第23話 決着と帰宿
令和最初の更新です。
「紅葉、支援するよ〘防御力上昇〙〘攻撃力上昇〙〘被害軽減〙〘衝撃吸収〙〘魔力回復〙〘魔力譲渡〙〘損傷緩和〙〘創傷治癒〙〘体力回復〙〘疲労回復〙〘元気回復〙〘加速〙〘絶対命中〙〘属性強化・火〙〘属性強化・水〙〘属性強化・光〙〘属性強化・闇〙〘属性強化・雷〙」
僕は紅葉に有効な今思いつく限りの支援魔法を発動した。
〘魔力回復〙では、紅葉のMPは全快できない。その為、僕のMPを譲渡することで、紅葉のMPを全回復させた。
今回、障壁系の防御魔法を発動しなかったのは、制限があるからだ。障壁の魔法は大抵の場合、数回攻撃を受ける、若しくは強力な攻撃を受けると消滅してしまう。その為、致命傷を避ける障壁の魔法は戦闘中に掛けることもあるが、その他ではあまり使われることはない。
それに今回は、支援魔法をかなり発動した上に、紅葉に譲渡もしたので、僕のMPは結構減ってしまった。その為これ以上減らすと少し危険だ。しかし、回復も始まっているし、まだ余裕もある。いざとなれば、僕も参戦できるようにはしておかないと。
僕が支援魔法を掛けたことに気づいた紅葉は、態々丁寧にお礼を言ってきた。
「主様、ありがとうございます。」
「うん。それはいいから、戦いに集中して。」
「了解です。」
先程まで少し不安気だった紅葉に、今はそれが一切感じられなくなった。支援魔法が効いたようだ。黒烏達の結界ももうすぐ完成しそうだ。
先程まで勝てる気満々だった怠惰の魔王も、紅葉が回復していることにことようやく気付き、支援魔法を掛けた僕に鋭い睨みを利かせてきた。そして、僕に魔法で攻撃しようとするが、そんなことを紅葉が許すわけがない。案の定、僕に魔法を放つ前に気が付いた紅葉によって、怠惰の魔王の攻撃は阻止される。
「ッチ。小童が余計な真似をしよって。」
紅葉によって僕への攻撃が不可能と判断した怠惰の魔王は、僕がまだ攻撃に参加する様子の無いところを見て、紅葉に完全に集中し直した。
怠惰の魔王もさすがに余裕がなくなってきたのだろう。残りMPも僅かになり、HPもかなり減っている。
すると、
「鳳凰様、準備が整いました。」
黒烏達の結界生成の準備がようやく完了したみたいだ。
眷属達の報告を受け、紅葉が一羽ばたきし、怠惰の魔王と少し距離をとる。すると次の瞬間、怠惰の魔王の周囲に結界が出現する。大きさは先程のものと然程変わらないが、明らかに違う点がある。それは色だ。
通常、結界は強度が増すほどに濃い色へと変わる。時間を掛ければ、色を限りなく透明に近い、そこにあると認識させないレベルにまで、することも可能だ。しかし、今回はそんなことを気にしている暇はなかったので、かなり色がついている。先程の結界は白の半透明だったのに対し、今回の結界は鼠色といった感じの色だ。
魔法の属性は相性があるので、風属性に弱い土属性での結界生成は不可。闇属性での結界生成も不可。なので、黒烏達の魔法適性では無属性しかなかったのだろう。
今回はかなり強度の高い結界だ。〘圧迫破壊〙でも恐らく破壊は難しいだろう。それに、
「今度は決めます。二十六段魔法〘天空雷炎〙」
紅葉の特級魔法が発動されると同時に、辺りが暗くなる。空を見上げると、怠惰の魔王を中心に先程まで青空に広がっていた場所には、巨大な黒雲が現れている。黒雲からは、絶え間なく雷鳴が轟き続け、黒雲は不気味なほどに雷光が見え隠れする。
数秒後、一際大きな雷鳴と共に、巨大な赤く燃えているかの如き稲妻が、怠惰の魔王に突き刺さる。
「グワァーアーーー」
黒雲が現れ、より一層焦りながら結界を破ろうと四苦八苦していた怠惰の魔王が、辺りを揺るがすほどに唸る。
そして紅葉の会心の一撃により、怠惰の魔王の身体、トーガが燃え尽きる。
鶏肉を焼いた時のような香ばしい香りはとうに過ぎ、辺りには血の臭いと、炭や煙の臭いが立ち込めていた。その焼死体による独特の死臭や、トーガの死体から、やはり心が痛んだが、今は目の前にいる怠惰の魔王に集中する。
トーガが死んだことにより、身体を失った怠惰の魔王は、本来のポゼッションスケルトンの姿で宙に浮いていた。大きさも形も人間の骸骨のような見た目だが、足の骨が無く、そこから煙のようなものが伸びている。鎧などの防具類は一切身に着けていない。
先程黒烏達の張った結界がまだ持続しているので、怠惰の魔王はいくらアンデッド系の魔物といっても、レイスやゴーストのような特別な結界でないと効かない霊体と違い、憑依系であろうがスケルトンなので結界の外へは出られない。
ようやく観念したのか、動かなくなった怠惰の魔王は口の骨格は動いていない上に、声帯も存在しないが、話しかけてきた。
「流石は鳳凰とその眷属、それに鳳凰に主と認められた人の子よ。想像以上の強さだった。魔物達を呼び寄せる暇さえなかったわ。しかし、我を倒したところで、新たな怠惰の魔王が生まれる。どうだ、ここは我を封印してみては。」
そう提案してくる怠惰の魔王には、紅葉の特級魔法を食らう前よりも焦りの色が見える。それに今まで殆ど喋ってなかったくせに、いきなり長々と喋りだすから何かと思えば...
僕が呆れて答えを返すことすら面倒に思っていると、近くに戻って来ていた紅葉が答えを返した。
「そんな馬鹿な真似するわけがないでしょう。そこのロック鳥のような被害者を今後出さないためにも、お前には今ここで死んでもらいます。」
「いや待て待て待て。我を倒しても新たな怠惰の魔王が生まれるのだぞ。」
紅葉の返答で更に焦った様子で怠惰の魔王が問いかける。しかし、そんなこと紅葉は気にした様子もなく、
「そうなればまた倒すのみ。話は終わりです。神聖魔法〘範囲内掃滅〙」
「グギャアァーーアァーーーーー」
紅葉のアンデッドには脅威な神聖魔法で止めを刺された、怠惰の魔王の苦痛の絶叫が【怠惰の森林】に木霊した。しかし、その山彦は喜びの合唱のようにも聞こえた。
「主様、終わりました。」
「うん。ありがとう。」
紅葉の掃討完了の報告に力なく返した僕の目線の先に、トーガの死体があることに気が付いた紅葉は、
「主様、ルフ達の元へ運んではどうでしょう。彼等の埋葬方法で弔ってくれるやもしれません。」
「そうだね、そうしよう。」
紅葉の提案に乗った僕は、黒焦げになってしまったトーガの死体を【アイテムボックス】に入れて、その場所を去った。
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その後、ルフ達ガ族の元へ戻り、事の顛末を伝えると、誤解が解けたことで、ガ族の者全員で弔ってくれるということだった。あと、ルフにトーガから聞いた裏の者達のこともそれとなく伝えておいた。簡単に伝えただけだったが、流石は長、すぐに理解し、準備が整い次第、粛正していくらしい。
ガ族の元を離れ、ワーライドの城壁近くまで戻ってきた僕は、紅葉達を戻してから城門前の列に並んだ。
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初めに来た時と違い、普段のステータスと外見に戻していたため、公爵家の子息が何故一人でいるのか、どうやって来たのかと、色々と聞かれたりして、少し時間を食ってしまったが、無事にワーライドに入ることができた。
今度からは検問所を通る際は、ステータスを偽っていた方が良いかもしれない。そんなことを思いながら歩いていると、自分の腕に嵌まっているものを見て、今更あることに気が付き、自分の未熟さを思い知った。盗賊と出会った時も、僕は【制御腕輪】をしていた。
なので、もしあの時〖絶対防御〗が発動していなければ、確実に怪我をしていただろう。こういう抜けているところは直していかないとな...
新たな課題を見つけ、それも視野に入れたトレーニング方法を考えながら、宿へと向かった。
ということで、第2章 ワーライド篇~vs怠惰の魔王~完結。
なのですが、まさかこんなに伸びるとは思っていませんでした。
もう、ワーライド篇ではなく、VS怠惰の魔王篇とかに第2章のタイトル変えようかな、なんて思ってしまうほどです。
私は1話3000字を目安に書いているのですが、予定だった第20話での第2章完結から約10000字オーバーとなってしまいました。平成の間に第2章完結させたかったのですが...。
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ネタバレ注意
正直結構大変でしたが、第28話から始まる第3章 エイヴィスティン王国王都篇からは新キャラも続々登場しています。ヒロインも早く登場させたいのですが...。
第4章はいよいよ学園篇になる予定です。
今後ともお付き合い宜しくお願い致します。
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