第28話 王都と公爵家邸
新章スタートです。
王都、それは各王国の王城が存在し、様々な重要機関が隣接する各王国の最大都市。
そんな王都は、我らがエイヴィスティン王国にも無論、存在している。
王都は各王国の最重要都市でもあるので、城壁も他の街と比べ、かなり頑丈で、強大なものとなっている。エイヴィスティン王国王都の城壁は、ワーライドの城壁よりも高く、分厚い。
王都中央に位置する王城にも城壁があるため、王都は城壁と城壁に囲まれるように城下町が存在する。
そんな王都の検問所は、やはり普通の都市よりも念入りに調査される。
王都の城壁には計4か所の検問所、出入り口が設けられている。これは、人口が多く、王国内で一番人の行き来が激しい場所だからである。
今回通るのは、ワーライドからの道筋なので西門である。
検問所の4か所すべてに、貴族用、商人用、一般用の検問所が設けられており、貴族用が一番大きく馬車が2台並走しても、何の不自由もなく通過できる程の門が一つある。
次に大きいのは、商人用である。商人が荷馬車で来ることと、荷台の商品や、荷物を確認することに時間がかかることを想定し、貴族用の一回り小さい程度の検問所が2つ用意されている。
そして、一番小さいのが一般用。全部で3か所あるのだが、1つは馬車が通れる程度に大きいもの、後の2つは人が3人並んで通れるかどうか、程度のものが用意されている。
どれも高さは十分なもので、一番低い一般用のものでも、3mは下らない。
そんな検問所では、最新のシステムが常に更新され、導入されている。
たとえ、荷馬車や手荷物に不審物がなかったとしても、この世界には【アイテムボックス】が存在する。
誰もが持っているため、その中にしまってしまえば、隠し通せてしまうのだ。
しかし、数年前画期的な新システムが導入され、密輸の検挙率が大幅に増加した。
そのシステムは、【アイテムボックス】内のものを確認する魔法具を応用した、禁制品の探知機のようなもので、予め設定した禁制品を【アイテムボックス】内に所持している場合、発光する。
このシステムの導入により、エイヴィスティン王国王都での闇取引は激減した。
しかし、何分高価な品なので、エイヴィスティン王国全土に設置することは難しい。そこで、せめて王都だけでも、ということで王都の検問所全てにこの魔法具が設置されている。
検問所では貴族であろうと、通過には審査が必要となる。と言っても、王都などの大きな都市には、身体検査など一々全員にしていられないので、身体検査用の魔法具も設置されており、実質、【投影石】での身分証明だけである。
冒険者や商人のように組合に登録すると、その組合のカードを提示し、確認用の魔法具を使用することで、【投影石】での審査も必要なくなる。
今回は、メレテナール公爵家の馬車に同乗させていただいているので、貴族用の門からの入場となる。
【制御腕輪】も既にレベル1にまで戻してあり、ステータスも普段のものに隠蔽しているので、全く問題なく通過できた。
王都は、何度か来ているがその度に驚かされるものである。人の多さも然る事乍ら、様々な建造物がひしめき合って並び建っている様は、圧巻の一言に尽きる。
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城壁を潜り抜け、馬車で移動すること数分、窓から見える景色が変わってきた。
比較的安価の商店や宿屋、料理店等が位置する一般街から、高級料亭や高級商店、高級宿等が位置する高級街へと移動したのだ。
先程までの活気に溢れた賑やかな雰囲気から一変、平静で物音が殆どしないその場所に入ると、全く別の世界に来たのではないかとさえ感じさせる。
一般街と高級街では、住居にも勿論差があり、一般街では一軒家自体があまり多くなく、2階建て、3階建ての集合住宅や、下宿が大半を占める。
他にも、1階が商店で2階より上が住居となっているものもあるようだ。
それに比べ高級街は、一軒家といっても、一軒一軒がかなりの広さを誇り、邸宅といった方が似合っているものが多い。貴族や大商人等がここに屋敷を構える。
そんな高級街をまた数分進むと、城壁を潜った時からその壮大さが窺えた王城が間近に見えてくる。近づけば近づくほど、この城に住まう者の権力や財力を嫌にでも思わせられる。
僕も、数度中に入ったことはあるが、未だにあの堂々たる佇まいには慣れることができない。
そんな王城の程近くで馬車が静止する。どうやら目的地に着いたようだ。
「さあ、マリッタ、ライル君着いたわよ。」
そう言って、いつの間にか外で控えていた執事に手を取られながら、馬車を出るキリーナスさんに続いて馬車を降りる。
目の前には、大きな屋敷が建っており、その前に数人のメイドと執事が控えている。
後ろを見ると、屋敷の門から数十mの距離にわたって広大な庭が広がっている。その庭には、石像や銅像、花々や木々が品良く飾られており、名のある庭師の作であることは一目瞭然だ。
屋敷もかなり大きく、正面から見るだけでもかなりの広さがあることが想像できる。
メレテナール公爵家の王都の屋敷に来たのはこれが初めてだが、恐らく家の王都別邸よりも大きいだろう。
そんな屋敷をまじまじと見ていると、キリーナスさんから声が掛かる。
「何しているの、ライル君。行くわよ。」
「あッ、はい。すいません。」
そんなキリーナスさんに付いて屋敷に入ると、執事やメイドがこれでもか、という程に整列している。エントランスホールの奥にある階段まで、ずらりと並ぶ使用人達は服装にも列にも、一切の乱れがない。メレテナール公爵家の使用人のレベルの高さが窺い知れる。
貴族は、使用人のレベルも他家より劣ってはならない。そのため、使用人の指導は上級貴族になるほど、気合を入れる。公爵家ともなれば、使用人のレベル等、まさに使用人の鑑という程までに洗練されている。
このように、初見での評価が重要となってくるのが貴族の面倒な点でもあるのだ。家も訪問者がいない場合は、こんなに使用人がエントランスに集まることはない。居ても数人だ。
しかし、訪問者がいれば話が変わってくる。貴族としてのプライドというものがあり、よっぽど親しい人で、何度も屋敷に訪れる人でもない限り、こういった出迎えをするのだ。
「ようこそいらっしゃいました。マリッタ様、ライル様。」
マリッタさんも伯爵夫人ということもあり、こういうことには慣れているようで、一切動じていない。
僕はまさかメレテナール公爵家の屋敷で、こんな扱いを受けるとは思っていなかったので、少し驚いてしまった。
そんな僕の顔を見て、キリーナスさんはしてやったりという顔でこちらを見ていた。どうやら弄ばれていたようだ。
「ふふーん。ライル君、驚いてくれたようね。」
「ええ、まさか僕にこんなことをしてくるとは思っていませんでしたから。」
比較的頻繁にメレテナール公爵家の本邸には赴いていたため、今更こんなことをしてくるとは思ってもみなかった。
僕は、幼い頃からこういう風に、キリーナスさんにからかわれることが多い。その所為か、キリーナスさんに少し苦手意識のようなものがあることは、心の中にしまっている。
そんなことを知られれば、余計からかわれるか、それ以上の面倒事になりかねない。僕は、今日もそのことをキリーナスさんに知られないように、笑みを浮かべながら、そう返した。
「じゃあ、取り敢えず、応接室に案内して差し上げて。」
「畏まりました。奥様。」
「私は色々と報告があるから、少し時間が掛かるかもしれないわ。残念だけど、ライル君とは、今日はここでお別れかな...お茶とかは出すから、落ち着いたら自分の家に戻ってくれる?馬車は用意させておくから。今日は本当にありがとうね。また何時でも来て良いからね。マリッタは、そうねー...少し待っていてもらっても良いかしら。さっきのこととか色々としないといけないから。」
「はい。」「畏まりました。」
キリーナスさんはそう言うと、右の通路の方へと行ってしまった。残された僕と、マリッタさんは先程キリーナスさんが話していた執事さんに応接室へと案内された。
そこで、メイドさんが出してくれたお茶と菓子をいただきながら、マリッタさんと暫く談笑していると、執事の一人が、袋をもってやって来た。
どうやら、先程の【癒しの水晶】の分のお金が入っているらしい。あの後、魔物に出会わなかったので、魔法を行使する必要はなかったのだが、初めに使った分らしい。
【癒しの水晶】なんて、本当は使っていないし、持ってもいないので、少し罪悪感もあったが、無理矢理に渡されたので一応受け取った。
その後、キリーナスさんが用意してくれた馬車に乗り、メレテナール公爵家王都別邸を後にした。




