはぜひ声を掛けてくれ。それではな。」

 「はい。本当にありがとうございました。」


 ホールへと戻ると、雑談もそこそこに、ボーレドさんは既に到着していた馬車に乗り込み、ワーライドへと帰って行った。

 ボーレドさんも支部長という立場上、長く職場を離れることもできないのだろう。戻るにも時間が掛かるので、長く滞在することはできないようだ。もう少し話したかったが、またワーライドへは行くこともあるだろうし、その時にでも会いに行こう。

 そして、問題なのは紅葉の機嫌についてだ。ボーレドさんも何となくは察していたようなので、早く切り上げてくれたのかもしれない。

 ボーレドさんを見送った後、僕たちも冒険者組合(ギルド)を出て、屋敷の方へと向かいながら紅葉に質問した。


 「なぁ、紅葉。何か不満でもあったかな?」

 

 そう聞いた僕に紅葉は、少し迷った表情をしながらも答えてくれた。


 「大変不敬なこととは存じますが、主様の決定に異を唱えることをお許しください...天蝎が私の師匠という設定は受け入れます。しかし、主様をあの様な呼び方は如何様にしても受け入れがたく...」


 紅葉はそう苦虫を嚙み潰したような表情で嘆願してきた。

 昨日の時点でこの設定を決めた時から、紅葉は少し嫌そうな顔をしていたが、ここまでだったとは...悪いことをしてしまったな。


 「悪かったね、紅葉。まさか君がそこまで思い詰めていたとは気付かなかった。でも、人前で主、とかそんな風に呼んでいたら怪しまれるし、同年代の幼馴染がさん付けや君付けも可笑しいと思うんだよ。」

 「それは、主様が正しいと思われますが...天蝎からも何か言ってください。」


 困った紅葉は天蝎に救いを求めた。彼女がこのようなことをするのは珍しい。相当困っているのだろう。


 「主、私もこの件については紅葉と同意見です。その上、私の場合は遥かにお強い主の師匠等と言われるのは受け入れがたいです。」


 天蝎も同意見の様だった。僕は昨日のうちに言ってくれよと思いながらも、それは彼らなりの忠誠心だったと理解し、咎めることはしなかった。


 「わかった。幸い僕たちのこの設定を聞いていたのはボーレドさんだけだ。悪いけど彼のいるところではこの設定で行かせてくれ。それ以外では2人とも僕の従者という設定で問題ないかな?」

 「それならば問題ありません。これで主様を呼び捨てなどしなくて済みます。」

 「でも、主じゃ可笑しいから、せめて名前に敬称にしてね。それから、不満がある時は遠慮なく言ってね。」

 「畏まりました。ライル様。」

 「承りました。ライル様。」


 はぁー。前世でできなかった高校生みたいな体験をしたくて、こんな設定にしたんだけど2人の気持ちをもう少し考えるべきだったな。結局、呼び捨てじゃなく様付けになっちゃったし...こういう体験は将来学園で高等部になってからかな...

 前世を中学生という若さで終わってしまったライルは学生生活に憧れていたのだった。しかし、今後学園で多くの体験をすることとなる彼は、そんな思いも忘れてしまうほどに、学園での生活を満喫することとなる。

 屋敷の近くまで着くと、明日本部に組合(ギルド)に登録した者が持つことができるカードを受け取りに行くため、また召喚することを約束し、2人と別れた。


・・・・・

・・・・・

・・・・・


 翌日、天蝎(アンタレス)紅葉(ルプイメ)と共に昨日も訪れたカウンターへとやって来ると、そこにいた男性職員に声を掛ける。


 「すみません。昨日登録して、カードを取りに来た者なのですが...」

 「では、お名前と職業、それと登録承認者の名前をお願いします。」


 名前と職業はわかるが、登録承認者とは何だ?


 「僕はライル、魔法戦士。彼は剣士のアンタレス、彼女は魔法師のルプイメです。えっと、登録承認者とは何ですか?」

 「はい、登録承認者とはその名の通り、その人物が組合(ギルド)に登録したことを認めた者のことです。登録時に「組合の一員となったことを承認します。」等、それに類することを言った者が登録承認者です。」


 そんなこと言われたっけ?僕がそう思って考えていると、今までの話を聞いて何か思い当たる節があったのか、ルプイメが話しかけてきた。


 「ライル様、恐らく昨日の組合総長ギルドゼネラルマスターを名乗る者のことかと。」

 「えッ、総長さん?言われてみれば、そんな感じのことを言っていたような。」


 そう言えば、「君達がエイヴィスティン王国冒険者組合(ギルド)の一員となったことをここに宣言しよう。」とか何とか言っていたような。あれがそれのことなのだろうか?聞けばわかるか。

 

 「登録承認者は、キューゼ・アットル()だったかと。」

 「キューゼ・アットル?...そッ、総長閣下でありますカッ!?」

 

 職員は初め普通に名簿を探していたようだが、暫しの沈黙の後、驚いたように声を上げた。


 「え、えぇ、そのはずだと思います。昨日、会議でその様な事を仰っていたと思いますので。」

 

 すると職員は思い出したかの様に言った。


 「成程、あなた方がそうでしたか。上より通達が来ていたのは。道理で普通の新登録者名簿に名前がないわけです。」

 

 そう言うと、職員は新たに書類を出してきてすぐに目当てのものを見つけたようだった。書類の表紙には「重要登録者」と記されている。


 「ありました。ライル様、アンタレス様、ルプイメ様ですね。確認しました。昨日の検査の結果通りのカードの用意ができております。少々お待ちください。」


 そう言うと職員は奥へと入って行った。

 昨日の会議の後、エイヴィスティン王国冒険者組合筆頭検査官と名乗る人物に検査を受けたのだ。やったことはワーライドでイレーナさんにされたことと同じだったが、彼女は2等検査官で、今回の人物は筆頭検査官、役職的にかなりの人物だと思うのだが...

 ここでも〖鑑定〗は使わなかった。バレたら面倒なことになりかねない。入学試験も近いのに、面倒事に巻き込まれるのだけは御免だ。

 暫くして、職員が戻ってきた。手には3つのカードが乗ったトレイを持っている。


 「お待たせしました。こちらが御三方の証明カードとなります。当組合での依頼受注や報酬受け取りの際の身分証明の他、検問所での身分証明等にもお使いいただけます。ランクが上がるごとに信頼度も増しますので、頑張ってください。カード発行手数料と初年度の年会費としてお一人、銀貨1枚のお支払いをお願いします。」


 結構取るのね。そう思いながらも僕は職員に銀貨3枚を手渡す。組合登録時に必要な料金は基本的にこれのみだ。年会費として幾らか支払わなければならないらしいが、依頼を受けている人はそこまで高額ではないらしい。依頼の成功報酬から幾らか引いているのだろう。


 「確かにお預かりしました。カードをお受け取りください。御三方はBランクからのスタートです。凄いですね。かなり珍しいですよ。普通はDからですから。流石総長閣下が承認された方々ですね。」

 「ははっ、そんなことないですよ。」


 男性職員から尊敬の眼差しを受け、笑いながら対応する。容姿も悪くなく、真面目そうな好青年といった感じの人物なのだが、初対面の上、自分が男である以上、同性から褒められてもそこまで嬉しくない。

 カードを受け取りながら、Bランクスタートである以上、少しばかり目立つのは仕方ないとしても、今は面倒事は避けたい。依頼を受けるのは、入学試験が終わってからにしよう。等と思案を巡らせていた。


 「それと、カード紛失時はかなり高額の再発行となってしまいますので、お気を付けください。あと、こちらをよくお読みください。」


 そう言って渡されたのは、厚さが1cm程ある小さめの本。表紙には「エイヴィスティン王国冒険者組合規律」と書かれている。どうやら、これを読まないといけないらしい。結構量あるなと、面倒そうな顔をしていたのがバレたのか、職員が忠告してきた。


 「しっかり読んでおかないと、後々痛い目を見ますよ。」

 

 そう言ってきた彼の目には、今までに何があったのかがとても気になるほどに疲れの色が見えた。

〈次回予告〉は今回はなしで。すいません。



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