表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1度目は落ちこぼれ、2度目は平均、3度目はチートでした。  作者: 八尋
第3章 エイヴィスティン王国王都篇
32/47

第32話 再会と悪巧み

少し遅くなりました。

 天井の高さは十数mあるだろうか。吹き抜けとなっており、3階の廊下が1階から見えている。建物自体が豪華な造りで、とても今までに見てきた冒険者組合(ギルド)と、同じ組織の建物だとは思えない。

 先程のような五月蠅さはなく、仕事に従事する者達の作業音は、〘騒音抑制(ノイズキャンセリング)〙を通過して聞こえてくる。

 防音系の魔法は、使用者の考えが反映される。〘騒音抑制(ノイズキャンセリング)〙や〘騒音遮断(ノイズブロッキング)〙など音声妨害系魔法では、使用者自身が対象音声と感じるものを抑制、遮断する。この2つの場合の対象は騒音だ。そのため、こういった作業音は僕が、騒音と感じない類のものなのだろう。

 昔から、父や周りの人々の仕事をする姿を間近で見て育った僕は、仕事をする大人への敬意や憧れがあった。そういったことから、作業音を騒音と認識せず、寧ろ心地よい音と感じてしまうのかもしれない。

 本部には、先程の王都第1支部もそうだったが、冒険者組合(ギルド)支部には併設されている酒場が見当たらない。そもそも、冒険者自体あまりいない。見かける人も、装備はきっちりしているが、先のような厳つい人ではなく、真面目そうな人や、几帳面そうな人ばかりである。

 この本部の雰囲気は宛ら、前世の役所のようだ。

 そんな場所で7歳の少年がうろちょろしていれば、迷子かと思われ、声を掛けられることは必至であるが、僕は今、成人した大人の外見をしているので、職員は全く気にせず、仕事を続けている。

 数分、本部の1階を歩き回っていると、これまた先の支部の倍はありそうな大きさの入り口に、数台の馬車が止まった。冒険者の声だろうか、いろいろと話しているようだが、やがて一人のお爺さんが中へと入ってくる。

 見た目とは裏腹に、気迫溢れるその佇まいから、歴戦の勇士といった印象を受ける。前に会った時には感じなかったが、本当は名の通った方なのだろうか。

 そんなことを考える僕を目にすると、彼はこちらへと歩み寄ってくる。


 「ライル君、良かった。集合場所は王都ということにしておったから、もっと詳細な場所決めをしておくべきじゃった、と後悔していたところだったんじゃよ。」

 「僕も同じことを考えていました。取り敢えず本部(ここ)にいれば、会えるかと思って、ここに来てみて正解でした。」


 ボーレドさんと合流でき、一安心した僕達は少し談笑してから、本題へと移った。


 「えっと、僕はこの後どうしたら良いんでしょうか。」

 「そうじゃった。君には明日、本部(ここ)で行われる幹部会議に同席してもらいたい。今回の会議には私も参席し、そこで君のことを紹介したいと思っておるのじゃが、どうかね?」

 「えぇ、もちろん問題はありませんが、一つ質問してよろしいでしょうか。」

 「もちろん構わんよ。」

 「では、冒険者はチームを組むとお聞きしましたが、やはりその方が良いのでしょうか。」

 「うむ。一概には言えんのじゃが、チーム、まぁパーティというのじゃが、を組む者は非常に多い。それは、仲間がいた方が依頼の成功率も上がるし、危険度も下がるからじゃ。しかし、その分報酬は減ってしまうから、報酬を独占したくて仲間割れ、等ということも珍しくはない。そういったことが起こらない見知った、信頼のおける者と組むのが得策なのじゃが、君の場合は普通に依頼をこなすだけなら、そう簡単に死ぬこともないじゃろうし、そう焦ることはないじゃろう。もし良かったら、儂が探しても良いが、誰か心当たりはあるのか。」

 「お気遣いありがとうございます。一応心当たりはありますので、声を掛けてみますね。もし、了承してくれるのであれば、明日連れてきた方が良いですかね?」

 「そうじゃな...しかし、君が認める者ならば問題はないと思うが、力量に差があれば、それだけリスクが伴う。それだけは覚えておいておくんじゃぞ。」

 「心得ております。私より強いはずですので、どちらかと言えば、こちらが足を引っ張る可能性の方が高いでしょう。」

 「......」


 懇切丁寧に教えてくれたボーレドさんは、僕の答えを聞き、少し引き攣った顔をしていたようだが、具合でも悪くなったのだろうか。

 その後、ボーレドさんはカウンターへと向かい、手続きを済ませてくれた。これで明日ここに来れば、会議室まで案内してくれるそうだ。

 ボーレドさんはまだ残って何かするようだが、僕はパーティーメンバーを()()しなくてはならない。ボーレドさんと別れ、冒険者組合(ギルド)本部を後にする。


・・・・・

・・・・・

・・・・・


 冒険者組合(ギルド)本部から、そのまま王都の城壁の外までやって来た僕は、ある程度進んだところでそれを実行する。

 

 「〘特級召喚(スペシャルサモン)〙天蝎、紅葉」


 僕が発動した魔法により、地面に2つの巨大な魔法陣が現れ霧がかかり、次いでその姿が露わとなる。


 「お久しぶりでございます。主。随分とご成長なされたようで...いえ、擬似成長ですか。」

 「ああ、その通りだよ、天蝎。6年ぶりかな、元気にしていたか。」

 「はい。それは勿論。主に見合う従魔となれるよう、日々精進しておりました。」

 「うん、それは何より。紅葉も元気だった?といってもこの前会ったばかりだけど。」

 「はい。あの時より更に鍛錬して参りました。」

 「うん、まぁ、くれぐれも無茶はしないように。ほどほどにね。」

 「はッ。お心遣い感謝いたします。」

 

 そんな前回と同じような挨拶もほどほどに本題へと移る。


 「今回君たちを喚んだのはあるお願いがあるからなんだ。」

 「お願いと言わず、命令してくだされば如何様な命も遂行いたしますが。」


 少々物騒だが、頼もしいことに変わりはない。僕は続ける。

 

 「実は明日、冒険者組合(ギルド)に登録に、冒険者組合(ギルド)の幹部会議に出席することになってね。冒険者はパーティを組んだ方が良い、って言われたから君達にお願いできないかなって思って。」

 

 それを聞き、紅葉は理解したようだ。


 「成程、主様は我々に()()をお望みなのですね。」

 「ン、鳳凰(紅葉)、お前は主の御意志が理解できたのか。」

 「えぇ、私はわかりましたよ。主様は我々がそのパーティーメンバーになることをお望みなのです。ですよね、主様。」

 「うん、理解が早くて助かるよ。」

 「パーティーメンバー?従魔としてではなく...あぁ、成程。主は我々にあの形態になるのをお望みなのか。」

 「天蝎もわかったみたいだね。それでお願いできるかな。」

 「主様のご意志とあらば、喜んでお受けいたします。」

 「私も同様です。主がお望みとあらば、何事も全力で掛かる次第。」

 「良かった。それじゃあ、一度やってみてもらえる?」

 「それは構いませんが、どの形態が良いのでしょうか。やはり人族でしょうか。」

 「うーん、他には何になれるの?」

 「そうですね、私も天蝎も人族の他に、エルフ族、ドワーフ族、小人族、巨人族、妖精族、魔族、それに獣人系の種族の大半は。魔物及び、魔獣、動物の類にはなれませんが、魔法を使用すればそれも可能です。」


 今回、僕が天蝎と紅葉を喚んだ理由は、パーティーメンバーになってもらうためであり、従魔としてではない。そのため、人間の形態をとってもらう必要があった。

 神獣や瑞獣は、人間型をとれると本で読んだことがあったので、6年前に聞いていたのだ。すると、本当に可能だったようなので、今回こうして頼んでいるわけなのだが...


 「まさか、そんな何種族もの姿になれるとは思ってなかったよ。王都だから、それなりに異種族も見かけはしたけど...」


 正直に言ってしまえば、エイヴィスティン王国は問題ないが、他国では人族至上主義国や、亜人種差別の激しい国、多種族の侵入を拒む国は珍しくない。そのため、どの種族になるのが最善の選択かはわからないが、消去法で選ぶことにした。


 「まず、妖精族は却下。」


 妖精族は悪戯好きで有名で、それを嫌う人も多い。第一、妖精族の中でもまちまちだが、小さいものが多い上に、実体自体見える人の方が少ないので、今回の件には相応しくない。

 

 「それと、巨人族、小人族も却下。」


 巨人族は、その名の通り巨人だ。と言っても、そこまで大きいわけではない。個人差もあるが3m前後が平均的な身長だ。ある程度目立つが、そこまで騒ぎになることはない。しかし、彼らは自国からあまり出たがらない性格のため、一緒にいると何かと支障が出る可能性がある。

 小人族は、成人した者でも身長が50cm程度であり、巨人族同様、自国から出てくることが珍しい。そのため、この2種族も却下。


 「勿論、魔族も却下。」

 

 魔族は、人間族で嫌う者が一番多い種族と言っても過言ではない。戦争は人間族同士でも起こるが、魔族との戦争となると別だ。人間族と魔族は種族間で仲が悪く、2種族間での戦争となれば、同種族同士で手を組むこともある。それがたとえ敵対中の相手国でもだ。

 およそ800年前に起こった【大陸間大戦争】では、両種族とも多くの犠牲を出し、魔族側の1国の王、魔王が倒されたことにより、魔族側が引き、人間族の勝利で終わった。 

 それから今までは、種族間での大戦争は起こっていないものの、小規模な紛争は絶えない。そのため、却下だ。


 「となれば、人、若しくはエルフかドワーフか獣人かになるけど、獣人はなしかな。嫌う人も多いから、態々自分から火種をまく必要もないし。」


 獣人は何かと差別的な扱いを受けることが多い。そのため、余計な火種をまく必要はないだろう。


 「あと、ドワーフもなしかな。どちらかというと、戦闘系より生産系のイメージだし。」


 ドワーフの大半は、採掘や鍛冶、建築を生業としている。中には戦闘特化のドワーフもいるようだが、一般的な認識では職人といったイメージが多いようだ。


 「じゃあ、自ずと人かエルフになるけど...」


 そこで、僕は思った。エルフは巨人族や小人族同様、故郷から出てくる者が少ない。先2種族よりは多いが、元々希少種であるため、あまり見かけることもない。そのため、非常に人気が高い。特に女性のエルフは...


 「確か紅葉は雌、天蝎は雄だったよね。」

 「はい。その通りですが、それが何か。」

 

 僕は、少しこの決め方に罪悪感を覚えたが、利益を鑑みると、決して悪くないように思え、実行した。

〈次回予告〉

幹部会議へと参加することとなったライル一行。

ライルは天蝎と紅葉にどの種族になることを望んだのか...


7月末更新予定


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ