情報交換
どうやら僕には配信に関する知識が不足しているらしい。
そのことを補うために姫乃に手ほどきを受けることとなった。
まず第一に「ちゃんとお気に入りの数は見よう」と言われてしまう。
ここに書かれている数字に嘘はないので現実を見よう、と。
――二十万……か。ミィちゃん達、すごく人気なんだね。
「それにしても今日の決闘配信もすごいことになってる……。どこまで再生数が伸びていくのだかな?」
姫乃さんの視線が自分のチャンネルから離れない。
「これがバズるってことなんだね。なんか見てるだけで楽しいよね」
「怖くないのですか?」」
「怖い? うーん、私は平気かな?」
姫乃さんが真剣に悩んで答える。
「だってどうせダンジョンへ行くときに配信するからね。それに仮にもSランク探索者だからね。元々注目は浴びるんだよ」
「あっ、そういうことなんですね」
「でもそれをいうならやしろんもだよ? だってミィちゃんもティナちゃんもいて、悪魔もいて、しかもダンジョンでたくさんの魔物を飼ってるのだからどう見ても注目を浴びるでしょ?」
「だよね。やっぱりミィちゃんとティナは注目を浴びるよね。うん!!」」
「それにやしろんもこんなにかわいいしね」
姫乃さんに抱きつかれる。
そこから逃れようにもとんでもない力で防がれてしまう。
「やしろん、抱き心地いいね」
「は、離して……」
「お兄ちゃんを離すの!」
「ティナちゃんもぎゅー」
「つ、捕まったの。逃げられないの……」
ミィちゃんに勝ったはずのティナですら姫乃に捕まったらどうすることも出来ないようだ。
それなら僕がどうにか出来るわけもない。
「八代、何遊んでるのだ?」
「あ、遊んでないよ!? 逃げられないんだよ」
「あぁ、姫は馬鹿力だからな。ごふっ」
如月さんが突然吹き飛ぶ。
「あれっ? 何か言ったかな?」
「い、今の攻撃……、僕見えなかったのだけど……」
「ティナも見えなかったの……」
「お前、なかなかやるのだ。今度戦いたいのだ」
「うーん、私に勝ち目がないから遠慮かな」
「残念なのだ」
「お、おい……。ここは僕に助け船を出す場じゃ無いのか……」
「あっ、生きてた……」
「殺すつもりだったのか……がくっ」
如月さんは意識を手放す仕草をする。
「だ、大丈夫なのですか、あれ……」
「うん、どうせ死んだふりだからね。ちょっと叩けばすぐに動き出すよ」
「誰が機械のように斜め四十五度から叩けば動くんだ!?」
「ほらね」
「本当だ。如月さんってロボットだったのですね」
「えっ。あぁ……。そ、そうだな。もしかしたらロボットかも知れないな」
結局なぜか如月さんがロボと言うことでこの話が終わることに。
「それより八代、肉が無くなったのだ!」
「あぁ、今買いに行ってもらってるから少しだけ待ってくれる?」
「わかったのだ。少しだけなら待つのだ!」
「うーん、それか今冷蔵庫にあるピーマンとかを焼くとか……」
「ちゃんとしっかり大人しく待つのだ! 急いで待つのだ!」
それだけ言うとミィちゃんは大急ぎで離れていき、なぜか静かに正座をしていた。
そこでそばにいたトカゲ君たちにも何かを話したようで、トカゲ君たちも同じように正座をしていた。
「うーん、野菜も食べたほうがいいと思うんだけど、トカゲの体には良くないのかな?」
「魔力のこもってない水が不味いのと同じかもしれないの」
「魔力のこもった水?」
「そうなの。お兄ちゃんからもらうお水はとっても魔力がこもってて美味しいの?」
なんの違いかはよくわからないけど、ティナが美味しいならそれで良いだろう。
「あっ、お兄ちゃん。今度その人のお家も作るの?」
「そうだよ」
「それならその時にもティナと他に一人、精霊を連れて行きたいの」
「もちろん良いけど、何をするの?」
「もちろん庭に植えてあげるの。魔素力をお家に還元するには必要なことなの」
どうやら色々とこっそり力を貸してくれているようだった。
「わかったよ。姫乃さんもそれで良いかな?」
「もちろんだよ。その子ってティナちゃんみたいに人になれるの?」
「うーん、それはその子次第なの。ティナの場合はこの姿の方がお兄ちゃんが接しやすそうだったからなっただけなの」
「よーし、それじゃあしっかりお世話してティナちゃんみたいに人になってもらうように頑張るね!」
姫乃さんは握りこぶしを作り、ティナから精霊の好物とかいろんなことを聞いていた。
「精霊の好物? ティナはお兄ちゃんが大好きなの」
「うんうん、つまり定期的にやしろんを呼ぶのが大事なんだね」
「あとはとっても美味しいお水がいるの!」
「『とっっっても美味しいお水』? あのお店に売ってる?」
「あれは違うの。あれは魔力少なくてイマイチだったの。いくらでも美味しいお水が出る魔法の棒があるの」
「へぇ……、そんなものがあるんだね」
「これなの」
ティナが自信たっぷりに姫乃さんを立水栓へと案内していた。
「あっ……」
「これがあればいつでも幸せ一杯なの」
「そ、そうなんだ……」
姫乃さんの視線を感じる。
本当にこれでいいのかと聞いているように思える。
だからこそ僕は一度頷いていた。
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