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1度目は落ちこぼれ、2度目は平均、3度目はチートでした。  作者: 八尋
第3章 エイヴィスティン王国王都篇
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第30話 懸念とバッゼーガンヌ帝国

 「そのことなのだが、ライル君。まだ幼い君にこんなことを聞くのも変だが、君は幼い頃から戦闘に長けていたと、君の父(スモーツ)から聞いている。そんな君に問いたい。今回の件、どう思う?」

 「はい。今回、馬車を襲ったのは、ハイイビルダークウルフでした。30年という月日を生きているものは僕も初めて見ました。それに、スキルを3つも持っていること、更にLvが100を超えていることなどから考えると...何者かが使役していた従魔という可能性もあるかと。」


 真剣な表情で、僕の話を聞くマセットさんからは、自分の妻を危険に晒した者への敵愾心や、公爵としての立場から、僕の仮説が正しかった時への対策を考えている様子がひしひしと伝わってくる。

 

 「確かハイイビルダークウルフの取得していたスキルは、〖威圧〗〖爪刃拳〗〖統制〗の3つだったな。」

 「はい。スキルレベルがそれぞれⅦ、Ⅷ、Ⅵと、どれもかなりのレベルでした。」

 「ウルフの数が全部で30体程度だったことから、〖統制〗スキルがかなり上手く機能していたようだな。あれは、対象が少なければ少ない程、対象の能力を底上げし、所持者に従順させるスキルだからな。」

 「はい。少数の手下で、それもそれぞれがLv50前後のものが殆どで、所持者と対象のLv差が開けば開く程、効果がより高まるスキルなので、それも災いしたのでしょう。」

 「ふむ。(メレテナール公爵家)の騎士団第2部隊の連中は、Lv80~100の者が殆どでな。ゴルゴーブはLv150で指揮も文句なしの実力があるので、隊長を任せているのだが。第2部隊の半数にも満たない人数での護衛は失敗だったようだ。まさかこんなことになるとは...街道を進むだけだからと油断していた...」


 再び、マセットさんがブルーになり始めてしまったが、気にせず話を進める。


 「Lv差はある程度あったようですが、統制力の違いが決定的だったようです。勿論スキルのおかげでもあるのでしょうが、手下が戦闘中の状態でも、あのハイイビルダークウルフは全く動いていませんでした。それだけ、事前に策を伝えていたのか、スキルによる効果なのかはわかりませんが、奇襲だったことを含めても、あの統制力は異常でした。マセットさん、あなたの第一団体副団長時代よりは劣るでしょうが、あれ程の統制力を持つ魔物が僕の仮説通り、何者かの従魔だったとすると、かなり高位のビーストテイマーや、魔法師である可能性が極めて高いです。」


 僕の考えを聞き、先程より一層思索にふけったマセットさんは、眉間にしわを寄せていた。

 暫くして、考えがまとまったのか、マセットさんが口を開いた。


 「成程、仮にライル君の考えが正しかったとすると、()の正体は、大きく分けて3つに絞られる。1つ目が、(メレテナール公爵家)若しくはモルチーダ伯爵家に恨みのある者の犯行。2つ目が、(メレテナール公爵家)の商会、若しくはモルチーダ伯爵家の商会の衰退を狙った他商会の犯行。そして3つ目が」

 「エイヴィスティン王国の経済界の混乱を狙った他国の犯行。」

 

 マセットさんが言おうとしていた3つ目の可能性を、僕が口に出したことで少し驚いたような表情をしたマセットさんだったが、すぐに頷き、話を続けた。


 「エイヴィスティン王国四大貴族商会と呼ばれる内、2つを一気に潰すことのできる可能性があるまたとない機会、他国の連中がエイヴィスティン王国の経済界の混乱を狙った可能性も考えられる。」

 「先程、僕が立てた仮説が正しいと考えると、最も可能性が高いのは...」

 

 僕はその続きを口にしなかったが、マセットさんは既に僕と同じ答えを導き出していたようだ。


 「公爵家や伯爵家等の上級貴族に恨みを持つものは多い。しかし、そんな奴らがそこまでのビーストテイマーなり、魔法師なりを用意できるかと言ったら、不可能に近い。2つ目も同様だろう。大商会ともなれば、可能かもしれんが、そこまでの者を用意できる程の商会ならば、我々との間でも交易なりなんなりがあるはずだ。となると...」

 「高位のビーストテイマーないし、魔法師を用意できる国と言えば、」

 「「バッゼーガンヌ帝国」」


 2人の声が重なる。

 バッゼーガンヌ帝国は、エイヴィスティン王国から隣国ヴァミニアン王国を挟んだ場所に位置する、三大帝国の1つ。

 現バッゼーガンヌ帝国皇帝、ザイヌーリ・ギマネービ・ホイラヌス・モッテニルは、絶対君主制を敷いており、「無慈悲な悪魔」と二つ名が付くほどの人物である。

 彼は、先代皇帝、ハーツマイ・テッラス・ゴゴーズ・ジューバンを倒し、バッゼーガンヌ帝国の玉座に就いた、元平民である。

 バッゼーガンヌ帝国は完全実力至上主義の国家であり、3年に1度行われる、皇帝選出闘技大会での優勝者が、皇帝の座に就くため、力だけの脳筋が皇帝になってしまい、頻繁に反乱が起こるような危険な国である。

 しかし、今代の皇帝は知略にもたけているようで、皇帝に就任後11年間、反乱が一度も起こったことがないような秀才である。11年間皇帝として君臨し続けているということは、4度皇帝選出闘技大会で優勝しているということである。

 これまで先代皇帝の9年が最長であったが、それを更新し、歴史を塗り替えたのである。

 そんな現皇帝は若く、30代らしい。未だ、その戦闘力は衰えておらず、来年の皇帝選出闘技大会でも優勝し、更に記録を伸ばすであろうと噂されているようだ。

 そんな人物が毎年のように行っているのが、隣国ヴァミニアン王国との小規模戦争。

 エイヴィスティン王国はヴァミニアン王国と友好関係にあるため、毎年戦争が起こる時期には、兵を派遣している。

 それを邪魔に思った皇帝が、こちらに手を出してきてもおかしくはない。

 バッゼーガンヌ帝国は、完全実力至上主義であるため、教養よりも戦闘技術を磨くことに専念する者が大半である。

 そのため、他の国よりも圧倒的に戦闘能力の高い者が多く、職業戦士も多いのだ。そんな帝国であれば、高位のビーストテイマーや魔法師を簡単に動かせるだろう。

 というのが、僕とマセットさんの考えだった。


 「幾ら、ここで考えてもこれ以上はどうしようもない。これを、優先的に調べてみる。他2つも仮説として探りを入れてみる。ライル君、すまなかったな。試験前に時間をとってしまって。こちらで情報をつかみ次第、追って連絡する。では、今日のところはこれにて失礼する。それと、キリーナスを助けてくれたこと、感謝する。本当に、ありがとう。またな。」

 

 そう言うと、マセットさんは執事を連れて、部屋を出て行ってしまった。

 扉の前では、キーナがお茶を用意して持ってきていたようだが、マセットさんは断って帰って行った。キーナもかなり早い段階から、扉の近くにいたようだが、入らなかったようだ。

 

・・・・・

・・・・・

・・・・・


 あのマセットさん訪問の日から数日が過ぎ、今日はついにあの日がやって来た。

 そう、冒険者組合(ギルド)へ顔を出す日である。冒険者組合(ボー)ワーライド(レド)支部支部長(さん)と会うのは実に3週間ぶりなわけだが、どこで待ち合わせるかを決めてなかった。

 王都で合流としか決めていないのだから、いったいどこで待っていればいいのか。取り敢えず、エイヴィスティン王国冒険者組合本部に向かうことにする。

 ここ数日間、僕はひたすらに勉強とトレーニングをしていたので、それを心配していた使用人達も、僕が少し外に出ることに安心したようだった。

 流石に、護衛や馬車は断ったが...〘身体偽造(ボディーフェイク)〙を使うのだから、知り合いがいるとまずい。

 僕は、屋敷から出て、ある程度進んだところの路地裏で、魔法を発動させた。


 「〘身体偽造(ボディーフェイク)〙〘衣装変更(コスチュームチェンジ)〙」

名前を考えるのが、一番面倒くさいかも...

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