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第27話 偉大なる夫人と嘘

【感謝】おかげさまで20000pv突破しました。これも読んでくださっている読者の皆様のおかげです。ありがとうございます。


その記念としまして、3日連続更新させていただきます。


 「そういえば、シルビアの姿が見えないけど、それに馬車はどうしたの?」


 あっ、しまった。これは面倒なことになりそうだな。ここは無難に受け流すしかない。


 「今回は、僕一人で王都に向かうことにしたのです。トレーニングにもなりますし。」


 僕がそう答えると、キリーナスさんは心底心配した顔になり、


 「ダメよ、危ないわ。ウェストーナから王都なんて、かなりの距離じゃない。それに馬車がなかったなら、かなり時間がかかったでしょ。また腕を上げたようだけど、この距離を進んできた上に、さっき戦闘もしたのだから疲れているだろうし、(うち)の馬車に乗っていきなさい。」

 「いえ、だい...なんでもありません。お言葉に甘えさせていただきます。」


 初めはそう言ってくるキリーナスさんの好意をお断りしようとしたが、キリーナスさんから殺気にも似た威圧感が感じられたため、素直にお言葉に甘えさせてもらうことにした。


 「そう言えば、他にも馬車に乗っておられる方がいるのですか?」


 僕がそう聞くと、キリーナスさんはそうだったという顔をして、返してきた。


 「そう、そう、ライル君は会ったことないかもしれないけど、今日は商会のこともあって、マリッタ、モルチーダ伯爵夫人もいるのよ。」


 モルチーダ伯爵家と言えば、メレテナール公爵家、オッテンヤー侯爵家、ゼッセローニ子爵家と並ぶエイヴィスティン王国四大貴族商会の一角。

 メレテナール公爵家とモルチーダ伯爵家は、商会長が夫人なので、ここにエイヴィスティン王国の経済界を担う重要人物が2人もいたとは。

 そんな2人を乗せる馬車が魔物に、しかも普段は出ることのない高Lvの魔物に襲われたとなると...

 そんなことを考えていると、キリーナスさんから声が掛かった。


 「何しているの?ライル君、早く入りなさい。」

 「わ、わかりました。」


 考えても仕方ないか、常時発動の〈気配察知〉には敵意ある者の気配は感じられないし、たとえここ周辺に人がいたとしても、敵意がないのなら、任意発動の〈気配察知〉を使ったとしても、依頼を受けた冒険者とかと区別がつかないだろう。

 キリーナスさんも別に気にしていないようだし、ここから王都までの街道にはもう、魔物はいないみたいだし、大丈夫だろう。

 もし魔物が出たとしても、騎士団の人たちが何とかしてくれるだろう。それよりも今は、


 「そう言えば、ゴルゴーブさん、馬はどうするのですか?」

 

 僕は、気になっていたことを馬車に乗る前にゴルゴーブさん聞く。すると、キリーナスさんが


 「ゴルゴーブ、馬がどうかしたのですか?」


 ゴルゴーブさんが僕に答える前に、キリーナスさんがゴルゴーブさんに質問をした。


 「はッ、奥様。実は、我々の馬が数体先程の戦闘で逃げ出しまして、これでは到着時刻に遅れが出ることになるかと。」

 「あら、そう。それは大変ね。馬の躾はしっかりしていたのかしら?」


 キリーナスさんの口調は穏やかだが、明らかにご立腹のようだ。

 メレテナール公爵家現当主、マセット・マミラ・メレテナール公爵は、エイヴィスティン王国王宮騎士団第一団体副団長を務めていた程の強者である。

 そのメレテナール公爵は、学園時代の同級生でお互いに婚約者が決まっていた、アドルクス公爵(家の父)とは旧知の間柄なのだ。

 因みにその婚約者は今の、各公爵夫人なのだが、4人とも学園出身で公爵同士、夫人同士が同級生だったこともあり、昔からかなり仲が良いらしい。

 そのこともあり、お互いに子供が生まれたら許嫁としようということになったそうだ。メレテナール公爵家の長男、ネスフ・マミラ・メレテナールとは会ったことはないが、将来義兄になる予定の人なので、良い人だったら良いのだが。

 キリーナスさんは優しいが、躾には厳しいようなので、万が一にもネスフさんが酷い人ということはないだろう。

 マリーナもとても品の良い、theお嬢様という感じの良い娘だしな。

 そんなキリーナスさんは、夫が元エイヴィスティン王国王宮騎士団第一団体副団長だったこともあり、かなり気迫がある。

 そんな人から叱られようものなら、幾ら騎士と言ってもかなり堪えるようだ。

 現にゴルゴーブさんは跪いているが足は少し震えている。これが立っていたのであれば、かなり目に見えて震えていたことだろう。

 そんな中、ゴルゴーブさんは意を決したように口を開き、言った。


 「ハッ、それは無論、普通の魔物が出た程度であれば、何の問題もなく、寧ろ魔物に攻撃を仕掛ける程に躾てありましたが、今回は相手が相手でしたので。」


 何とか、言いたいことを噛まずに言い切れたゴルゴーブさんは明らかにホッとしている。先程の返事より、少し声が高くなっていたがそこは黙っていよう。

 その報告を聞いたキリーナスさんは、仕方ないというような顔をして、


 「今回は不問に処します。ですが以後このようなことがあれば、それなりの罰を受けてもらいます。足は、そうですね、いざという時に戦えなければ意味がありませんので...あっ、そういえば先程、ライル君は光属性の治癒魔法を使っていたわよね。」

 「え、えぇ。」


 いきなりこちらに質問が来たので驚いたが、〖恐怖耐性Ⅹ〗のおかげかなんとか、普通に答えることができた。

 というか、しまった。見られていたか。僕の普段のステータスでは、火属性、闇属性、時空魔法しか使えないことになっているのだが。

 光属性が使えていたところを見られると、後で親に言われると齟齬が出てしまう。何とかごまかさないと。


 「先程使ったのは、【癒しの水晶】でして、僕は光属性や、回復魔法の適正はありませんから。」

 「【癒しの水晶】かぁー。あれって、使用回数に制限があったわよね。」

 「はい。回復の度合いによりますが、10回が限度かと。今回はかなりのレベルの回復でしたから、もってあと1度かと。」

 「ごめんね。あれも安いものではないのに、身を守るためにスモーツさんが渡してくれたのでしょう。」

 「いえ、以前に捕縛した盗賊の所持品でしたから。全然問題ありませんよ。」

 「そう、そう言ってくれると助かるわ。」


 良かった、何とかごまかせたみたいだな。【癒しの水晶】は今回の件にぴったりだったからな。それに今持っていないし、使い切ったということにしておきたいな。


 「使っても構いませんよ。何に使うのかは触れないでおきますが...」

 「そう?王都に着いたら、その分のお金払うわね。よし、じゃあ、ゴルゴーブ、全騎士達に伝えて。あなたたちは走って王都まで向かいなさい。いざという時はライル君が回復してくれるから。それでは出発。ほら、ライル君馬車に乗って。」

 「ハッ...」「はい...」


 ゴルゴーブさんと僕はそれぞれにキリーナスさんの言に返事をして、それぞれ先のことへの不安断ち切ることができないまま再出発した。

 

・・・・・

・・・・・

・・・・・


 馬車に乗ると、中には先程話に出た、モルチーダ伯爵夫人とメイドが2人乗っていた。

 馬車はその外見からは想像できない程の広さがある。馬車の中とは思えない、前世のスイートルームを思わせる程の調度品の数々。

 まぁ、同じ公爵家である家の馬車もこんな感じなので、今更そこまで驚くことはないが、この馬車だけでも、平民が一生遊んで暮らせるだけの財が使われていることだろう。

 貴族は他家に侮られることがないように、こういったものには財を惜しまない。

 実際、(アドルクス公爵家)も屋敷内や他人に見せることがある者には、かなりの財を割いている。中でも一番の自慢は書庫だ。国内で2番目の蔵書数を誇るらしい。

 馬車内のメイドは見たことがある人たちだったので、軽く会釈をする。問題はもう一人だ。

 ミルクティーブラウンのミディアムボブで、軽くカールのかかったその髪は、妙に目を寄せ付ける。馬車に乗った時からじっとこちらを見ている、恐らくこの女性がモルチーダ伯爵夫人だろう。

 ずっと、こちらを見られていては落ち着かないので、こちらから声を掛けることにした。


 「お初に御目にかかります、モルチーダ伯爵夫人。私はライル・ベリル・アドルクス、アドルクス公爵家の長男です。モルチーダ商会のお噂はかねがね伺っております。」

 「そうですか。それは光栄です。ライル・ベリル・アドルクス様。」

 「ああ、ライルで結構です。あまりそういうのが好きではないので。」

 「そうですか。わかりました。もしよろしければ、私のことも、マリッタとお呼び下さい、ライル様。お話はキリーナス様より伺っております。随分と腕がお立ちになるようで。先程は助けていただいたこと感謝いたします。」

 「ハハッ、それ程でも。」


・・・・・

・・・・・

・・・・・


 どれくらいの時間がたったのだろうか、キリーナスさんとマリッタさんと3人で、メイドが淹れてくれた紅茶を飲みながら他愛もない話をしていると、メイドの一人がキリーナスさんに耳打ちをした。すると、次はキリーナスさんが口を開いた。

  

 「2人とも、もうすぐ王都に着くそうよ。」


ということで、やっと第2章完結しました。

平成の時代が終わるまでに、第2章を終わらせたかったのですが、既に令和になってから1か月以上が過ぎています。時間が過ぎるのは早いものですね。

途中紛らわしい後書きを何度もしてしまい、すいませんでした。(2019年6月17日削除済み)

気が付けば、あんな詐欺まがいの後書きをしてから、4話も伸びてしまっていました。

現実の時間では1か月と少し。

文字数にすると、15000字を超えているでしょうか。

もっと早く書けるようになりたいです。

第2章完結予定だった第20話から計算すると、約25000字伸びてしまったわけです。

行き当たりばったりは良くありませんね。今回のことで痛感致しました。

今後は、ある程度ストックしてから更新する、なんてことになるかもしれません。

ですが、できれば1週間、少なくとも1か月に1話は更新したいと思っています。

今後とも宜しくお願い致します。


次回より、新章エイヴィスティン王国王都篇開始です。


脱字報告、評価、ブクマ登録、感想、レビュー、Twitter等、もしよろしければお願いします。


Twitter:@Yahiro123narou

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