閑話 姫乃家を作ろう
決闘をした翌日、僕はティナとミィちゃん、匠のトカゲ君たちと精霊さん、ゴブ君たちを連れて姫乃の家へときていた。
それなりに広い土地がなぜか更地のまま放置されていた。
「ついつい衝動買いしちゃったけど、使い道無くて困ってたんだよ」
「衝動買い? えっ? 土地だよ?」
「うん、そうだよ?」
「あれっ? これって僕がおかしいの?」
「うーん、どうだろう? みずきちもいっちゃんも土地買ってないから私だけかな?」
「あっ、そうだよね。僕がおかしいのかと思ったよ……」
土地を買うのが常識なのかと思ってビックリしてしまった。
「でもようやく使い道ができてよかったよ。私だけの家、欲しかったんだよね。でもなかなか時間かかるでしょ? 待っていられなくて……」
「それじゃあ早速初めて行くけど、どんな感じがいいのかな?」
「えとえと、こんな感じがいいんだよ。できる?」
姫乃さんが見せてきたのは住宅雑誌でおしゃれな感じの家だった。
「どう、ティナ? できるかな」
「簡単なの」
「じゃあお願いできるかな?」
「わかったの!」
ティナが地面に手を付けると次の瞬間に家の構造が出来上がっていた。
「動画で見てたけど、本当に一瞬なんだね……」
「でもこれだけ大きいのは初めてだよね? ティナ、大丈夫?」
「さ、流石に疲れたの。少しだけ休むの」
「うん、わかったよ」
僕の胸ポケットにティナをしまい込むと次の仕事に取り掛かる。
「えっ!? 本当にもう終わったの?」
「うん、動画でも見てたなら一緒だと思うけど?」
「尺の都合でカットしてるのだと思ってたわ」
「尺? カット? 何か切るの?」
「そうだったわね。あれは見たまんまのできごとなのよね」
信じられない目でとんでもない速度でできていく建物を眺める姫乃さん。
「改めて思うけど、この魔物たちの力って反則級よね」
「そうかな? みんな頑張ってくれてるだけだけど?」
精霊たちが内装を作り、ゴブ君たちがそれを中へと運んでいる。
「これが当たり前と思ったら確かに常識が狂うわね」
「何かおかしいかな?」
「ここからならおかしくないところを探す方が難しいわよ」
そんなことを言ってるうちに建物全て完成していた。
◇◇◇
「お兄ちゃん、その子は庭の日当たりのいい場所に埋めてもらって良いかな?」
「うん、わかったよ」
最後に僕は精霊を花壇に植えていた。
「これで大丈夫なの。一応自分でもお水食べられるけど、なるべくあげるようにしてほしいの」
「わかったわ。頑張って育てたらティナちゃんみたいになるのよね?」
「それはこの子次第なの」
「うん、頑張るわよ!」
「一応この子がこのお家を襲われないように結界を張ってくれるけど、それほど強力なものじゃないから過信はダメなの」
「えっ? 結界?」
僕が初めて聞く単語が飛び出していた。
「もちろんなの。お兄ちゃんのお家も職員さんのお家にも張ってあるの。お兄ちゃんが許可してない弱々の人は弾くようになってるの」
「ち、ちなみにあとはどんな効果があるの?」
「お家にいたら自然と治癒したり精神を休める効果があるくらいなの。常時使うからそんなに強い効果はないの」
十分すぎる効果に思えるが、それほど強くないということは普段よりもちょっと傷の治りが早くなるとかその程度なのかもしれない。
「でも、私、動画をカットしてると思ったから全然引越しの準備できてないや。……そうだ」
姫乃さんは今は造作の家具を運んでいるゴブ君たちをじっと見ていた。
「やしろん、引越しにゴブ太郎たちを借りて良いかな?」
「えっと、流石に街中を歩くのは問題があるような……」
「大丈夫、移動はいっちゃんに車出してもらうし、協会には話通しておくから」
「うーん、それなら良いのかな?」
「ちゃんとお金も払うから。あっ、でも、あれだけ再生数を稼いでいるやしろんにはお金より別のもののほうがいいのかな?」
「お金の方が助かります。その……、みんなよく食べますから」
「あっ、うん。確かにね。あれだけ食べるならいくら稼いでも足りないかも」
「それに最近なんだかトカゲ君とかゴブ君とかの数が増えてるような気がするんだよね。きっと気のせいだと思うけど」
「ダンジョンなら数増えるのは当たり前じゃないかな?」
「や、やっぱりそうなんですね……。ダンジョンの居住は好きにして良いって言ってたからいつの間にか魔物の国みたいになってますし……」
「そういえばこの前ゴブ太郎にやしろんの城を案内してもらったわね」
「やめてくださいよ。僕の城ってまるで僕が魔王みたいじゃないですか!? 勇者に倒されるなんて嫌ですよ」
「まぁ、それは大丈夫でしょ。それじゃあ引っ越しの件、よろしくね」
「わかりました。いつでも言ってくださいね」
「あっ、それならディーコードも交換しておきましょう。連絡のやり取り、しやすくなるからね」
「で、でも、僕いまいちやり方わかってないんですよね」
「貸して」
奪われるようにスマホを取られる。
そしてとんでもない速度で操作した後すぐに返してもらう。
「私の連絡先、入れておいたわ。それにしてもやしろんはユキと知り合いだったのね」
「えっと、色々あったからね」
「助けてたもんね。それにしても孤高のユキが……ね。これは楽しい匂いがしてきたわね」
「あんまりからかったらダメですよ」
「大丈夫よ。ほどほどしかしないから」
「したらダメですよー」
今やりとりがしばらく続いたあと、僕たちは家に帰ってきた。
それから寝るまでの間、姫乃さんからのディーコードの通知で音が鳴り止むことはなかったのだった――。
【作者からのお願い】
『面白い』『続きが気になる』と思われましたら、是非ブックマーク登録をお願いします。
また、↓に☆がありますのでこれをタップいただけると評価ポイントが入ります。
本作を評価していただけるととても励みになりますので、嬉しいです。




