ペットショップ
僕、椎さん、ミィちゃん、ルシルの四人でペットショップへとやってきた。
正確には腕の中にわたがしとポケットの中にティナもいるのだが、そこは数には入れていない。
「ルシルが悪目立ちしてるかな?」
ルシルの人状態はどこかミステリアスな雰囲気を出しており、近くにいる女性の視線を集めていた。
実際には怪訝な表情をしつつ見下しているのだが。
「なんだか弱そうな魔物ですね。主様の肉壁くらいにはなれるでしょうか?」
ゲージの中に入っている犬をじっくりと観察するルシル。ただその判断基準はおかしいし、居間見ている犬は諭吉が数十枚必要な物である。
とてもじゃないが今の僕では手が出せないので余計なことはしないで欲しい……。
「八代、八代、ここは肉売り場なのか!?」
「ペット売り場だよ。ヨダレは拭いておいてね」
「残念なのだ!」
犬とか猫を肉扱いするのがいかにもミィちゃんらしいが、流石に店員がピリピリしていたので注意する。
「……こっち」
椎さんに案内されて僕たちは首輪のコーナーへとやってきた。
「色々と種類があるんだね」
色とりどりでリードの種類も多数置かれている。
でも、あまりにも数が多くて目移りしてしまう。
「主様、これなどいかがでしょうか?」
ルシルは鉄製のトゲが多数ついたやたら仰々しいものを指差す。
確かに迫力はすごいが、可愛らしいわたがしにはまるで似合わない。
「さ、さすがにそれはないと思うよ?」
「中々殺傷能力が高くて良いと思ったのですが」
「殺傷能力なんて求めてないよ!? ペットって言ったよね!?」
「えぇ、ペットですよね?」
どこかルシルとペット感が違うようだ。
「どうしてペットに攻撃力が必要なの?」
「主様の留守を守り、外敵を追い払う力が必要なのですよね? 番犬……というのですか?」
あながち間違っていないのがまた困る。
「追い払うだけだからね。危険なことはさせないからね」
「そうなのですね。確かに此奴が追い払える外敵などたかが知れてますしね」
「僕たちを見ただけで怯えてたほどだもんね」
僕とルシルは笑い声をあげていた。
その意味合いはまるで違うのだが。
「……色はどうする?」
知らないうちにすでにわたがしの首には赤い首輪が付けられていた。
リードは取り外し可能のもので、普段ダンジョンで過ごす予定のわたがしには窮屈じゃなくてちょうど良さそうだった。
「赤はミィちゃんの色だし、黄緑はティナ。黒はルシルだね。ゴブ君たちは濃い緑って感じだし、青とか?」
「……似合いそう」
早速椎の手によってわたがしの首輪が変えられる。
もう観念したのか、わたがしはまるで抵抗の意志を見せなかった。
「あははっ、八代、見るのだ! すっごくトゲトゲなのだ! 格好いいのだ!」
大笑いしながら先ほどルシルが持ってきた首輪を持ってくるミィちゃん。
「そっか。それならミィちゃんが付けてみる?」
「いいのか!? 付けるのだ!!」
冗談で言ったつもりが本人が真に受けてしまった。
そして実際に付けてみたのだが、不服そうな表情を浮かべていた。
「チクチクして痛いのだ」
「うん、だろうね」
残念そうにミィちゃんは首輪を元の場所へと戻しに行くのだった。
◇◇◇
首輪を選ぶときはおとなしかったわたがしだが、逆にドッグフードを選ぶときは必死に抵抗していた。
確かに元々ダンジョンの食べ物を食べていた、と考えるとドッグフードのような食べ物は食事に見えないのかもしれない。
でも、そうなるとミィちゃんやトカゲ君たちと同じで肉になるのだろうか?
僕たちが迷っているのが店員に伝わったようで、「良かったら試食させてみますか?」と提案してくれる。
試しにわたがしの前にドッグフードを少し置いてもらう。
初めはそっぽ向いていたわたがしだったが、食べないと終わらないと思ったのか、鼻でドッグフードの匂いを嗅ぎ、素っ気ない態度でそれを口に放り込んでいた。
それを一度、二度……と繰り返して気がついたらドッグフード全てを食べきっていた。
「わふわふっ!」
すごく気に入ったようで必死にもう一度もらおうとアピールしていた。
「わかったよ。それじゃあドッグフードはこれを買って帰ろうね」
「わふっ!」
あれだけ嫌がっていたのが嘘のように自分からドッグフードの袋を口で掴み僕の所へ持ってくる。
それも何個も……。
「な、なくなったらまた買いに来るから、とりあえず二つだけだよ!」
「わふぅ……」
どこか落ち込んでいるように見えたがこればっかりは仕方なかった。
「……あとはこれ。私からのプレゼント」
椎さんがわたがしの首輪に骨柄のネームタブを取り付けていた。
そこには『わたがし』としっかり文字が書かれている。
「……私が名付けたから」
「とっても似合ってるよ」
「……んっ。八代くんとの絆」
どこか嬉しそうにわたがしを抱きしめる椎さん。
その光景は思わず写真に撮りたくなるほどに絵になっていた。
「ねぇ、椎さん。これ、カタッターに上げて良いかな?」
「……んっ。代わりにそろそろ名前で呼んで欲しい」
「名前? ちゃんと椎さんって――」
「……『さん』はいらない」
「えっと、椎……でいいの?」
「……んっ」
椎の承諾も得られたことなので、僕はそれをカタッターに投稿するのだった――。
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