【配信】 ペットを飼いました
カタッターに上げた画像は主に八代に近づこうとしていた女性たちにはクリティカルヒットしていたが、碌に通知を見ない八代はそのことに気づかなかった。
そのことは後に某Sさんによって真相が解明される。
「わかっててやった。悔いはない」と。
こうして裏で八代争奪戦がひっそりと幕を開けるのだった――。
◇◇◇
「今みたいな感じはどうでしょうか?」
ルシルが提案をしてくる。
きっかけはカタッターのDMに来ていたユキさんのメッセージだった。
『ゆ、柚月君!? もしかして、椎と付き合ってるの!?』
慌てた様子なのはおそらく妹のことだからだろう。
当然ながら僕の返事は決まっていた。
『椎とは友達だよ』
しかし、これでは面白く、もとい平凡すぎるとルシルに言われて一緒に返答の仕方を考えていたのだが、ルシルのものはあまりにもネタに走りすぎている。
そもそもそれだとまるで僕がみんなからモテているように見える。
そんなことあるはずないのに……。
結局僕は自分で考えた本文をそのままユキさんに送るのだった。
◇◇◇
「みなさん、こんばんはー。探索者ではないただの一般人、柚月八代です。大事なことなのでもう一回。探索者ではない柚月八代です!」
“なんで挨拶が二回?”
“こんばんはー”
“ペットがただのペットであるはずがない件”
「なんか最近よく探索者から勧誘されるんですよ。前もそれで決闘しましたもんね。だから最後にもう一回、僕は探索者ではありません!」
“八代たんを堕とせばもれなくレッドドラゴンが付いてくるわけだしな”
“ドライアドもセットだぞ”
“大悪魔インプも”
“それよりも建築ゴブリンがいるんだぞ?”
“友達から始めよう”
“実は俺は遠い親戚なんだ”
「今日は僕の家の庭から配信してます。理由はタイトルに書かせてもらったとおりですが、なんと僕の家でペットを飼うことになりました」
「ペットなのだー!」
「なのー!」
ミィちゃんとティナが盛り上げるために拍手をしてくれる。
「あまりみんなを待たせるのもあれなので早速連れてきたいと思います」
僕はわたがしを抱きかかえる。
「はい、わたがしです!!」
「わ、わふっ?」
「美味しそうなのだー!」
「ま、まるいの-」
「うん、無理に感想を言わなくても大丈夫だよ。とってもモフモフで可愛らしいんですよ。ただ、今日はちょっと緊張してるのかな?」
わたがしは僕の腕の中で震えていた。
“絶対にミィちゃん様の食べ物になるやつだw”
“わたがしw”
“緊張というよりは恐怖?”
“ただの犬が最強ドラゴンと精霊に囲まれてるんだもんな”
“犬……か?”
“犬……に見えるな?”
“犬……というよりは毛玉か?”
“犬っぽい魔物って何かいたか?”
“ケルベロスとかフェンリルとかじゃね?”
“Aランクじゃねーか!?”
“そんなポンポン高ランクが出てたまるか!”
「うーん、慣れないことをすると緊張しちゃうのかな? さっきもみんなでペットショップに行ったときも緊張してたみたいだしね」
「トゲトゲ痛かったのだ」
「あれは普通の首輪じゃないだろうしね」
「かっこよかったけど仕方ないのだ」
ミィちゃんのセンスが未だによくわからない。
攻撃力が高いかどうかで判断してない……よね?
「今日は緊張をほぐす意味合いも兼ねてわたがしにご飯を上げたいと思います!」
そこで取り出したのは先ほど買ってきたドッグフードである。
「じゃーん! ドッグフード! わたがしのご飯だよ」
“犬がドッグフードを食うのか?”
“いや、犬なら食うだろ?”
“魔物なら?”
“肉食いそうだよな”
“フェンリルとかだと?”
“八代たんが食われるんじゃない?”
「はい、どうぞ」
「わっふー!!」
お皿に載せたドッグフードに勢いよく飛びつくわたがし。
あっという間にドッグフードを食べきってしまった。
“あっ、食べるんだw”
“これをみると犬そのものだな”
“犬だと信じたくなってきたんだが?”
“調べてきた。フェンリルだなw”
“俺たちの希望が砕かれた”
“Aランクか……雑魚だな。ここではw”
「これで少しは緊張が解けてくれたかな?」
「わふわふっ!!」
「ちょ、ちょっと待ってね。おかわりが欲しいんだよね」
更に皿にドッグフードを追加で入れる。
するとそれも勢いよく食べてしまう。
「これってそんなに美味いのか?」
「お水のほうが美味しいの」
ミィちゃんが一つ、ヒョイッとつまみ上げると口の中に放り込んでいた。
「あんまり美味しくないのだ……」
「あははっ……、犬用だしね」
「わふっ!? わふわふわふ!!」
このドッグフード以上に美味しい食べ物はない、とわたがしが猛アピールをする。
そして、勝手にご飯を盗ったミィちゃんに向けて大きく口を開けると咆哮と共に巨大な魔力弾を飛ばしていた。
それには撃ったわたがしすら驚いていた。
「わふぅぅぅぅぅ!!!!」
「お、お兄ちゃん、危ないの!」
ティナが慌てて僕の前に木の盾を作り出してその魔力弾を防ごうとしていた。
一方のミィちゃんは――。
「効かないのだ!」
パシッと軽く手で魔力弾を空へと弾いて何もなかったかのように振る舞っていた。
「なんかすごい大声だったね……。ダンジョンの犬は声が大きいんだね……」
驚きのあまり、僕はぼんやり空を眺めていた。
“いやいや、魔力の球が飛んでただろ!?”
“ティナちゃんが木の盾を作ったせいでを見えなかったんだろうな”
“やっぱり魔物だった”
“フェンリルVSドラゴンの怪獣バトルだな”
“原因がドッグフードというw”
【作者からのお願い】
『面白い』『続きが気になる』と思われましたら、是非ブックマーク登録をお願いします。
また、↓に☆がありますのでこれをタップいただけると評価ポイントが入ります。
本作を評価していただけるととても励みになりますので、嬉しいです。




