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第22話 解決と決心

 森を出ると、初めに出会ったのは運よくウェストーナの衛兵2人組だった。警邏中だったようで、事情を掻い摘んで説明すると、1人が仲間を呼びに行ってくれた。その間、残ったもう1人に詳しい経緯を話していた。

 衛兵達は僕のことを知っていたようで、仲間を呼びに行った人がアドルクス家()にも連絡に行ってくれるそうだ。

 暫くすると、先程の衛兵ではない3人の衛兵が新たにやって来た。若い衛兵だったのもあってか、僕のことを知らなかったようで、「本当にこの子が?」等といろいろ言ってくれているみたいだが...情報共有はしっかりとできているようだ。

 僕の家まで行った衛兵が、クルード、ユーリ、レードを連れてやってきた。家の使用人の3人、ユーリは特に心配していたが、僕に怪我がないことを確認して、かなり安心したようだった。

 これからは、心配をかけるようなことは控えないとな。

 衛兵5人と、3人を連れて、洞窟へと向かう。道中で、ユーリに「こんな奥まで来ていたのですか?」等と少し心配というか、説教というか、をされながら。

 洞窟の近くまで来たところで、バレないように結界を解除する。結界生成は高度な魔法である。念の為、バレてしまった時のために、闇属性の結界にはしておいたが、バレないに越したことはない。

 結界解除を誰にも気づかれずできたのは、この場に魔法が得意な者(魔法師等)がいなかったからだろう。MPが多い者程、魔法が発動又は解除されたことに敏感になる。この場にMPが3000を超す者がいなかったことが幸いであった。

 洞窟内で、息絶えている大男と、魔法で拘束された2人の男を見て、衛兵達が驚いてこちらを見ていたが、僕が幼い頃から魔法を使えていたことや、家庭教師よりも強くなっていたことを知っている使用人の3人は、そこまで驚いてはいなかった。僕は恥ずかしいことに、ウェストーナでは神童と呼ばれていた。それもあってか、衛兵達も暫くすると、盗賊を捕らえ始めた。

 衛兵の駐在所まで戻ると、簡単な手続きだけ済ませ、家へと帰った。事情は粗方説明し終えていたし、僕の身元もはっきりとしているので、事情聴取はすぐに終わった。盗賊の報奨金等は後日、盗賊の身元確認等が終了次第、家まで届けるとのことだった。

 家に帰ると、エリスや使用人の皆がかなり心配していたが、しっかりと事情を説明し、安心してもらうことができた。父母が帰宅すると、使用人から聞いたのか、すぐに僕のところまできて、僕を力強く抱きしめてくれた。前々世では感じられなかった家族の愛を、いつも以上に感じることができた。

 出発の前日に、報奨金や盗賊の持ち物(戦利品)が届いた。それなりに有名な盗賊だったようで、それなりの額と戦利品だった。盗賊等、罪人の捕縛と討伐では報奨金に差がある。捕縛の方が高くなるのだ。討伐、つまり殺してしまうと、その者に強制労働等の刑罰が与えられないため、国の利益は被害が無くなる、という点のみになるからだ。

 報奨金は普通、その地の領主に所得税等が支払われ、税が引かれた分が渡されるのだが、この地の領主はアドルクス公爵、つまりは父だ。そのため、父は所得税分も全額僕のものとし、これからの資金としてくれた。

 戦利品は盗賊が身に着けていたものと【アイテムボックス】内の品の中で、元の持ち主が不明若しくは、元の持ち主死亡の品は、捕縛、討伐者が受け取ることができる。

 【アイテムボックス】内の品は、特別な魔法具を使用することで、死者のものは取り出すことができる。魔法でも可能だが、かなり高位のものでないと不可能だ。僕もその魔法を使ったことがないので、使えるかどうかわからない。実験しておくべきだったかもしれない。

 一方、生者の【アイテムボックス】内の品はこれもまた特別な魔法具で確認することができる。自身の物、盗品問わず、盗賊は逮捕時に全て没収される。生者の【アイテムボックス】内の品を他者が取り出すことのできる魔法は聞いたことがない。

 盗賊の所持品は、全て引き渡しの時に衛兵に渡しておいた。それと盗賊の【アイテムボックス】内の品を合わせた中で、元の所有者に帰った品は1割にも満たなかったようだ。かなりの品が僕のもとに届いた。一応、全ての品を鑑定し、呪い等が付与されたものがないことを確認し、受け取った。大男の両手剣も入っていた。鑑定してみるとそれなりの業物だったようだ。

 そして、僕は次の日旅立った。人を初めて殺めて数日しか経っていないことを、皆心配してくれていたが、この世界で生きる限り、これから何度となく経験することになる。この程度でへこたれていては生きていくことができない。しかし、加減はできるよう練習しようと思える程度には、このことは吹っ切れていた。






◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎     ◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎






 紅葉は今も僕の目の前で怠惰の魔王と交戦している。僕がまだ、話したことのある相手との戦闘経験が少ないこと、怠惰の魔王の今の身体、トーガを傷付けるのを恐れていることに気が付いていたのだろう。

 黒烏達の結界生成もかなり進んではいるが、まだ時間がかかりそうだ。しかし、紅葉のMPはもう僅かしか残っていない。怠惰の魔王の方も紅葉程ではないにしてもかなり消耗している。

 しかし、このままでは紅葉のMPが結界が完成する前に尽きてしまう。

 僕は、あの初めて獲物を殺した時に感じた、あの感覚に襲われるのが怖い。「殺す」という行為に慣れ、その行為を何とも思わなくなってしまうことが怖い。しかし、折角従魔になってくれた紅葉や三足烏達を失うのはもっと怖い。僕は決心した。

 ここまでの道のりで、ある程度の魔物や魔獣を狩り、血を見ることは平気となっていた。しかし、ここまで強大で、強力な魔獣を相手したことは勿論、倒したことなどあるはずもなかった。それに、会話をした相手を殺すというのは、盗賊の時に1度しただけだ。その時も相手の血を見たわけではない。

 この怠惰の魔王を倒すには、本体のポゼッションスケルトンを、ロック鳥のトーガの身から追い出さなければならない。

 僕は、紅葉達に加勢する方法を3つ考えた。一つは、そのまま僕も紅葉と共に、怠惰の魔王に攻撃を仕掛け、結界生成完了までの足止めをする紅葉と共闘する方法。一つは、紅葉にMPを送る、支援魔法をかける等、助勢をする方法。一つは、結界生成をしている黒烏達に加わり、結界生成を早める方法。

 最後の方法は、恐らく今の僕には難しいだろう。ただでさえ、非常に集中力を要する結界生成を、他者と協力して結界生成など、したこともないことをぶっつけ本番でするのは危険すぎる。途中から結界生成に参加するのは、そういう道を極めたものでも難しいと聞く。そんなことをまだまだ素人の域を出ない僕が出来よう筈がない。その為この案は却下。

 最初の方法は、紅葉としっかりと連携が取れていないと、大変なことになる。前世でのゲームのように、フレンドリーファイア無効等という、ある種チートのようなことはできない。そのため、今までそういう練習、他者との連携を目的とした練習はしてこなかったため、これも難しいだろう。これからは、ある程度そういうのも訓練した方が良いかもしれない。

 よって、2つ目の方法が残った。紅葉の支援をするという方法だ。それなりに支援魔法の練習はしてきたつもりだが、そもそも、共闘は殆ど初経験のようなものである。ヒーラー等の支援を生業とする者には、遠く及ばないだろうが、MP総量や、魔法の知識については自信がある。

 早速紅葉に、簡単な支援魔法を発動する。

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