暗躍
しばらくするとルシルたちが戻ってくる。
その両手にはスーパーの袋が大量に持たれていた。
「主様、スーパーなるところから肉を買いあさって参りました」
「伊藤さん、大丈夫ですか……?」
「あぁ、俺が出すって言ったからな……」
なぜか顔の生気を失っている伊藤さんを心配する天瀬さん。
言いたいことはよくわかる。
買いあさる、は文字通り全て買ってきたのだろう。
一パック残さずに……。
それを天瀬さんの手前、格好つけた伊藤さんが「全て自分が出す」とでも言ったのだろう。
そんな隙を突くのが上手いルシルのことだから、どんどんおだてていって、気がついたら買い占めと言うことになったとか。
「あの……、僕も少しお金を出しましょうか?」
さすがにかわいそうに思えてそう提案してみるが伊藤さんは首を振ってくる。
「これは俺の男気を示すために必要な事だからな。遠慮しなくていい。男の俺なら毎日もやしでも生きていける」
別にそこに男は関係ないし、もやしだけじゃ絶対に栄養が足りない。
何か差し入れを持って行ってあげよう。
「あの……、姫乃さん。良かったら今度伊藤さんの家を教えてもらっても良いですか?」
「良いけど襲われないように注意してね」
「あははっ……、さすがに一人では行かないですから大丈夫ですよ」
そんなに治安の悪い場所に住んでいるのだろうか?
日本の中でそんな突然人に襲われるような治安の悪い場所ってないと思ってたけど……。
「狼に襲われてないで、ってことなんだけどね」
「狼ってもふもふしててかわいいですよね」
「あっ、うん。全く伝わってないって事だけはわかったわ」
姫乃さんが苦笑を浮かべているとミィちゃんが近づいてくる。
「おっ、肉が着いたのだ! 待ってたのだ! あやうくピーマンを喰わされるところだったのだ!」
ミィちゃんはルシルから肉をひったくるとトカゲ君たちと肉の奪い合いに興じるのだった。
◇◆◇
「(本当にこの町で合ってるのかしら?)」
「(間違いない。リトルテイマーはここに住んでいると確かな情報だ)」
「(俺たちがわざわざ出向く必要があったのか?)」
ジメジメと暑くなり出す梅雨の時期。
高校の通学路を明らかに場違いな三人の外国人が英語で話し合っていた。
まるでモデルのような背の高くスタイルのいい金髪の女性と体付きのいい渋めの男とどこか軟派な男の三人組だった。
「(むしろ私たちだけじゃ戦力不足も甚だしいわよ)」
「(レッドドラゴン、かつて米国探索者を半減させた化け物だな)」
「(そんな化け物をテイムしてる少年がいるんだ。誠意を見せるなら俺たちが出向くしかないか)」
「(未だに信じられないけどな。レッドドラゴンをテイムするなんて)」
「(それならあの動画をなんて言うの?」
「(どうみても手と足のように従えていたよな)」
「(まだ日本の探索者に加わっていないようだから是が非でも私たちのアメリカ探索者組合のパーティに加わっていただきたいわ)」
「(そのためにアメリカトップの俺たちが来たんだろ?)」
「(でももしそいつが危険なやつだったらどうするんだ?)」
「(そのときはいかなる手段を持ってしても排除しろって言われてるわね)」
「(危険じゃなくても俺たちの味方になってくれないかもしれないぞ?)」
「(そのときは私の美貌で落とすだけよ。あなたたちの時もそうだったでしょう?)」
「(まだガキなのにえげつないことをするな)」
「(それだけ本気ってことなんだろう?)」
「(とにかくまずは日本で活動するために探索者協会日本支部へ行くわよ)」
「(仕方ないな。ボビー、情報収集を頼んだぜ)」
「(任せておけ。今日から早速ホテルを改造してどこよりも真っ先に情報が入ってくる基地にしてやるぜ)」
「(お嬢はリトルテイマーと接触してくれ。そのまま堕としてしまっても構わない)」
「(わかったわ。細かい雑務は任せるわよ、リーダー♡)」
「(ちっ、また貧乏くじかよ。しかたねーな)」
こうしてアメリカ探索者の三人は別行動を始めるのだった――。
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