↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/47

第26話 瞬殺と新たな公爵家

 僕が剣を取り出す間、ハイイビルダークウルフは一切動かなかった。余程余裕があるのか、この状況を楽しんでいるのかは知らないが、犠牲が出ている以上、こちらは本気で挑むつもりだ。

 僕は赤く煌めく剣を、右手で持ち構える。[煌振流剣術中伝・扇状斬]剣技の美しさを煌めきにより、表現するために作られた、剣術流派、煌振流剣術の中伝の技。その名の通り、扇状に超高速で斬撃を食らわす。

 剣技を光で表現するため、光る剣、魔剣などでないとその美しさは見ることができないが、それでも攻撃は通るので、どんな剣でも一応攻撃としては成立する。

 今回はヒヒイロカネ製の剣であり、その上、魔剣でもあるので、この流派にピッタリである。

 魔剣、それは、魔法が付与された剣を指す。中でも強化魔法が付与されているものが多い。他にも攻撃魔法や、回復魔法の付与されたものもある。

 市場で売られている魔剣の、付与されている魔法は普通1つか2つで、高価なものだと3つのものもある。オーダーメイド品だと5つくらいは付与されているものもあるようだ。

 遺跡などから発掘されたものや、高難易度のダンジョンの踏破報酬などでは、それ以上のものも出てくることがあるそうだ。

 因みに10以上の付与がなされた魔剣は国宝級である。そう滅多に手に入るものではないが...

 付与できる魔法の数はその剣の素材も大きく係わってくる。この剣のように100%のヒヒイロカネならば、国宝級も夢ではない素材である。

 この剣に付与された魔法は、無属性魔法〘伸縮自在(テレスコーピック)〙〘斬撃強化スラッシュストレングス〙〘耐久力上昇(デュラビリティライズ)〙〘追加攻撃アディショナルアタック〙火属性魔法〘火焔球(フレイムボール)〙の5つだ。

 かなりの業物のようで、ワーライドに着く前にも少し試しに使ってみたが、かなり切れ味も良く、自由に大きさが変えられるので、とても使い勝手が良い。

 こんな業物を用意してくれていた父には、感謝の言葉もない。次会った時には、何かお礼をしたいものだ。

 そんな超高額であろう魔剣を取り出したことで、騎士達も驚愕しているようだ。これ程の魔剣を持っている時点で、普通の人間(平民)でないことは明らかだろう。

 しかし、あの馬車に描かれている紋章は...いや、取り敢えずは、討伐が優先だな。

 僕は、見覚えのある紋章が描かれた馬車や、騎士達の未だ戻らぬ驚愕顔を余所目に、ハイイビルダークウルフへと剣を構え、踏み込み、次の瞬間、ハイイビルダークウルフの眼前へと至る。

 相手に瞬きする暇さえ与えず、たとえ目を見開いていたとしても、視認できない程のスピードで距離を詰める。

 近距離での戦闘では、スピードが命である。実力差があったとしても、一瞬の隙を突くことができるほどにスピードがあれば、勝機はある。

 先に動いた方が負け、等とよく言われるのは、互いの実力が拮抗している状況の時に限る。それも隙を見せた方が、攻撃されるというだけなので、結局は相手を凌駕するスピードと攻撃に対応する反射神経があれば、問題はない。

 今は、冒険者組合(ギルド)に行った時と同じ、レベル3まで【制御腕輪コントロールブレスレット】を開放している。

 ハイイビルダークウルフとのLv差はそこまでないにしても、種族間でのステータスの差があるため、僕の方が圧倒的に有利だ。

 だから僕は焦らず落ち着いて、必要最低限のスピードでハイイビルダークウルフの眼前へと迫ったはずだったのだが、予想以上にスピードが出たらしい。

 突然目の前に現れた僕に、ハイイビルダークウルフが初めて表情を変えた。しかし、それも一瞬の出来事であった。

 ハイイビルダークウルフが僕を認識した時には既に、僕は魔剣を振るっていた。

 ハイイビルダークウルフは吃驚し、目を見開くが、それと同時に、ハイイビルダークウルフの身体には扇状に幾許もの創痕が現れ、その傷口は次第に広がり、多量の血を吹き出し、ハイイビルダークウルフの身体は薄くスライスされた。

 傍から見れば、僅か数秒にも満たない転瞬の間の出来事であった。それこそ瞬きしている間に事が終わっている程に。

 子供が消えたかと思えば、魔物の前に既に移動しており、そうかと思えば、魔物が噴水のように血を吹き出しているのである。残っていたのは、無残な姿に成り果てたウルフの上位種と、その原因となった剣の軌道を描いた赤く鮮やかに輝く扇の残光のみであった。

 僕は、戦闘を終え、剣を鞘にしまい、倒す際に唯一傷をつけなかったハイイビルダークウルフの角を回収し、魔法で返り血などを落としてから騎士達の方へと向かった。

 

 「終わりました。」


 僕が、そう先程の騎士に告げると、数瞬の後、騎士は答えを返してきた。


 「ああ、助かった。感謝する。」

 「いえ、困った時はお互い様です。それに、恐らくその馬車に乗っておられる方とは、面識があると思いますので。」


 そう僕が返すと、騎士は少し驚いたような顔をしたが、すぐに納得したようで、


 「やはり、貴殿は高貴なるお方であったか。」


 そう言ってきた。僕は、前々世でも前世でも、このような扱いは受けていなかったので、特別扱いされるのは苦手なので、身分を隠しているが、まあ、知り合いの護衛なので、構わないだろう。


 「高貴なのかはわかりませんが、一応貴族の出ですね。」

 「やはりか、いや、失礼した。騎士という身でありながら、守らなければならない御方を危険に晒した上に、本来守るべき立場の方に逆に助けられるとは、不甲斐無い。助けていただけたこと誠に感謝する。申し遅れたが、私は、メレテナール公爵家騎士団第2部隊隊長、ゴルゴーブ・メナッセオだ。言葉遣いが悪いのは、見逃していただけるとありがたい。」


 やはり、メレテナール公爵家の騎士団だったのか。メレテナール公爵家と(アドルクス公爵家)は、親同士の仲が良く、幼い頃から何度も遊びに行ったことがある。それに...


 「別に構いませんよ。僕も特別扱いされるのは苦手でして、ゴルゴーブさんとお呼びしても?」

 

 すると、ゴルゴーブさんは少し驚いたような顔をしたが、やがて、

 

 「喜んで。」


 そう、笑みを浮かべながら答えてくれた。


 「ところで、馬車に乗っている方々はご無事でしたか?」


 僕がそう聞くと、

 

 「ああ、おかげさまでな。少しかすり傷を負ってしまわれたようだが、既に治療は済んでいる。本当に感謝する。主の無事も確認できたので、これから本来の目的地である王都へと向かいたいとこなのだが...」


 ゴルゴーブさんは、そこで言葉を詰まらせる。


 「何か問題が?」

 「ああ、先程のウルフ共との遭遇で、我々の馬の何体かが逃げてしまってな。幸い馬車馬は御者が抑えていたので問題ないが、我々騎士の足が無くなってしまった。これでは、かなり時間に遅れが出てしまう。」


 成程、それは大変だが、僕も流石に馬は出せない...こともないが、迂闊にそんなところを見せるわけにもいかない。


 「取り敢えず、馬車の中の方々に挨拶してもよろしいですか?」

 「ああ、すまない。これからのことを気にしすぎて、すっかり忘れていた。奥様()もお礼を言いたいと仰っていたのだった。付いて来てくれ。」


 僕は、ゴルゴーブさんの話を聞いて疑問に思ったことを考えながら、後に付いて行く。

 奥様というのは、メレテナール公爵夫人のことだろうが、方とはどういうことだろう。

 メレテナール公爵本人が乗っていたなら、騎士と一緒に戦っていただろうし、夫人のことだから、子供に戦わせたりはしないだろう。ならば、会ったことはないが、息子さんが乗っているのだろうか。それとも...

 そんなことを考えている内に、馬車の前までたどり着いていた。馬車はこれ以上にない程の純白の車体に金の装飾が程よく施され、メレテナール公爵家の紋章も、目立ち過ぎないが、人目を寄せ付ける。

 戦闘が間近で起こったにもかかわらず、汚れが一切見受けられない。透明度は高いが、外からは中の様子を見ることはできない窓や、その周囲を綾なす繊細な細工からは、決して派手ではなく、優雅さが醸し出されている。

 

 「奥様、連れて参りました。」

 

 ゴルゴーブさんは扉を叩き、中に声を掛ける。すぐに中から扉が開き、と同時に何かが飛び出してきて、僕に抱き着てきた。

 

 「ライル君大丈夫?」


 その声から抱き着いてきたのは、メレテナール公爵夫人ということが分かった。そして、豊かな双峰が僕の顔を包み込んでいる。


 「だ、大丈夫です。怪我もしていませんから。それより、離れて下さい。」


 僕がそう言うと、名残惜しそうにしながらも、離れてくれた。すると、髪はプラチナブロンドのセミロング、アクアマリンのように鮮やかで美しい碧眼で整った顔立ちをした、メレテナール公爵夫人がその瞳を潤ませながら、しゃがみ込んで、僕の目線に合わせてくれた。


 「ごめんね。私はあの人と違って、戦ったりできないから...ライル君を危険な目に合わせちゃったね。」


 どうやら、かなり心配してくれていたらしい。窓から見られていたのだろうか。


 「大丈夫ですよ。それよりご無事で何よりです、キリーナスさん。」

 「ありがとう。どこか痛いところがあったら、すぐに言ってね。そ、れ、と、()()()()()でいいのよ。」


 メレテナール公爵夫人こと、キリーナス・マミール・メレテナール夫人はそんなことを言ってくる。

 キリーナスさんが言っているのは、メレテナール公爵家の御令嬢、マリーナ・マミール・メレテナールと僕が、親同士の決めた許嫁だからだ。

 僕は毎度のごとくそれを、微笑を浮かべながら、さらりとかわす。


 「今日は、マリーナは一緒ではないのですか?」


 いつもなら、キリーナスさんと一緒に出て来るマリーナが、今日は出てこないということは...その答えはすぐにキリーナスさんから帰ってきた。


 「そうなの。今日はマリーナはいないの。急な王城からの呼び出しで、あの人がこの間王都に向かったのだけど、連絡ミスで本当は私に用があったみたいなの...シルビアも呼ばれているはずよ。エイヴィスティン王国公爵家全ての夫人が呼ばれているみたいだから。マリーナももうすぐ学園の入学試験だから、そろそろ家を出ているころだと思うわ。」

 「そうですか。母も王都へ向かってきているのですね。」

 

 僕がそう答えると、キリーナスさんはそういえば、という顔をして質問を投げかけてきた。

今回も、4000字を超えてしまい、予定より更新も遅くなってしまいました。

3000字を超えたあたりで、4000字超で書き切れるか、とも思ったのですが無理でした。

4000字を超えてしまったので、ここで切ります。

次回が確実に第2章最終話とします。何度もすいません。

前回までのこの紛らわしい後書き等は、そのうち削除したいと思います。(2019年6月17日に削除済み)


ということで、気を取り直して、新事実発覚。

ライルには許嫁がいたのです。もともと、連載開始当初から許嫁は出したい、と思っていたのでここでその設定を出すことにしました。

許嫁本人は、残念ながらまだ出ていませんが、もうすぐ登場することでしょう。


次回、王都に向けて再出発。

これからもよろしくお願いします。


誤字脱字報告、評価、ブクマ登録、感想、レビュー、Twitterフォロー等、もしよろしければお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。